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中学時代はほとんど本なぞ読まなかった、と言ってもよい。ただ、そこで出会った幾冊かの本は、かくじつにおれのその後を決している。そのなかでも、このブログでこれまでに何度かその名を挙げたことのある『銀星倶楽部』ノイズ特集号の存在はおおきい。
この『銀星倶楽部』ノイズ特集号は、ノイズを聴くうえでのすこぶる有益なディスクガイドの任を果たしてくれたばかりか、もっと射程の長い、つまりせまく「音楽」という分野にとどまらぬいくつかの影響をおれに及ぼした。ドゥルーズを知ったのも、アール・ブリュ(ット)を知ったのも、アルトーを知ったのも、ダダを知ったのも、この本のおかげだ(ドゥルーズとアール・ブリュはSPKのグレアム・レベルのインタヴュで、アルトーはエタン・ドネのインタヴュで、ダダはNWWのディスクガイド中で、その名が出てきた)。もちろん、これらの固有名を知ったからといって、すぐさまそれらの著作に手を出した、というわけではない。ただ、それら固有名はかくじつにおれの意識下に沈着をつづけ、じき花開くことになる種となったのだ。
つぎに、これまた音楽がらみの、「本」と言うより雑誌になるが、いまだヴィジュアル系雑誌になる以前の『フールズ・メイト』の書評欄が、後年の読書傾向をある程度決した、と言える。そもそも『フールズ・メイト』は、「プログレ系」という「理屈っぽい」ジャンルを扱っていただけに、その書評欄も一筋縄ではいかなかった。そこに現れる書籍は、思いつくままに挙げれば、ドゥルーズ『差異について』、バロウズ『ソフト・マシーン』、カフカ『断食芸人』など、ふつうの音楽雑誌ではまずお目にかかることのないようなラインナップであった。これら書籍は、あたうかぎり手に入れ、よく分からないながらも目を通したものだ。
最後に挙げるのも、上で言った「音楽がらみ」のものと同様、やはりやや「斜から」と言わざるをえないようなものである。詳しいことは省くが、おれが通っていた中学は、きわめてマルクス色のつよい学校で、そして、そうした学校においておれはいっぱしの「問題児」であった。そういう「問題児」の常として、たびたび担任教師や教務主任などと「個人面談」をする必要があったのだが、「問題児」はいかなる場合でも「問題児」で、そうした「個人面談」のさなかにも、どうにか「敵」を打ち負かそう、と考えていた。それには、周縁的な問題をめぐって「局所戦」をたたかうより、「敵の神」を撃ったほうが効果的だ、とおれは思った。そして、「敵の神」を撃つには、まずその「神」を知る必要がある。そう、おれが何をしたのかは言うまでもない。マルクスを読んだのだ。もちろん、『資本論』を全巻通読したわけはない(そんなことは、当の教師たちだってしちゃいなかっただろう)。それでも、そのときに読んだマルクス(およびエンゲルス)の片言隻句は、善きにつけ悪しきにつけ、おれのなかに残りつづけた。
たまに、学校好き好きって子がいますが、ありゃ、だいだいIQがあまり高くない。ただ、後々、世渡り上手なことが多くて、まあ、そういうのも一種のある種の才能なんかなと思います。
俺も、学校行くのが面倒くさかったです。ただ、結構、今から思えば校風としては結構生徒を大人扱いしてくれていたんで良かったんですが、まあ、ある種そこで楽した分、社会人になって仰天しましたよ。
会社に入り、まさにDQ●な人をはじめて発見して、無理が通れば道理が引っ込むって感じの世界を体験して、ああ、世間って所詮こんなもんなんだなあと、まあ、はじめてつくづく実感させられました。
確かに、20年の間に身につけたのは、世渡り上手さだけかも?
それにしても、失ったものも大きいと思います。
高校は、それが「はじめてちゃんと通った学校」だったということもあり(ぼくが通っていた中学は、「よほどのこと」がないかぎり、下手をすれば大学まで行けてしまう一貫校だったのですが、ぼくが「よほどのこと」をしたとでも言うのか、「放校」されてしまったので、ぜんぜん別系列のとこに行ったのです)、「学校」というところが何だか新鮮で、それほどいやだとも思わず通っていた覚えがあります。それに、やること(勉強、ですね)さえちゃんとできて、さらに模試とかでいい点でもかっさらっとけば、あとは多少の「無茶」をしても、大目に見られていたふしもありましたしね。
さいごに余談めいちゃいますが、ぷっつん大吉さんが図らずも口にされた「学校=監獄制度」という、フーコー以降人口に膾炙して久しい図式は、さいきんちょっとあやしいな、と思ってるんですよね。もちろん、学校と監獄とは、多分に似通ったところを共有しているのは事実だと思いますが、だからと言って、それらが果たしてイクォールで結ばれうるものだ、ということにはなりません(フーコーじしん、後年の講義のなかなどで、自らのこうした「行き過ぎた一般化」を訂正したりしてもいます)。そこがちょっと(ほんとうに、ちょっと)気になりました。
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