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先日、数年愛用していたスキャナーが壊れてしまったので、前々から気になっていたオーバーヘッドスキャナー Czur ET16 を買いました。

クラウドファンディングものということでじゃっかん不安だったのですが、いざ現物が届いてみるとこれが「ふつうに市場に出回っていてもぜんぜんおかしくないじゃん」というぐらいよくできた製品だったので、以下にかんたんではありますがレビューを書いてみます。


まず製品全景。本体は、ぱっと見デスクライトだと思ってしまうような造りですが、ヘッド上部にディスプレイが付いており、ここでこれからスキャンすべき本の配置等を確認できます(が、いまのところこのディスプレイのありがたみはあまり感じられていない)。


付属のマットのうえに並べてあるのが、右から、スキャン・スイッチ、フット・ペダル、そしてページを押さえるさいに装着する指サック、となります。フット・ペダルは、机に Czur を置いて作業する場合、かなり便利です(ただ、ぼくはおおむね床で作業しているのであまり使っていないのですが)。指サックは、さいしょ「ページを押さえる指が写りこんでも ScanTailor が除去してくれるでしょ」とサックを付けずにがんがんスキャンしたところ、ScanTailor は写りこんだ指をまったく除去してくれず手動での写りこんだ指の除去作業に泣かされたので、それから付けるようにしています(このサックをしていれば、ページを押さえるさいに映りこんだ指を付属ソフトウェアでうまいこと除去してくれる)。

スキャン速度は、まあ速いです。たとえば、Between Humanities and the Digital という、それなりに大きいサイズ(「MIT 判型」と言えば分かる人には分かってもらえるでしょうか)でページ数が600になんなんとする本も、ものの30分ほどでスキャン終了。これを従来のフラットベッド型のものでスキャンしていたらおそらく数時間はかかっていたでしょうから、労力と時間がかなり節約できていることになります。

それでは、スキャン・クオリティーはどうか? もちろん、フラットベッドでスキャンしたものに比べると、仕上がりのクリスプさにはじゃっかん劣りますが、それはあくまで「比べてみれば」ということで、ふつうに読む分にはまったく気になりません。参考までに、以下にフラットベッド型のスキャナーでスキャンしたものと、Czur でスキャンしたものの比較画像を掲げます。

(画像をクリックすると大きめのものが表示されます)

左がフラットベッド型でスキャンしたもの、右が Czur でスキャンしたものになりますが、言われてみれば「右のほうがじゃっかん文字がつぶれた感じかな」というのがお分かりいただけるかと思います。

また、スキャン・クオリティーとの関連で言うと、付属の画像補正ソフトウェアがなかなかよい仕事をしてくれて、たとえば、ページがたわんだ状態でスキャンしても、ソフトウェアがページのたわみを自動的に修正してくれます。



(画像をクリックすると大きめのものが表示されます)

ただ、上の写真のような状態でただスキャンすると、湾曲しているほうのページ左方の文字がいかにも「修正しました」という感じになってしまい、しょうじき気にならないではありません。その場合、適当な厚さの本をかまして左ページと右ページの高さを補正すると、あまり「いかにも修正しました」という感じにはならなくなります。


(画像をクリックすると大きめのものが表示されます)

さらに、左ページと右ページの高さを補正のうえ、ページの端を指で押さえてたわみをならせば、よりよい結果が得られます。(もっとも、この場合、ページを指で押さえてたわみをなくしたものとそうでないものの顕著なちがいはほとんどないですが、多くの場合、ページを指で押さえてたわみをなくしたほうがスキャン結果は良好なものが得られます)

(画像をクリックすると大きめのものが表示されます)

あと、ちょっと便利なのが、スキャンしたあとでスキャン・タイプを変更できる点で、たとえば、図版がある本をスキャンする場合、従来だと図版のあるページではいちいちスキャン・モードを切り替えなければならなかったところ、この Czur では、とりあえず全ページがーっとスキャンしてしまい、しかるのち、図版のあるページを選択しそれらをグレイ・スケール(ないしはカラー)に変更すればいいので、らくちんです。以下に、サンプルとして図版入りのページを掲げます。

(ページは、上述の Between Humanities and the Digital から。ちなみに画像は「被験者をMRIに入れてジェイン・オースティンを読ませ、読書中の脳波を測定」というすっとこどっこいな実験の様子)

