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前回の末尾で予告したように、今回は『プリンキピア・マテマティカ』を読むうえで大きな障壁と成りうるドット(.:など)の用法を扱う。

『プリンキピア』において、ドットはおもに、以下のように用いられる。

  1. 、および=Df.などの論理オペレータ(あるいは、ここでの言葉づかいで言えば、命題函数)の適用範囲(スコープ)を示すものとして。
  2. (x)(x,y)(∃x)(∃x,y)、そして[(ιx)(φx)]などの量化記号の適用範囲を示すものとして(なお、このカテゴリのそれとして現れるドットの用法は、この稿では扱わない)。
  3. 論理積(現代風の記号で表すと)と、その適用範囲を示すものとして。

これらの「とりまとめ力」は1がいちばんつよく、3がいちばんよわい、と言われる。そして、じっさいのグルーピングは、以下のルールに則って行なわれる。

  • ドットは、その前後いずれか(あるいは両方)にスコープをひろげ、それ自身よりも数のおおいドットか、ドットの数自体はそれ自身のものと同数だが「とりまとめ力」において自身と同等以上のものに出会うところでスコープの伸張を止める。

これだけでは漠としているであろうので、以下では例を出しながら、ドット記法で書かれた論理式を(現代風の?)カッコ記法で書かれた論理式に変換しつつ、理解を深める。

  • p∨q.⊃.q∨p

まず、上式において、いちばんおおくのドットをともなう論理オペレータが、この論理式におけるメインオペレータとなる。すると、上式ではがメインオペレータとなる。さて、上の区分けで言う1に属する論理オペレータに関して、その左横にあるドットは左方向に、右横にあるドットは右方向にスコープを伸ばす。ゆえに、上式は以下のように書き直せる。

  • (p∨q)⊃(q∨p)

また、この式(の元のかたち)を「主張」(前回を参照)する場合、全体をカッコに括る、つまり、当該式に現れるドットより数のひとつおおいドットを主張記号@のあとにおく。つまり、

  • @:p∨q.⊃.q∨p

つぎに、以下を考える。

  • p:∨:q.⊃.q∨p

この式におけるメインオペレータは、ドットふたつ(:)に囲まれているである。そして、上記カテゴリ1に属すオペレータのドットは、左のものは左に、右のものは右にそのスコープを伸ばすのであり、また、の右横のドットは、につくドットよりグルーピング力がつよいのだから、けっきょくこの式はつぎのように書き直せる。

  • (p)∨((q)⊃(q∨p))

アトムを囲むカッコを省略すると

  • p∨(q⊃(q∨p))

また、第1例と同様に、この(元の)式を主張すると、この式におけるドット数は2なのだから、主張記号のあとにドットをみっつおいて、

  • @:.p:∨:q.⊃.q∨p

となる。

上での例と同様な、ドットを用いた式と、それをカッコを用いて書き直した式を、2組挙げておく(アトムを囲むカッコは省略する)。

  • p∨q.⊃.q:∨:p
  • ((p∨q)⊃q)∨p
  • p⊃q.⊃:q⊃r.⊃.p⊃r
  • (p⊃q)⊃((q⊃r)⊃(p⊃r))

つぎに、論理積としてのドットを用いた例を挙げる。

  • p⊃q.q⊃r

上の例においても、上記第1カテゴリの例と同様に、論理積を表すドットの両方向に、そのスコープを拡げる。つまり、

  • (p⊃q).(q⊃r)

である(つまり、ドットをともなった論理積としてのドットは、愚直に書くと...となるが、これは冗長すぎるので、論理積を表すドットにつくドットは省略される、とも考えられる)。

以下に、論理積としてのドットが入った例を、カッコを用いて書き直したものとあわせて、2例挙げる。

  • p⊃q.q⊃r.⊃.p⊃r
  • ((p⊃q).(q⊃r))⊃(p⊃r)
  • p⊃q:q⊃r.⊃.p⊃r
  • (p⊃q).((q⊃r)⊃(p⊃r))

最後に、練習問題として以下を挙げておく。各自、カッコを用いた(現代風の)記法で書き直されたい。

  • p∨q.⊃:.p.∨.q⊃r:⊃.p∨r
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『上での例と同様な、ドットを用いた式と、それをカッコを用いて書き直した式を、2組挙げておく(アトムを囲むカッコは省略する)。』
の後の二例のうちの二つ目の式の一番左のピリオドはコロンになるのかなと思ったのですが?ピリオドになるのはどういう理由からなのかが分かりませんでした。
@はunary operatorということから、それとそれの取る項の間、すなわち結局それのすぐ右側だけにドットを打つというのは分かるのですが、含意や選言のようなbinary connectiveの場合はconnectiveの左右両側に一項ずつ取るので、結局connectiveを両側から挟むドットは同じ数(ピリオド同士とかコロン同士など)となるのかと想像したのですが?
同じ理由から、残念ながら最後の練習問題もよく分かりませんでしたがある種の弱化の規則のようなものがあるとしたら次のようになるのかと想像しました:
(pvq)−>((pv(q−>r))−>(pvr))
よろしかったら再度御教示願えたら幸いです。
4space 2008/05/10(Sat)21:45:00 編集
かんたんに言ってしまえば、4spaceさんが疑義を呈しておられる例における左側のピリオドは、それをコロンにする必要がないからピリオドになっている、つまり、そのピリオドの左側には、エントリ内で3区分したカテゴリで言って、いま考えているピリオド自身と「まとめ力」は同等だけどドット数が同じ、というものがない、さらに言いかえれば、この左端のピリオドのさらに左には(ピリオドであれコロンであれ)ドットが存在しないので、そこで用いられるドット数は1でじゅうぶん、ということです。たしかに、結合子の両側は、同じドット数で並んでると、シンメトリカルできれいなんですけどね。ただ、じっさいの運用を考えると、それではたちゆかなくなってしまうわけです(ある結合子の左右にどういうドットが存在するかは一律に決まっているようなものではないので)。ちなみに、練習問題は、正解、でございます。
はやし 2008/05/11(Sun)12:21:00 編集
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