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このところまた、おれのなかで様相論理熱が再燃中なのはすでに述べた。それでは、それの何が面白いのか? その一端をちょっとでも知ってもらうため、ごく簡単に様相論理というものを紹介したい。
様相論理というのは、ごく手短に言ってしまえば、「必然性」、そして「偶然性」という「様相」を扱うべく、ふつうの命題論理に「必然であること」をあらわす「□」というオペレータを加えたもの。たとえば、「□A」という記述は、「Aであることは必然である」ということをあらわす。また、「偶然であること」をあらわすオペレータ「◇」は「必然ではないこと」として定義される。つまり、「◇A≡¬□¬A」(ここに述語論理における∀と∃の関係とのアナロジーを見ることは容易いだろう)。
さて、このような「□」というオペレータに加え、「AがKの定理であれば、□Aである」という必然化規則と、「□(A→B)→(□A→□B)」という様相分配公理をふつうの命題論理の体系に付加した一番素朴な様相命題論理体系は、Kと呼ばれる。さらに、如上の体系Kに「Aが必然であれば、じっさいにAである」ということを主張するMと呼ばれる公理「□A→A」を加えた体系は、MもしくはTと呼ばれる。また、この公理Mの対偶から「A→◇A」、つまり、何かがそうであることだけでは、たんに偶然的にそうであるだけ、ということが前提されていることが分かる。
これ以降、S4やS5という体系が続くのだが、ここら辺りから話が段々と錯綜、というか、こちらの思考を刺戟する公理が加わってくる。たとえば、S4は如上の体系Mに「□A→□□A」という公理を加えたものだが、これは、何かが必然であれば、その必然であること自体も必然であることを主張する(これに対してS5の場合は、何かが偶然であれば、その偶然であること自体は必然であることを主張する「◇A→□◇A」という公理を加えたものである)。
何かが必然であったり、または偶然であったりすること自体は必然である、というのは、とりあえず前者に関してはもっともらしく響く。何となれば、偶然である必然というのはほとんど語義矛盾だから(とはいえ、偶然であるような必然というのも考えられないわけではない)。これに対して、偶然的偶然というのは、一見たんに屋上屋を重ねているだけに思われるが、さりとて、何かが偶然であることは必然である、というのは強すぎる主張にも思える。何となれば、何かが偶然であるのは、それ自体としても偶然だ、というのも、それはそれでおかしな主張だとも思われないから(ただ、いずれにせよ、ここでの議論はたんに「思われる」と言うにとどまり、「ほんとにそうか?」と問い詰められるとなかなかきびしいことは言うまでもない)。
さらには、容易に脳裏をよぎることであるが、「必然であることの必然性」でも「偶然であることの偶然性」でも、はたまた「必然であることの偶然性」でも「偶然であることの必然性」でも何でもいいのだが、そうしたこと自体の必然や偶然を問うことができ、このような問いは無限に問いうる。こうした様相オペレータの連なりに関して、S4とS5はそれぞれ簡略化規則を用意している。つまり、S4においては「□□...□A→□A」および「◇◇...◇A→◇A」が、S5においては「**...□A→□A」(*は□もしくは◇の任意の様相オペレータをあらわすとする)および「**...◇A→◇A」が成り立つ、とされる。
このように、意味論的に見ると、命題論理の範囲で考えてもこういう次第であるのだから、これが述語論理にまで拡張されるとどういうことになるかは明らか、というものだろう。とはいえ、というか、だからこそ、様相述語論理についてあまりながながと記述を続けても泥沼なので、最後に様相述語論理において著名な公式を一つだけ挙げ、それにまつわる問題を紹介して終わることにする。それは、「∀x□A→□∀xA」という、バーカン式と呼ばれるものである。つまり、すべてのxについて必然的にAであれば、すべてのxについてAであることは必然的である、ということ。これは、何とはなしに自明な感じもする。しかし、この式を認めると「そうであるものはすべて必然的にそうである」ということが導出できてしまい、これはM(の対偶)と衝突する。そして、この解決をめぐって色々面倒かつ面白いことになっているようなのだが、それを述べるのは本稿のスコープを越えることであり、何より、おれの知識が追いついてないので、各自文献に当たられたい。
参考文献など
このエントリの執筆に当たり、おもにスタンフォード哲学事典の「様相論理」の項を参考にした。この項は、この間紹介したQuantified Modal Logic for Philosophers の著者であるガーソンによって執筆されており、簡にして要を得た、いいサーヴェイだと思う。
書籍としては(Chellas 1980)や(Hughes and Cresswell 1996)が定番だが、前者はややまとまり過ぎており初学者には不向き、後者はよく書けてはいるけど個人的に記号の使い方が気に入らないので、おれが目を通したことのあるもののなかからであれば(Blackburn et al. 2002) がいいのではないか、と思う。また、いわゆる「古典」としては(Zeman 1973)が最近オンライン上で読めるようになったので、これもいいかもしれない(おれは読んだことなし)。
