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言葉が上手く出てこない。
もちろん、いつもだって、何かを言おう、というときには、それをどう言ったものか、ということに呻吟するわけだし、そもそも、言うべき「何か」を見つけるのに苦労するわけだが、というか、言う「べき」とつよく主張されるような何ごとも、おれのなかからは出てきやしないので、どうしようもない。
ただ、いつも、と言うのははばかられるにしても、ふだんはそれなりに、何らかの題材をでっちあげさえすれば、あとは、読むべきは読み、調べるべきは調べて、何とはなしに何かを言っている「かのように」みえる一文を書くことは、それほどむずかしいことではない。以前に言ったように、文章を書く、というのは、ほとんど技術的な問題であり、書かれるべき「何か」さえ定まってしまえば、あとは「文章」という容れ物に入れるだけ、なのだから。
そういう「容れ物」さえも毀たれたような、言葉はたしかにそこにあるのだけど、その言葉と自分との重心が2ミリほどずれているような、そんな失語状態に陥るときが、たまに、ある。語彙の選択、句読点の位置、段落の分け方など、すべての文章作成技法にかんして、拠ん所ないきもちになり、言葉が流砂となる。
こういう失語状態のときに、たいていの人がリファーするのはドゥルーズの『消尽したもの』と相場は決まっており、おれもそうした顰みに倣おうと(ちなみに……この「顰みに倣う」という言い回しは、その「倣う」べき行いの意図がよく分かっておらずに、にもかかわらずそうした行いをする、という意が原義であり、つまり、おれもなぜそうするのか分からずに、この『消尽したもの』を持ち出そうとしているのだが、ともあれ)書棚を漁ってみるのだが、あいにく見つからない。Helas!とちょっと気どってつぶやきながら(『暮らしの手帖』のなかにある「ちょっとしたヒント集」のようなコーナーで、「詩をちょっと気どって朗読すると、思いのほか楽しいので、やってみてはどうか」と、頓痴気と言えば頓痴気な提言がなされていた……)、何が書いてあったのかを思い出そうとする。
たしか、ドゥルーズは「消尽epuiséは疲労fatiguéとは違う」ということから語りおこし(ちなみに……このように、よく似ている、と考えられる二者A、Bを持ち出し、でもそれらは違うんだ、と言うやりくちは、ドゥルーズにあってはおなじみのものである。たとえば、『プルーストとシーニュ』における「記憶mémoire」と「思い出réminiscence」、『アンチ・オイディプス』における「メカニックなものméchanique」と「マシニックなものmachinique」……)、そうした「消尽」という状態からベケットの言葉は繰り出されている、という筋書きだったと思う。
とするなら、おれのこの失語状態は「消尽」からのものではない。なぜなら、消尽するほど言葉を使ったとは、とても言えないから。それでは、「疲労」なのか? いや、それも違う。睡眠も十分に摂り、飯もたらふく食い、おまけに糞まで放ったところだ。それにしても、なぜ、おれの腹はいつもゆるいのか? いや、そもそも、「ゆるい」のは「糞」であって、「腹」ではないはずだ。腹はむしろしまっている、というか、「ゆるい」とか「しまっている」とか、そういう形容が冠されるべき「肉」それ自体がない……腹筋でもするか。いや、運動はめんどくさいな。それ以前に、腹筋をするような「場所」がない。いや、あるか。でも。
こうして言葉は空転する。
で、意味付けってことで、ツボに入って笑っちゃったのが、「はい、人は魂をもっています。でもそれはたくさんのちっちゃなロボットでできているのです。」というジュリオ・ジョレッリの言葉。
もちろん、じゃあそういう「失語状態」でないときは、書いていて思わず身が震えてしまうような、「何か」が充填されたものを書いているのか、と言われれば、全然そんなことはないんだけど、ただ、「失語状態」時の自分の言葉に対する「心ない」感じは、有意につよいな。
で、ジュリオ・ジョレッリ、たしかデネット本で名前を見かけた覚えがあるけど、じっさいのところ誰なんだろ?
Giulio Giorelli (professore di Filosofia della scienza)
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