[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今回は前回の用語説明を受けて、「函数」として定義される「論理オペレータ」について記述する。
「論理オペレータ」とは、『プリンキピア』においては「命題函数」と呼ばれているものだが、平ったく言ってしまえば、文と文の接合関係を表現するもの、と思ってもらえればよろしい。そして、『プリンキピア』においてとくべつの記号が用意される文と文の関係、つまりは命題函数は、つぎの5つである。
- ∼p「pではない」
- p∨q「pまたはq」
- p⋅q「pかつq」
- p⊃q「pであればq」
- p≡q「pとqは同じこと」
ここで「函数」というものは「ある値を(複数個)受けとり、それに対応してある値を出力する」ものであったことを思いおこそう。そして、「命題函数」とはその値域、つまりは「出力される値」の範囲が{T,F}、すなわち「真(正しい)か偽(間違っている)か」に限定されるものであった。たとえば1の「∼p」と表される命題函数は、値を1つ受けとり、その値に応じてT(真)かF(偽)を出力する。それでは、その受けとる値と出力する値の関係はどうなっているのか? それを表したのが以下である。
- ∼p
pがTであるならFを、pがFであるならTを出力する。 - p∨q
pかqがTであるならTを、それ以外(つまりはpもqもFなら)Fを出力する。 - p⋅q
pとqが両方ともTならTを、それ以外(つまりはpかqのどちらかがFなら)Fを出力する。 - p⊃q
pがTでqがFでないかぎりTを、それ以外(つまりはpがTで、かつqがFなら)Fを出力する。 - p≡q
pqの真理値が同一(つまりはpとqがともにTあるいはF)であるならTを、それ以外(つまりはpがTでqがF、もしくはpがFでqがTなら)Fを出力する。
それぞれの説明から、たとえば「p⋅q」は「pかqのどちらかがF」の場合以外にTとなるので、これは「∼(∼p∨∼q)」(pでないか、qでないか、ではない)と表現でき、「p⊃q」は「pがTで、かつqがF」の場合以外にTとなるので、これは「∼(p⋅∼q)」つまりは「∼p∨q」と表現でき、さらには、「p≡q」は「(p⊃q)⋅(q⊃p)」つまりは「(∼p∨q)⋅(∼q∨p)」つまりは「∼(∼(∼p∨q)∨∼(∼q∨p))」と表現できるので、結果、「∼」と「∨」があれば上記5種の命題函数は表現できることになる。
つぎにその用法(≒意味内容)を考える。1から3は、日常言語の用法とそれほど乖離はないので、問題はないであろう。ただ、2の「pまたはq」は、pとqがともにTである場合もTになることに注意(日常言語の場合、たとえば「A社製の醤油かB社製の醤油を買ってきて」と言う場合、その両方を買ってくることは期待されないであろう)。問題になるのは、「ならば」という自然言語での言い回しが(5の場合は「内在的」に)登場する4および5の場合である。
結論から言えば、4(もしくは5)の説明に現れる自然言語「ならば」は、言うなれば「最近似」とでも言うべきもので、自然言語「ならば」の用法と同一視すると、これは日常言語ではふつう許容されえない「ならば」文も許容することに抵抗を感じることになるだろう。たとえば、たいていの場合その日常用法にあっては、「ならば」で結ばれる文同士は、それぞれのあいだに何らかの「内的関連」が前提されていることが常である。しかし、ここでの「ならば」にあっては、そのような結びつきは必ずしも必要とされない。たとえば、「1+1=2であるなら、現在のフランス国王は禿である」は、「1+1=2」が真、そして「現在のフランス国王は禿である」が偽(つまり、「現在のフランス国王は禿ではない」)の場合、その場合にのみ、偽となる。そして、それら命題(文章)間には、少なくとも明らかな「内的関連」は存在しない。このような、数理論理学における「ならば」をとくに「実質含意 material implication」と呼び、日常言語からのそれと区別する。
つまり、上記をまとめると、『プリンキピア』での命題函数は(少なくともこの段階では)「命題(文)と命題との関係」の内実を扱うのではなく、その個々の命題の値によって外的に処理される、と言える。
次回は、上の指摘とかかわる「内包的」と「外延的」の区別、さらには、(余裕があれば)「主張記号」と、(今となっては)「『プリンキピア』独自のもの」と言える「・(ドット)」の用法について解説する。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
音
雑
虫
技術
『スペクタクルの社会』を読む
ドゥルーズ講義録
電波
趣味の数学
趣味のゲーデル
『プリンキピア・マテマティカ』を読む
自己紹介もどき
ブログペット俳句
芸術一般
言語ヲタ
お客様
GRE CS
留学
Boing Boing
映画
ちょっといい話
かなりダメな話
魂の叫び
哲学と数学
論文
引用
「いい」とも「ダメ」とも言いがたい話
悲喜こもごも
証明論
ポエム
書物への呪詛
言わずもがななことではあるけれどときに忘れてしまうこと
何か無駄なことをしよう
日々
趣味の勉強
夢
ブログの記事
翻訳
勉強
不眠
文房具
ライフハック
育児
thayashi#ucalgary.ca
(#を@に置換してください)
このブログで紹介したことのある本をランダム表示。
このブログで紹介したことのある音をランダム表示。