昨日のちょっといい話 [ちょっといい話]

ちょっといい話、というか、微妙にせつなげな話ではあるんだけど、昨日、用事をこなしに役所に行ったときのこと。

必要な書類をもらうのを待っていたら、一足先に要件を済ませた親子がいて、その子どもが「おかーさん、何もらったの？」とたずねたところ、お母さんが、

「おかーさんはびんぼーですっ、て書いてあるのをもらったんだよ」

と応えていた。

これだけだと、どこがいい話なんじゃ！という感じだろうけど、そのお母さんはそう応えるのに、別段恥じることも悪びれることもなく、子どもの問いかけに素直に、威勢よく、何度も何度も応えていた。

本当にその人が貧乏なのかどうか、それは分からない（だいたい、あそこでそんなことを証する書面がもらえるのだろうか？）。でも、もしそうだとすると、このお母さんは立派な人であると思う。

これは立岩真也もどこかで書いていたことだけど、人はなぜだか、自分の弱いところつらいことを隠しがちだ。その上、人に何かを頼むのもあまり好まないところがあったりもする。そして、そのつらいことを一人でじっと抱え込むうちに、そのつらいことがこじれていき、しまいには身動きがとれなくなってしまったりもするのだ。

弱いところは弱いところとして、つらいことはつらいこととして、もっとみんなおおっぴらにすればいい。そして、とりあえず言ってみるのだ、「ねえ、どうにかしてもらえないかな？」と。それで断られたとして、何てことはない。また別な人に話を持ちかけてみるなりすればよい。少なくとも、断られたからといって、その弱いところつらいことは、現状より悪くなりはしない。