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もちろん「シド」と言っても、楽器もろくに弾けないくせにのうのうとお子ちゃま音楽界のカリスマとして祭り上げられているどこかのシャブ中ノータリンのことではなく、かずかずの「あの」というもったいぶった形容を冠せられ語られがちな、シド・バレットのこと。
7月11日に死去、とのことだから、日本時間との兼ね合いから言えば、ついさっき死んだ、ということだろう(追記:朝日新聞によれば、死んだのは「7月初旬」とのこと。たぶん、このほうが正解でしょう)。
何らかの想いが胸中を去来しない、と言えば嘘になる。だが、別段「過去の人」として扱っているわけでもなければ、ことさら諸々の虚実の彼方にある「真実の像」を追い求めたりすることもなく、ふつうに月に一度はほぼ必ず彼の何らかの音源は今でも聴いているので、とりあえず音がそこにあればいい、という気持ちではある。
ただ、完全に音楽活動というフィールドからドロップして、新たな音源が届けられる可能性が限りなくゼロに近くなってから久しくとも、その音を作った人がどこかに生きている、という同時代感覚はどこかで抱いていたように思う。
そして、シドは決定的なかたちで、この世とはおさらばした。「新たな音源が届けられる可能性」はまさしくゼロになった。だが、陳腐な言い方だが、ひたすら音盤をのみ通して彼とのつながりをもっていたものにとっては、そんなことはどうでもよいことに思えたりもする。
ふと、ナム・ジュン・パイクの言葉を思い出す。「いちどテープにうつってしまえば、人は死ぬことを許されない」……。
シドの不幸はまさにこのことにあり、そして、その「テープ」に録音したものを聴くものにとっての幸福もまた、そこにある。
そんな気持ちをこめて、今日シドがらみの音源をウェブキャストするかも、です。
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