2010年音盤ベスト（ノイズ／エクスペリメンタル編） [音]

さて2010年音盤ベスト、前回のポップ／ロック編にひきつづき、今回はノイズ／エクスペリメンタル編をお送りする。

これは、ツイッター上で発言したことなのだけど、今年はそれほど「ノイズ」と呼称されうるものをあまり聴かなかった。ゆえに、以下のセレクションには「ノイズ聴きだったらこれは押さえておかなきゃうそでしょ！」というものが、こちらの無知ゆえに入っていないことがあろうかと思う。そういう「ノイズ聴きだったらこれは押さえておかなきゃうそでしょ！」というものについては、ぜひ教えてほしい。（ただし、あまりに有名どころ──たとえばメルツバウや、Z'EV の再発盤など──は、意図的に省いてある。また、去年選んだ人たちについても、意図的に選考対象から外した）

Returnal Oneohtrix Point Never (Editions Mego, 2010)

これは、アルバムを通して言えば、「もっぱらなノイズ音盤」と言うにはやや躊躇するところがある。ただ、CD をトレイに入れ、再生ボタンを押してすぐさま流れてくるそれは、「ノイズ」に他ならない。

Mag Ik Eens Even In Uw Broek Pissen? Cassis Cornuta (Ultra Eczema, 2010)

これも、全編を通じて言えば、「ノイズ」と言うより「前衛風味が濃厚に漂う NDW」と言ったほうが通じはいいかもしれない。だが、たとえば 8tracks のミックスに選んだ曲などはどこに出しても恥ずかしくない「物音系ノイズ」である。

Working Together for Our Privacy Wold (Profound Lore, 2010)

たぶん「出世作」と呼んでもよいであろう Screech Owl でいっぱしのブラックメタル聴きたちの度肝を抜いた Wold の新作。ブルータルさで言えば Screech Owl に軍配があがるが、その分、ドローン的な魅力がこのアルバムにはある（ので、よほどドローン編で挙げようと思った）。

Mild Interrogation SIRF 88 (Stars, 2010)

得体の知れない音響工作。ノイズの原点（のひとつ）は、あんがいこんなところにあるのかもしれない。

The Weight Of Tension Custodian (Phage Tapes, 2010)

一本調子ではない、じつにカラフルなハーシュ系。うかつにも集中的なチェックをしてこなかったのだけど、これをリリースしている Phage Tapes というレーベルは、要チェックかもしれない。

Chestnut Thornback Tar Jazkamer (Pica Disk, 2010)

おなじみ Jazkamer の、「毎月1枚リリースシリーズ」というむちゃな企画のひとつ。アルバム1枚をよゆうで聴き通せてしまうくらいのおもしろ音響工作が詰まっている。

Criminal Magician Sensible Nectar (Rainbow Bridge, 2010)

ミキサーフィードバックを基調にした古典的ノイズから、Xela などのノイズ風味のつよいドローンを思わせるような曲まで、なかなか幅広い。廃盤なので、レーベルのページよりダウンロード可。

Disasters of Self Joe Colley (Crippled Intellect Productions, 2010)

ヴァイナル3枚組の大作。Joe Colley というと、なぜだかおれは勝手に「物音系の人」と思っていたのだけど、この音盤にはけっこうハードな演奏も入っており、しかもそれがあんがいよい。3枚目は、ふつうの曲とロックグルーヴが交互に入っていて、聴くのに骨が折れる。

Hallow Hallow (Totalvernichtung, 2010)

前半は「パンキッシュなブラックメタル」といった趣きで、それだけでもじゅうぶんに聴かせるのだけど、白眉はやはり後半の、ノイズ、ドローン、シューゲイズが渾然一体となって迫ってくるところ。それなりに広い層に訴求しそうでもあるので、もうちと入手が容易であれば、と思う。

Vidöppna Sår Sewer Election (Pan, 2010)

どこか郷愁すら感じさせられるノイズ。じっくり聴けるものに仕上がっている。

8tracks ミックスは、こちら。