ラッセル的転回 [雑]

ラッセルは、人に自分の理論上の「欠陥」を指摘されると、あるいは自分でそうした「欠陥」に気づくと、それをより極端な方向に押し進めることで理論の「修正」を図ることがよくあったらしい。たとえば、と具体例を挙げてこのことを説明・強化することができないのが残念だけれど（誰か、ラッセルのこのような事例を知ってる方は、ぜひ教えてください）、ラッセルならいかにもやりそうなことだ。

ただ、（もしほんとうにラッセルにそうした性癖があるとして）ラッセルのそういう「極端さ」を、人はたんじゅんに批難できるだろうか？　そこで指摘される「欠陥」は、じつはそれがなければ済むというものではなく、たんにその「欠陥」の度合いが中途半端なだけかもしれない。それが「ほんとう」はどうなのか、誰も知らない。

実際問題、あるいは「世間的には」と言ってもいいだろうが、いっぱんに「欠陥」というものは忌み嫌われ、それが見つかるや否や「臭いものには蓋」とでもいった体に処理され、これはときには「妥協」と呼ばれる処世術としても発現する。だが、むしろ、そのような「欠陥」は、限りなく延長され、増幅されるべき場合もあるのではないか？

そういう「場合」がどういったものなのか、事前に抽象的なかたちで指摘することは、できない。それは、多くの場合、理論的な「問題」というよりも、実践的なそれであるゆえに。