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スペクタクルを全体として捉えると、それは既存の生産様式の結果であると同時に、その目指すところでもある。スペクタクルは実世界への付け足しでもなければ、世界に上からかぶせられた飾りでもない。それは、現実社会の非現実性の核なのだ。情報やプロパガンダ、娯楽の広告やその直接な享受といったさまざまな個々の形式の下、スペクタクルは社会的に優勢な生の現在のモデルを構成する。スペクタクルはまた、生産およびそれに伴う消費における、すでに為されてしまった選択を、至るところで肯定する。スペクタクルの形式と内容はともに、既存のシステムの条件と目的を、全体的に正当化する。スペクタクルとはまた、現代の生産の外で生きられた時間の主要な部分を占拠する限りにおいて、上で述べた正当化の永遠の現前であるのだ。



「スペクタクルとは何か」について大分詰められてきたが、と同時にその語られ方も「最節約的」に煮詰められたものになってきている。少しずつ解きほぐしていこう。

まず、「既存の生産様式」とは何か?

マルクス的な解釈としては、それは「労働」というものを主軸に置いた、「労働力」を再生産するような生産様式として現れる。しかし、議論を先取りしてしまうと、「労働」ならざるもの、つまり「余暇」というものを主軸に置くシチュアシオニスト的解釈では、それは「余暇」を再生産しつつ「余暇」にまた資するようなものとして現れる。

そう、スペクタクルとはその現れ方を見れば、第一義的には、新聞や雑誌、そして書籍といった情報やそこに込められたプロパガンダ、映像、音楽、芸術といった諸々の娯楽の生産、流通、受容、そうした「労働外」の出来事として現れるのだ。

つまり、このように「全体として」捉えられたスペクタクルとは、人がイメージを生産し、消費する、という、何重にも連なるプロセスであるのだ(4で言われていたような「人−イメージ−人」というスペクタクルの構成を想起しよう)。

さて、そうしたスペクタクルの現れ方、つまりは形式が、「社会的に優勢な生の現在のモデルを構成する」とはどういうことか。それは大まかに言えば、われわれの「生」から出てきた「イメージ」に過ぎないものが、逆説的にその「生」のモデル、つまりは規範になる、ということである。以下細かく見ていくと、「社会的に優勢な生 la vie socialement dominante 」は二様の読み、つまり「社会的な支配権を握る、イメージの生産者」という読みと、「個々が社会的支配権を握っている、という訳ではなく、イメージの生産・享受に何らかの形で参与している多勢」という読みが出来るが、後者の読みが妥当であろう。「現在のモデル」の「現在の」という部分は、そのモデルの内実を問わず、多勢がそれに従えば何でもいい、といった「現状肯定」の現れであり、この「とりあえず何であれ、現状肯定」というのはスペクタクルの主要な属性として今後も現れることになる。

それでは、スペクタクルの「内容」とはいかなるものか?

それは言うまでもなく「生産およびそれに伴う消費における、すでに為されてしまった選択を、至るところで肯定する」ことであるが、「生産およびそれに伴う消費における、すでに為されてしまった選択」とは何かというと、生産にしても消費にしても、その行動の基準となるイメージは前もって為されている、ということだ。これは図式的に言うと、「生産の元となるイメージ→生産→新たなイメージ」、「消費の際に参照するイメージ→消費→消費の際に参照したイメージの力を増強」ということであり、それではその生産・消費に参与するイメージはどこから来たのかというと、「(生産、消費という過程を含む)生→自律化したイメージ=生産・消費の際に参照されるイメージ」という経路を経ているわけで、これを総合すると、この「イメージ→生産・消費→イメージ」というプロセスは螺旋を描いている、ということになる。

そのようであるなら、そうした過程において為される「選択」は肯定されるほかないだろう。何となれば、参照されるものとその結果というのは、微妙な差異を孕みつつも、ほぼ同じものなのだから。

そして、そのようなスペクタクルは、同上の理由から、形式・内容の両面から、その「既存の」システムを全体として正当化する、というのも見易いところであろう。スペクタクルとは、果て無き「現在の」システムであり、自分で自分に"Oui"と言いさえすればいいのだ。

そのような肯定・正当化は、そうしたイメージの再生産と消費がなくならない限り、永遠に続く。永遠に続く「現在」……。

してみるとスペクタクルの狙うところは、過去を振り返らせず、未来を展望させない、というところにありそうだ。というより、過去を振り返ったり、未来を展望したりというその挙措も、「いま、ここ」に回収するのがスペクタクルの役目なのだが。

何にせよ、このスペクタクルの「現在性」は今後も鍵となってくるであろう。


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