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一昨日は「弱順序仮説に従うと、選択を行う主体にべらぼうな識別能力を要求することになっちゃう」というところで時間切れだったんだけど、その続き。
まず、下準備として無差別関係=を以下のように定義する。
= ⇔ x≦y∧y≦x
つまり、x=yは「xとyは同じ選好順序、要するに、xとyは識別不可!」ということを表す。容易に分かるように、この無差別関係は推移性を満たす(すなわち、xとyが識別不可で、かつyとzも識別不可なら、xとzも識別不可)。
さて、ここで、机の上に101個のコーヒーカップが並んでいると思いねえ。んで、一番左端にはブラックコーヒーが、そして1つ右にずれるたびに1ミリグラムの砂糖が足されてって、一番右端のコーヒーカップには10グラムの砂糖入りコーヒーが入っていることになる。その場合、あるコーヒーカップを基準に、両隣のコーヒーとの甘さ比べをするとなると、フツーは±1ミリグラムの甘さの差なんて分かんないよね。だから、C(n)でn番目のコーヒーカップに入っているコーヒーの甘さを表すとすると、C(n-1)=C(n)=C(n+1) (1≦n≦100)っつーことになる。ということは、ですよ、無差別関係=は推移性を満たすことから、「ブラックコーヒーと砂糖10グラム入りコーヒーの甘さの識別が出来ない」ということになる!
でも、実際問題、1ミリグラムの砂糖が入っているか入っていないかは分かんないだろうけど、さすがに10グラムの砂糖が入ってるか入っていないかは分かるだろうから、選好順序に推移性を要求することは選好主体にべらぼうな識別能力を要求することになるんだけど、さりとて、この推移性を捨てちゃうとそれはそれで困ったこと、つまり選好順序がループするのを許容することになっちゃう。
こういうところから、「だからこの手の社会科学の前提する人間像ってのは荒唐無稽なまでに『完全』であり(『合理的人間』という仮定)、そういう意味で『虚構』に他ならず、そうした虚構を前提に置いた社会科学は畢竟信用ならん!」って「暴論」が出てきかねないんだけど、それでも、こういうフォーマルなアプローチってのは、ところどころムリな要求を行為主体に課すことがあるけど、近似的には実情を描写できているものだし、このことは、たとえば運動方程式は現実世界において、空気摩擦やら何やらが存在する関係で厳密には成り立たないけど、実際には十二分に役立つものだ、ということとのアナロジーで捉えてもいいんじゃないかな? まあ最近では、社会科学もあからさまに「完全無欠に合理的な人間」というものを無批判に前提とするなんてことはあんまないだろうし、さらには、「完全な合理性」ではなく「限定合理性」を基礎に置いた研究手法の開発も進んでるわけで……って、あんま詳しくないんでここいらに関しては何とも言えまへん(気になる人はルービンシュタインのこれでも参照してください)。
てな感じで、「民主的決定」、というか、何らかのもの・こと同士を比較する場合に前提とされる「弱順序仮説」の問題点をここまで見てきたわけだけど、とりあえずそうした問題点は「カッコに括って」、次からはアローが「民主的決定」というものに要求した4つの規準を検討していこうと思う。って、このネタ引っ張りすぎ?
参考図書
アマルティア・セン 経済学と倫理学(鈴村興太郎・後藤玲子、実教出版)
「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待(佐伯胖、東京大学出版会)
アローの一般不可能性定理(ページ下にシリーズ一覧があります)
現実世界のおどろおどろしい場所で生身のやり取りで切った貼ったの状況を生きてきた俺としては、
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これにも増して切実な問題だから、
「引っぱり過ぎ」じゃないよ。
関心もってみてるよ。
で、実際にこういう「民主的決定」というものの厄介さとか理不尽さに関わってきた宮本さんの目には、こういう形式化ってのは「世の中そう簡単に割り切れるもんじゃないんだぜ」って感じかも知れんけど(というか、おれも若干そう思う)、こういう風に枝葉をばっさと切り捨ててモデリングしてみると、それこそ「秘密の大前提」みたいなものが浮かび上がってくることもあり、そうそう無下にも出来ないかな、と。
だから、まあ、突っ込みも大歓迎だし、おれに答えられることには答えていこうと思うけど、ほんとにぎちぎちと、生身の人間が交わす「駆け引き」ってやつをモデリングするのは大変なんだよねえ。
で、宮本さん、「あんまり整いすぎた面貌は好きじゃない」んでないの?
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