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『儀式は何の役に立つか』を読みながら考えるともなく考えた由なしことども。

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儀式とは何か? この本の著者チウェによればそれは、あるメッセージが自分のみならず他の人々にも共有され、かつその「共有されている」という知識も共有されている、という状態を作り出すためのものである。

たとえば、何らかの行動に人を参加させようとするに、「参加せよ」というメッセージを送るだけでは充分ではない。肝要なのは、その「参加せよ」というメッセージがみんなに伝わっている、ということをみんなが知っているということであり、そのとき始めて「みんな」は重い腰を上げ、その行動に参加しはじめる。

これは「情報の共有」と似てはいるが、それをさらに一歩進めた「共通知識」とチウェが呼ぶところのものである。

情報が共有されているとは「人々がある情報を知る」ということだけで成立するが、共通知識とは「『人々がある情報を知っている』ということをみんなが知っている」というところまでいかなければ成立しない。

この本のエッセンスは突き詰めればこれだけのことで、本の大半はこの「共通知識」ということでどれだけのことが説明できるか、というケース・スタディに充てられている。

もちろん、そうした個々のケース・スタディも充分に面白く、紹介するに足るものではあるのだが、今ここで語りたいのはそのようなことではなく、「この本って『スペクタクルの社会』のいい副読本だよな」という、読中何となく思った感想である。

まず、「スペクタクル」というものも、それが個々人に伝わるというだけではなく、一気に大量伝播という形で、そのコンテンツと「それがみんなに間違えなく伝えられた」というメタ・データが二つながら伝わり、そして人と人のネットワークを形成する、というところにその要諦がある。つまり「スペクタクル」とはチウェ謂うところの「儀式」に他ならず、この『儀式は何の役に立つか』という書物は、『スペクタクルは何の役に立つのか』という書物としても読める、というわけだ。

『スペクタクルの社会』の記述は鋭利な濃密さを湛え、それがまた魅力でもあるのだが、そのことは同時に何とも言えぬ抽象的な感じを読み手に与える。具体的にスペクタクルはどのようにわれわれに働きかけ、そして「社会」というネットワークを形成するに至るのか。そういうことについて『スペクタクルの社会』は、充分に実証的で具体性を持った形では語ってくれない。そうした「分かりにくさ」を緩和させるものとして、この『儀式は何の役に立つか』は様々な具体例を提供してくれる。「いい副読本だよな」と思った所以である。


ぼくはこの本を読みながらさらに、『スペクタクルの社会』で語られていることを、実証的に裏付け、そしてそれを数理的に表現することを夢想したが、それはあくまで「夢想」に留まるだろう。すげーやってみたいけど。

そんなわけで、われこそは!と思う、プロ・シチュのゲーム理論屋さん、やってみませんか?

って、どういう締めじゃ。

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