Acousmatic Music Festival 2005 レポート [音]

行ってきた。

プログラムは一応2部に分かれていて、前半で16chアクースマティックを使ったライヴ、後半で電子音楽にまつわるレア映像の上映、って感じだったんだけど、何と言ってもクライマックスは、後半映画上映の、シュトックハウゼン「モメンテ Momente」の演奏シーンでしょ！

で、その「モメンテ」話はあとに回して、とりあえずライヴの感想なぞを述べると、座った位置が悪かったのか、あんまり16chの有難味はよく分かんなかったなあ。演奏されたマテリアル自体に関して言えば、こういうイヴェントというかコンサートに行くたびに思うんだけど、こうした前衛音楽にとって、テクノロジーの進歩というのは果たしていい部分だけだったのか、ってことなんだよね。

って言うのも、今みたいにHDレコーディングやら何やらが発達していない頃の、テープを切ったり張ったりしてって頃の方が、最終成果物に籠っている気合というか気迫というかが全然違うんだよね。それは、一回性ということが為さしむることなのかもしれないし、アナログであるがゆえの偶然性の混入が功を奏しているということなのかもしれないけど、とにかくそういう印象を受けた。あと、「声」っていうマテリアルは扱いが難しいなあ、とも思うたです。

さて、「モメンテ」。

まずはフランスの空港に降り立ったシュトックハウゼンをカメラが追う、ってところから始まるんだけど、「いやあ、フランス来るとみんなおれのことをストックオーゼン、って呼んでさあ。ほんとはシュトックハウゼンなのに。ま、いいんだけどさ」とか、どーでもいいぐだぐだな話をしている内に、いつしか場面は演奏会場に。

演奏会場では身なりのいいご婦人たちが拍手でシュトックハウゼンをお出迎え。で、シュトックハウゼンが指揮棒を振ると……ぴたっと拍手が止まった……！　で、も一回指揮棒を振るとまた拍手の嵐……。もーここだけで「やられた！」でしょー。

で、最初はそんなふざけた感じなのに、演奏が進んでいくとかなりマジになってくるのね（や、最初の拍手のとこも、充分マジなんだろうけど）。演奏つっても、そのご婦人方が足で床を擦るだとか、銅鑼越しに大声で叫ぶだとか、そんな感じなんだけど、これが聴かせるんだ！　いや、ほんと、改めてすごいと思ったね、シュトックハウゼン。

他の映像は、ピエール・シェフェールが音を付けたモーリス・ベジャールのバレエだとか、まあ面白いは面白い映像だっただけど、シュトックハウゼンの前ではとても太刀打ちできない。

や、ほんと、これだけにでもお金払う価値あったと思う。ってことになると、そのイヴェントのそもそもの存在意義が……って感じなんだけど。


ちなみに、ミュージック・コンクレットやシュトックハウゼンについて書かれたものとしては、ユリイカ1998年3月号「解体する[音楽]」に収められている各論が秀逸なんで、読んでみるといいかもしれません。ウェブ上で日本語で読めるシュトックハウゼンに関するものとしては、何だかんだ松岡正剛のこれが一番出来がいいんじゃないかな。ミュージック・コンクレットに関しては、若干堅苦しいけど、これ。

ちなみにlisten.co.jpによれば、シュトックハウゼンは「テクノ／ヒップホップに狂った人ならば必ずここに辿り着く。これぞ、真のピュア・アシッド。究極!!!」だそうです。そうかなあ。

そうそう、何とシュトックハウゼン来日！だそうで、こりゃ家財道具一式売り払っても馳せ参じなければなりません！


って、何か、イヴェントレポートっていうより、「シュトックハウゼンについて」みたいなエントリになっちゃったな……ま、いいか。