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ひでさんが自身のブログ上で「あなたにとっての表現物(書籍でも映画でも、何でも可)ベストワン」を公募しているので、答えてみる。


ただ、といきなり保身モードになってしまうのだが、正直に言ってしまうと、書籍であれ映画であれ、そして音楽であれ、それほど「震撼させられた」という覚えがない。程度としては「いいなあ」という「感じ」が、それなりの永きにわたって継続する、とか、そんなもんだ。

それに、これはこの手のアンケートがあった場合に回答者がひとしく口にすることだが、「ベストワン」というのはいかにもむずかしい。何か1つの書籍、映画、そして音楽を思いうかべれば、それから連想が働いて、「こんなのも好きだったな、おお、あれを忘れてた!」と数珠つなぎになってくる。また、そうした「連想」がしからしむる困難さもさることながら、「ベストワン」などというものはそのときそのときで違ってくるだろうし、「未来永劫これは動かない」というものなど、ありそうもない。

そんなわけで、あくまで現時点での、思いつくかぎりでの「いいなあ」とこれまで思ったもので、大学入学以前までに読んだり観たり聴いたりして、そして、現在にかくじつにつながっている、と思われるものの、リスト(なお、各リスト内の順番は、とくに序列を意味しているわけではなく、また、リンクは現在入手が容易と思われるものにしてあり、必ずしもじっさいに読んだ観た聴いたものにしているわけではないので、注意)。



■書籍

  • たぶん旺文社あたりから出ていた全20巻ほどの年少向け百科事典
    どれか1冊(1セット)選べ、と言われれば、これになるだろう。ちっちゃいころなど、ほとんどこれしか読まなかった。通読どころか、気に入った巻はなんどもなんども、くり返し読んだ。ただ、今から振返って「らしいなあ」と思えるのは、いわゆる「歴史もの」のような「ストーリー」と思しきものがあるものは、あまり読まなかったことだろう。やはり、というかなんというか、自然科学ものが好きだった。

  • レイモンド・スマリヤン, パズルランドのアリス, 早川書房
    たぶん、小学校の高学年ぐらいのときに読んだ。厳密でありながら、あるいは、厳密であるがゆえに「荒唐無稽」たりうるということに眩惑された。とくに、「徹頭徹尾でたらめであるためには、どういう合理的条件が必要か」を扱った10章は、今でも示唆されることが多いだろう。

  • ウィリアム・ギブスン, ニューロマンサー, 早川書房
    これも小学校高学年くらいに読んだ。いわゆる「SF」的側面よりも、全体を覆うどんよりとした感じにやられていた覚えがある。あえてリストには掲げないが、こういう「薄暗い感じ」をどうやらおれは好むらしく、同時期に『ラブクラフト全集』も熱心に読んでいた。

  • ホルヘ・ルイス・ボルヘス, 伝記集, 岩波書店
    小学校のときに味わった「厳密な荒唐無稽さのもたらす眩惑」に、たぶん中学から高校のときにかけてのどこかで読んだこの本で再会することになる。ボルヘスの言うように、俗に「幻想文学」と呼びならわされているものにあって、「火(想像力)」だけではなく「代数(構築性)」もなければ、とうていこうした「目眩」は得られまい、ということを思い知った。

  • ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン, 論理哲学論考, 岩波書店
    中公から出ていた「世界の名著」に入っているヴァージョンで、高校生のころ読んだ。どこにもエモーションの入る余地がないような命題のつらなりの底に、何とも言えぬ寂寞感、もっと言ってしまえば「かなしみ」のようなものを感じた。長じて、このドイツ語原文をすべて覚えこむにいたるまでこの書にはのめり込むことになる。



■映画

  • ジョージ・A.ロメロ, 死霊のえじき
    たしか、小学生のころ劇場で観たはずだ。ともあれ、ロメロゾンビ3部作の総決算であり、「コンシャスなゾンビ」なる、哲学的に興味深い主題も提示されているが、当時はそんなことには頓着せず、サヴィーニの職人技に魅了されていた。

  • テリー・ギリアム, バンデットQ
    サム・ライミの『XYZマーダーズ』(DVD化されてないのか!)を目当てに劇場に観に行ったら、これも同時上映されており、むしろこっちのほうに感銘を受けた覚えがある。一般的には「コメディ」ということになるのだろうが、実質はまったくそういうものではない。たしかに、「笑える」ということで言えば、この作品にも「笑える」部分はあるのかもしれないが、しかしその場合でも、それは「おかしい」から笑うのではない。「何だかよく分からない」から困り果てたすえ、しようがなく笑ってしまうのだ(これは、モンティに関しても同様)。たんに「おかしい」だけの「笑い」など、何ほどのこともない。

