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神戸大阪旅行の最終日、けいこさんが「ディープ大阪行ってみます?」と言うので、新世界に連れて行ってもらった。
大阪に、というか、梅田に降り立ったとき、あまり「ああこれが大阪か」というような顕著な感慨は催さず、いわゆる「市街地」という平準的な感覚しかなかったのだが、新世界のある「動物園前」に降り立ったときから、「あ、こりゃ違うな」というヴァイブレーションがこちらに押し寄せる。
時期が連休中で観光客がたくさんおり、かつ、けいこさん曰く「昔に比べると無臭化してしまった」とのことだが、それでも、いかがわしい猥雑さがそこかしこから溢れ出ている。「これ、買う人いるんか?」という物品を陳列して地べたで売ってるおっちゃん、得も言われぬ感じを醸す演芸のポスター、同伴喫茶の広告放送、「やけくそ」とも言えるぐらい自己主張の激しい看板……。
中心地である通天閣付近はやはり、それなりに「無臭化=観光地化」が進んでいるが、周縁に行くに従い「リアルさ」というか「ディープさ」が増していく。そんななかでもやはり、ひしひしと「ああ、リアルだなあ」と思ったのは、西成釜ヶ崎だった。
西成、というのを一応説明しておくと、こちら関東で言うところの山谷とか寿町のようなもので、つまり、日雇い労働者の溜まり場。その釜ヶ崎の中心(なのか?)である「三角公園」ではちょうど「釜ヶ崎寄ってき祭り」なるものが開催中で、仮設ステージの上で半端なラップとか半端なブルースとか半端なアフリカンミュージックが演奏されていた。それを、音楽に乗るでもなく、かといって完全な無関心というわけでもなく、ぼーっと見ているおっちゃんたち。たまに、ステージ前に行き踊りだすおっちゃんもいるのだが、その踊りたるや、「ここまでビートに合わせないのは、逆にむずかしいだろうな」という唯我独尊ぶり。その周りには飼い放された犬たちが徘徊し、時おり砂塵が巻き起こる。妙に暖かな日差しのなか、表面上はフラットで平穏と言ってもいいながらも、どうしようもないぐらい持て余され滞留する、マグマのような何かを感じた。
その釜ヶ崎の場は、ほっておけばずっといてしまいそうだったので名残惜しいながらも河岸を変えて、けいこさん曰く「串カツ食べるならここ」という串カツ屋に。ここも、観光客(おれ)の勝手な思い込みかもしれないが、「なるほど、これが大阪か」という雰囲気を醸しており、まず何より、色んなことがラフ。串カツ屋だからもちろんカツを揚げるわけだが、その揚げる油がばんばんこちらに飛んでくる。それ以外も、揚げる様子やら何やらも、手際がいい、と言えばそうなのかもしれないが、見方を変えればエーカゲンな印象を受ける。カツ自体はなるほど、「カツ」と言われて連想するものとはちょっと違って、言うなればアメリカンドッグの衣のような軽さ。あとに乗り物に乗らなければいけなかったので、食べる量をかなり控えてしまったが(乗り物がかなりダメなので、あまり満腹の状態で乗ってしまうとまずい)、次回はメニューコンプリートを目指したい。
串カツ屋のあと、三角公園を探す途上で目をつけた、いい感じに枯れた喫茶店でお茶。外見から受ける印象を裏切らない枯れ具合。卓上に造花があしらわれ、お客はみんなテレビの競馬中継を食い入るように見ている。当然なのかもしれないが、観光客めいた人は、誰もいなかった。
そうこうしているうちに出発の時間が迫ってきたので、大阪国際空港へ。けいこさんがわざわざ空港まで送ってくれ、空港までのバスの車中、そして空港の喫茶コーナーのようなところでぎりぎりまで「今の左翼の面白くなさ」とか「それっぽい会話」に打ち興じ、そうして三泊四日にわたるおれの旅行は幕を閉じたのだった。
久しぶりに訪れた三角公園は、高齢化していた。仕事する気があっても、高齢者まではなかなかまわらないだろう。
仮設ステージの前で、おっちゃんたちはゴザやダンボール敷いて坐っている。はやしさんはどこでもすぐ坐りたがる。けれどステージに近いベンチは満席、というかおっちゃんが寝ている。廃材を集めているおっちゃんにベニヤ板でも借りようかと思ったが、はやしさんの服が汚れそうだ。どうしよかなと逡巡していると、砂嵐に乗って、ダンボールの切れ端が飛んできた。はやしさんがそいつをつかまえ、砂地の上に段ボールの桟敷をつくった。埃にまみれるのを気にする風もなかった。坐るのはいい。落ち着く。砂嵐がときどきやってきて、ステージもおっちゃんもライヴの音も消してしまうのだった。
それはそうと、三角公園は学校の校庭のにおいがした。
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