[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
昨日の続き。
で、昨日は、「民主的決定は必然的に独裁者の存在を導出してしまう=民主的決定、すなわち民主主義は不可能である」ということを主張するアローの一般不可能性定理について、そこで言われる「民主的決定」というものを特徴付ける「弱順序仮説」というものと、そうした民主的決定に要請される公理を紹介したんだけど、今日は弱順序仮説の問題点についてちょこっと。
まず、弱順序仮説とはどんなものだったか、というと
- 完備性
選択肢の集合から2つの選択肢を任意に選んだ場合、x ≦y かy ≦x の少なくともどちらか一方が成り立つ(つまり、どんな選択肢間でも比較できることを要請する)。 - 反射性
すべての選択肢x についてx ≦x が成り立つ(つまり、「ある選択肢は少なくとも自分自身と同程度に良い」という、自明なことを要請する)。 - 推移性
選択肢の集合から3つの選択肢を任意に選んだ場合、x ≦y とy ≦z が成り立つとすればx ≦z が成り立つ(この推移性の要請によって選択肢の選好順序がループすることが禁じられる)。
の3条件を民主的決定は備えてる、ってことだったよね。
それで、条件の「反射性」については、「何でこんな当たり前の仮定を置くの?」っていう疑問はあるかもしれないけど、とりあえずこういう仮定が妥当であることは認められるだろうからすっとばすとして、1つ目の仮定である「完備性」について。
この仮定、どんな選択肢の集合から、つまりは考えられうる選択肢の要素をすべて含みこんだ集合から、どんな2つの選択肢を選んでも、その2つの間で選好順序を付けることができる、ってものだけど、これ、ちょっと強すぎる要請だよね。だって、たとえば、包丁と饅頭の間でどっちがいいか?なんて言われても、困っちゃうでしょ?(まあ、困らない人がいてもおかしくはないけどさ) こういう風に、「ふつーその2つは比べないよ!」ってことに関しても、人は選好順序を決定できるか?って考えると、実際問題「どーだろーねえ」って感じでしょ? でも、まあ、実際に何らかの選好順序を付けなくちゃいけない集合ってのは、あらかじめ比較可能な選択肢の集合に設定されているだろうから、そんなに問題ではないのかもしれないけど……ともあれ、選択肢の集合に何の条件もない場合、この完備性という仮定はちょっと無理のある選好を迫るものではある。
さらにさらに、この弱順序仮説に従うと、選択を行う主体にべらぼうな識別能力を要求しちゃうんだよね。
……というところでまたもや時間切れ。今日は友だちのライヴに行ってきますんで、帰ってきて余力があったら続きを(って、そもそも帰ってこられるんか?)。
参考図書
アマルティア・セン 経済学と倫理学(鈴村興太郎・後藤玲子、実教出版)
「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待(佐伯胖、東京大学出版会)
アローの一般不可能性定理(ページ下にシリーズ一覧があります)
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
音
雑
虫
技術
『スペクタクルの社会』を読む
ドゥルーズ講義録
電波
趣味の数学
趣味のゲーデル
『プリンキピア・マテマティカ』を読む
自己紹介もどき
ブログペット俳句
芸術一般
言語ヲタ
お客様
GRE CS
留学
Boing Boing
映画
ちょっといい話
かなりダメな話
魂の叫び
哲学と数学
論文
引用
「いい」とも「ダメ」とも言いがたい話
悲喜こもごも
証明論
ポエム
書物への呪詛
言わずもがななことではあるけれどときに忘れてしまうこと
何か無駄なことをしよう
日々
趣味の勉強
夢
ブログの記事
翻訳
勉強
不眠
文房具
ライフハック
育児
thayashi#ucalgary.ca
(#を@に置換してください)
このブログで紹介したことのある本をランダム表示。
このブログで紹介したことのある音をランダム表示。