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今回は前回の用語説明を受けて、「函数」として定義される「論理オペレータ」について記述する。

「論理オペレータ」とは、『プリンキピア』においては「命題函数」と呼ばれているものだが、平ったく言ってしまえば、文と文の接合関係を表現するもの、と思ってもらえればよろしい。そして、『プリンキピア』においてとくべつの記号が用意される文と文の関係、つまりは命題函数は、つぎの5つである。

  1. ∼p「pではない」
  2. p∨q「pまたはq」
  3. p⋅q「pかつq」
  4. p⊃q「pであればq」
  5. p≡q「pとqは同じこと」

ここで「函数」というものは「ある値を(複数個)受けとり、それに対応してある値を出力する」ものであったことを思いおこそう。そして、「命題函数」とはその値域、つまりは「出力される値」の範囲が{T,F}、すなわち「真(正しい)か偽(間違っている)か」に限定されるものであった。たとえば1の「∼p」と表される命題函数は、値を1つ受けとり、その値に応じてT(真)かF(偽)を出力する。それでは、その受けとる値と出力する値の関係はどうなっているのか? それを表したのが以下である。

  1. ∼p
    pがTであるならFを、pがFであるならTを出力する。
  2. p∨q
    pかqがTであるならTを、それ以外(つまりはpもqもFなら)Fを出力する。
  3. p⋅q
    pとqが両方ともTならTを、それ以外(つまりはpかqのどちらかがFなら)Fを出力する。
  4. p⊃q
    pがTでqがFでないかぎりTを、それ以外(つまりはpがTで、かつqがFなら)Fを出力する。
  5. p≡q
    pqの真理値が同一(つまりはpとqがともにTあるいはF)であるならTを、それ以外(つまりはpがTでqがF、もしくはpがFでqがTなら)Fを出力する。

それぞれの説明から、たとえば「p⋅q」は「pかqのどちらかがF」の場合以外にTとなるので、これは「∼(∼p∨∼q)」(pでないか、qでないか、ではない)と表現でき、「p⊃q」は「pがTで、かつqがF」の場合以外にTとなるので、これは「∼(p⋅∼q)」つまりは「∼p∨q」と表現でき、さらには、「p≡q」は「(p⊃q)⋅(q⊃p)」つまりは「(∼p∨q)⋅(∼q∨p)」つまりは「∼(∼(∼p∨q)∨∼(∼q∨p))」と表現できるので、結果、「∼」と「∨」があれば上記5種の命題函数は表現できることになる。

つぎにその用法(≒意味内容)を考える。1から3は、日常言語の用法とそれほど乖離はないので、問題はないであろう。ただ、2の「pまたはq」は、pとqがともにTである場合もTになることに注意(日常言語の場合、たとえば「A社製の醤油かB社製の醤油を買ってきて」と言う場合、その両方を買ってくることは期待されないであろう)。問題になるのは、「ならば」という自然言語での言い回しが(5の場合は「内在的」に)登場する4および5の場合である。

結論から言えば、4(もしくは5)の説明に現れる自然言語「ならば」は、言うなれば「最近似」とでも言うべきもので、自然言語「ならば」の用法と同一視すると、これは日常言語ではふつう許容されえない「ならば」文も許容することに抵抗を感じることになるだろう。たとえば、たいていの場合その日常用法にあっては、「ならば」で結ばれる文同士は、それぞれのあいだに何らかの「内的関連」が前提されていることが常である。しかし、ここでの「ならば」にあっては、そのような結びつきは必ずしも必要とされない。たとえば、「1+1=2であるなら、現在のフランス国王は禿である」は、「1+1=2」が真、そして「現在のフランス国王は禿である」が偽(つまり、「現在のフランス国王は禿ではない」)の場合、その場合にのみ、偽となる。そして、それら命題(文章)間には、少なくとも明らかな「内的関連」は存在しない。このような、数理論理学における「ならば」をとくに「実質含意 material implication」と呼び、日常言語からのそれと区別する。

つまり、上記をまとめると、『プリンキピア』での命題函数は(少なくともこの段階では)「命題(文)と命題との関係」の内実を扱うのではなく、その個々の命題の値によって外的に処理される、と言える。

次回は、上の指摘とかかわる「内包的」と「外延的」の区別、さらには、(余裕があれば)「主張記号」と、(今となっては)「『プリンキピア』独自のもの」と言える「・(ドット)」の用法について解説する。

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