  • テリー・ギリアム, ブラジル
    上記『バンデットQ』がよほど印象に残ったのか、これも劇場までのこのこ観に行った。ラストの「何とも言えない感じ」にはほとほとやられ、のちのちまでこうしたものへの嗜好をつよく持ちつづけることになる。映像的にも、『バンデットQ』より格段の進歩が見られ、そこも印象的だった。

  • 押井守, うる星やつら ビューティフルドリーマー
    今考えても、アニメだ何だということはまったく関係なく、ものすごい作品だ。アニメやマンガに常套的に見られる「永遠につづく現在」という主題に真正面から取り組み、そしてそれが異様な面貌をこの作品に与えている。押井本人としては、ほんとうは違うラストを考えていたのではないか?と思ってしまいもするが、とりあえずはこれを観て「眩惑」され、そして考えることさえできれば、じゅうぶんだ。

  • 寺山修司, さらば箱舟
    今もなお再観に耐えうるかどうか、はなはだ心もとないが、これを観たうぶな高校生当時にぶっとんだことはたしかなので、正直に挙げておく。これも、賢しらなあれこれはわきにおいて、ひたすら「眩惑」されればよい作品だ。



■音楽

  • Slayer, Reign in Blood , Def Jam
    自分の金ではじめて買ったレコード、ということで。このあと、色々と「スラッシュ」と呼ばれる音楽を聴き漁ることになるが、どうも自分にはこの手の音はメジャー感が溢れ過ぎている、と最終的には判断し、あまり聴かなくなってしまうにせよ、これは歴史的名盤といってもよいと思う。

  • Rapeman, Two Nuns and a Pack Mule , Blast First
    何の因果か、中学生初期のころにから生意気にもすでにBig Blackに傾倒しており、リアルタイムで「あのアルビニの新バンド!」ということでわくわくしながら中学生当時の少ない小遣いをはたいて買い求め、プレイヤーに針を落とした瞬間にノックアウト。ほんとうに、何回聴いたか分からない。すっとこどっこいなバンド名のせいで解散に追い込まれたことが今でも悔やまれる。

  • Whitehouse, Right to Kill , Come Org
    これも中学生のとき、今は亡きUK Edison2階で購入し、その後の音楽聴取生活を決定づけられる。そのころ、運良くカム・オルグの音源のリイシュー時期にあたっており、色々と買い込んだものだ。

  • J.S. Bach, Goldberg Variations , Sony
    言わずと知れた、グールドのデビュー作。小林秀雄がモーツァルトに聴いた「疾走するかなしみ」をもろに第1変奏に聴きとり、今でもこれを聴くたびに胸がしめつけられる感じがする。

  • フリッパーズ・ギター, ヘッド博士の世界塔, ポリスター
    この作品も、そこに流れる「空っぽな寂寞感」にやられた。このアルバムのレコ発記念かなんかでクラブチッタでライヴをやることになっており、「行こうかな」と思っていたのだが、ある朝、学校に行く前に新聞を見ていたら、「フリッパーズギター・クラブチッタライブ公演中止のお詫び」のような広告が載っていて、しかもその理由が「バンド解散のため」となっており、その日一日はこのアルバムで聴かれる「空っぽな寂寞感」に支配されつつ過ごしたことを覚えている。



と、こんな感じですが、全体のキーワードはやはり「空っぽな寂寞感」。今後またこの手のリストを作ることになっても、そういう視座は変わらんでしょうなあ。

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忙しいのにありがとう。百科事典読みはオイラも小さいころやってたなあ。緑っぽいやつで20−30巻ぐらいあったやつ。子供だから写真中心に見てたなあ。
英司 2007/08/01(Wed)13:04:00 編集
いやいや、「忙しい」っつったって、こんぐらいの時間はありますよ。だって、何か考えたりということなしに、思い出しさえすれば書けるエントリでしたから(もっとも、いつもだってさほど「考えて」書いてるわけではないんですが)。

百科事典は、ふしぎと子どもと親和性が高いように思えますが、それは、ひでさんの言うようにその視覚性の求心力ということもさることながら、その断片性もおおきく寄与しているように思われます。
はやし 2007/08/02(Thu)17:24:00 編集
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