□A→A は公理なので、全称化して∀x□A→∀xA は成り立つとして良いのでしょうか。さらに推論規則により |-∀xA のとき |-□∀xA。
ということは、推論法則として |-∀x□A のとき |-□∀xA は成り立つ気がしますが、全然はずしているかも。何かが違う様な。
直感的に考えると、∀x□A を必然とする「理由」は x ごとに変化しそうな感じで、そこから □∀xA が導出出来るとすると、無理があるか、もしくは「個別の理由を張り合わせる」概念が必要そうな気がします。
強制概念に射影してなんか面白いこと、などトンデモなことを考えていたのは内緒です。
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で、Zemanのはもろポーランド記法、ですからねえ。たしかに、カッコなしですっきりしてはいるのかもしれませんが、ちょっとこれだけで引いちゃいますよね。
世界の集合とその関係、充足性からなるメタモデルみたいなのを考えるとは想像もつきませんでした。
またまたトンデモ発言ですが、公理 M は個人的に微妙。根拠無しですが、これを否定して、w_0 ← w_1 ← w_2 ← ... という感じで、M に至る極限みたいなのを考えると、面白そうな気がします。さらにそのコンテキストでの、バーカン式の解釈はどうなるのか?等興味は尽きません。
あっ、すみません。知識なしに何度もいい加減なこと書いて。丁度、今、必要に迫られ、論理の極限みたいなこと勉強しているので。
こんどちゃんと勉強して出直してきます。
関係ない話で恐縮ですが、自宅で我慢出来る品位の印刷ができ、さらに製本が可能とは、随分便利になったものだと思います。日本と米国で余り距離感がない方がさらに驚異的なのですが。
Zeman に関しては、元ブルバキ少年としては、ポーランド記法にへこんでては困るのですが、見た瞬間引いてしまいました。情けない。
何も知らず、いいかげんに書いた話につきあって頂き、ありがとうございます。
で、公理M、じつはぼくもちょっと微妙に思わないでもないんですよ。というのも、□A→Aはともかく、その対偶(のヴァリアント)A→◇Aが、まあそういうもんかなあ、という程度の腑への落ちかたでしかないから、という、これまた薄弱な根拠なんですが……。
かがみさんが仰っている、解釈モデルでの世界の極限の末にMに至る、というのは、ちょっとよく分からないんですが、何だか面白そうではあるので、もしよろしければもう少し詳述いただければ、と思います。
で、ほんとに、家に居ながらにしてそれなりのクオリティのものが印刷でき、あまつさえ製本までできちゃうんですから、いい時代になったものよのう、と思います。
「M への極限みたいなの」というのは明け方の妄想です。妄想なので意味なしですが、内容を白状します。ほんとに妄想ですが。
M=(W,R,V) で、世界 W を集合論のモデルとし、V のことは置いとくとして、R(X,x) として x in X というのを思い浮かべたのです。すると R は反射律を満たさないので、□A→A は成立しないが、X で □A が成り立つことが、その要素で A が成り立つことにより規定されるのは悪くないのではないかと。要するに外延性の公理みたいなのをイメージしたのです。さらに X の具体例として極限順序数を妄想したのが、前のトンデモ発言になったのでした。
さらに、様相論理に対する理解ゼロなので、R としてどのような関係が妥当なのか等、全く直感がなく、なんでもありで考えたらとか、W に面白そうな位相が入らないか、等々妄想の限りを尽くしたのです。
ところで、はやしさんのご指摘の通り、□A→A は本当に良いの?という感じがしないでもないのですが、A→◇A と書き直すともっともらしくなるのは不思議です。
自宅の方に書きましたが、一月程リハビリ状態に入ります。モデル理論の基本的なところがなにげにあやしいので、ある程度きちんと読み直したり、紹介して頂いた様相論理の方面を楽しませて頂きながら暮らそうかと考えています。
で、ここに書くのもあれなことですが、本来楽しみのためにしていたことが重荷になって、「それならいっそ止めてしまおうか」となってしまうのは、本末転倒きわまりなく、その上、集合論雑記のように非常に有意義なページが継続されなくなってしまうことは、ネット文化にとっても痛手でありますので、ここは一つ、「楽しければいいじゃん! つか、楽しくなかったらダメ!」というのをモットーに、ゆるゆる継続させてください。
どうもあの日は疲れが極限に達していたようで、ついついぐちっぽくなってしまいました。実を言いますと、また色々書きたくなってきたのですが、さすがにもう少し休んだ方が良いのかも知れません。
というわけで、数学が楽しくなくなったり、あまつさえやめてしまうなどということはありえませんので、ご安心の程を。ぐちは多いのですが、相当しぶとい方なのです(笑)。
で、書きたかったら書く、というのも、全然アリだと思います!
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