さて、上ではいいところばかりを列挙しましたが、もちろんだめなところもあって、その最たるものが、小さめな本(たとえば、文庫本)や大きめな本(たとえば、バチカン版ドゥンス・スコトゥス全集)のスキャンがうまくできない、という点です。ドゥンス・スコトゥス全集など、画像の取り込み自体はできているので、これでつつがなく画像補正もできていれば最高なのですが、残念ながら、画像補正アルゴリズムがへんてこりんに作用してしまっているようで、補正後のスキャン結果はまったくもって珍妙なことになってしまっています。




(1枚目が画像補正前のオリジナル画像、2枚目が「なにがどうしてこうなった」という補正後)

もっとも、近日中にソフトウェアがアップデートされるらしく、そのさい画像補正アルゴリズムも改良されるとのことなので、この問題はそれで解決するかもしれません。

ともあれ、非破壊型のスキャナーとしてはかなりよくできており、上でも言ったとおり労力と時間のそうとうの節約にもなるので、判型もでかくページ数も多いといった本をスキャンすることが多い人は購入を検討されるといいかもしれません。
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コメント
スキャナー新ファーム入れてみましたか?
なんか文鎮化報告が出てるから安全なファームウェア来るまで待った方が良いのかな?
漫画自炊するつもりだったのにスキャンが最後の画像みたくなって全く使えないんですよね・・
カレー 2016/09/23(Fri)22:50:39 編集
カレーさま

お返事遅れました。ごめんなさい。

さて、新ファームについて、ですが、うかつなことながら、新ファーム(およびソフトウェア・アップデート)が来ていたことすら知りませんでした。あらためて、Indiegogo を見てみると、数日中に安定したバージョンがリリースされるらしいので、それがリリースされるのを待ち、さらに何人かの人柱報告を待ってアップデートしようと思っています。

また、うまくスキャニングできない事例について、上ではとくに大きな判型のものについてふれましたが、四六版を下回る判型についても同様にうまくスキャニングできないことが多いですね。そういう場合、本をスキャンシート上方で30度ほど傾けるとうまくいく場合もあるのですが、それでも安定性にとぼしく、ファームウェアおよびソフトウェア・アップデートによる改善がせつに期待されるところです。
はやし 2016/09/29(Thu)16:05:25 編集
こんにちは
今日見たらやっと新ファームウェア出たようです。bbsでの成功報告待ってから更新したほうが良いのかな
カレー 2016/10/24(Mon)20:56:11 編集
まず、ファームウェアおよびソフトウェアのアップデートですが、ぼくはいずれも何ら問題なく行えました。そして、アップデートにともなう改善点ですが、ざっと以下の点が挙げられると思います。

1. 大きめの判型(ほぼA3になんなんとするようなもの)、あるいは小さめの判型(四六版を下回るようなもの)もきちんとスキャンできるようになった。
2. 歪曲補正の精度がアップした。(前は、補正されてはいるけど「いかにも補正しました」という感じだったものが、より自然な感じで補正されるようになった。さらに、以前は補正が逆方向に働いてしまい歪曲がより強調されることがあったが、そういうこともなくなった)
3. 画像がシャープになった。
4. 取りこみ速度がじゃっかん速くなった。

3と4については感じ方に個人差があろうかと思いますが、1と2にかんしてはあからさまに改善されています。

以前に比べて、「改悪」というほどではありませんが、「痛しかゆし」な点として、本を押さえる指除去機能の効きがじゃっかんつよまっているようであり、前の感覚で本を押さえていると本文まで消し去られてしまうといったことが何度か生じましたので、これまでより気持ち外縁側を押さえるようにしたほうがいいかもしれません。

いずれにせよ、ファームウェアおよびソフトウェアのアップデートはいずれもスムーズに行われましたし、如上のように顕著な改善点がありますのでアップデートを考慮することをおすすめします。
はやし 2016/10/27(Thu)13:41:20 編集
こんにちは
自分もファームウェア更新問題なく出来ました。
かなり改善されていてやっとまともに使えるようになりました。
本抑えると綺麗にスキャン出来たのでブックプレッサー代わりのアクリル板買ってしまった
カレー 2016/10/28(Fri)16:39:47 編集
アクリル板、LEDライトは反射しませんか?
はやし 2016/10/29(Sat)16:19:03 編集
貴重な情報提供にまずは感謝です。
Czurに関心があって色々探しましたが、
日本語レビューは現時点でここだけでした。

そこで質問ですが、B5版程度の書籍を
スキャンした場合、OCRは可能でしょうか?
付属のOCRソフトは恐らく英語ないし中国語
しか対応してないでしょうから、JPGで取り込んだ画像をACROBATで読込、acrobatのOCR機能
を使うことを想定います。
勿論、いきなりPDFで取り込んで、日本語認識だけACROBATで行う方が手間が少ないと思います。ただ、他社製のスキャナでPDFファイルにした場合、Adobeの規格に完全に準拠したPDFでないためか、Acrobatで日本語認識できないケースがあるようなので。

お手数ですが、ご回答頂ければ幸いです。
エンタープライズ 2016/12/29(Thu)00:53:13 編集
追記:
上質問は、要するに
「Czur ET16で取り込んだ画像は、OCRして
OCRするのに耐えうる画質でしょうか」
ということです。
勿論、多少の誤変換は許容範囲内です。
誤変換ばかりで全く使い物にならないレベルなのか、それとも一応はそれなりにOCRに
使えるレベルなのかという趣旨です。
エンタープライズ 2016/12/29(Thu)00:59:56 編集
エンタープライズさま

こんにちは。まずは、ばかばかしいほどにお返事がおそくなってしまったことをおわびします。すみません。

さて、ご質問の件ですが、端的にお答えすると、Czur でスキャンしたドキュメントは Acrobat でそれなりの精度で文字認識されるように思われます。以下、サンプルです。

(ドキュメント画像)
http://file.hblo.blog.shinobi.jp/japanese_sample_scan.jpg

(OCR をかけた文書から文字列を抽出したもの)
 ニOO五年に維誌論文として執筆し、ニOO七年刊行の拙著『都市の詩学』に収めた「神経糸イメージ学へ」というテクストがある。これは神経系イメージ学を生んだ、ドイツを中心とする「図像的転回(52Zヨご以降の人文知の動向を踏まえ、ホルスト・プレlデカンプやパ1パラ・マリア・スタフォード、カール・クラウスペルクらの議論を手がかりとして書かれた。そこでは、ジョルジs ・ディディ”ユベルマンによるアピ・グアールプルク論を参考として、イメージ現象の時間性の探究を通じ、ヴァlルプルクが栴刷相した「表現の歴史心理学」を現代における新たなイメージ学として百円織築する可能性を指摘し、脳神経科学によるそのような時間性の解明への期待を語ヲた。さらに、『都市の詩学』で援用した、「現前の周縁に媛曳するもの」としての未来の予感や徴候、過去の余韻や索引的痕跡をめぐる中弁久夫による精神医学的認知論の延長線上に、イメージのうちに未来の兆しと過去の残存を探る「徴候的知」のパラダイムを提示し、次のような出既製を記しているll「イメージを手がかりに人文知から脳科学へと介入し、こうしたイメージの誕生と死、発生と消滅のプロセスを見いだしうる徴候的な知へと脳科学の知見を大胆に変容させることこそを、神経系イメージ学の野心としなければならない」。
 それは、いまだ生成途上の「学」に対する、外野的な立場からの挑発的な提言だヲた。『都市の詩学』では一章を「装飾という訴衆」と題し、シャルコーらの心理学と装飾芸術の結びつきに始まりジンメルやペンヤミンの都市論にいたる、一九世紀後半以降のいわば「神経系都市論」の系譜を描くことを試みたものの、現代の脳神経科学の動向にまでそれを接続することはできなかった。イメージ学の枠を結えた人文学全体にわたる「神経系」研究の、その後の具体的な実績については本号の各論考に譲り、ここでは一O年前の「予感」を背

ご覧のように、横文字の固有名詞の認識にはなかなかむずかしいものがあり、さらに、ところどころ漢字の「われ」が生じてしまっていますが、「一応はそれなりに」というレベルはクリアしているといえるのではないでしょうか。

上記、ご参考になりましたならさいわいです。
はやし 2017/02/21(Tue)09:15:16 編集
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