メイド喫茶オフレポ [メイド喫茶本編] [雑]

時雨れる空模様のなか、待ち合わせ時間よりやや遅れて、様変わりした秋葉原にまるきとともに降り立つ。そこには、「何だよ遅れやがってまったく」という不機嫌オーラを発しまくった永遠小僧さんが、眉間に皺をよせながら待っていた。「じゃがりこ食いながら待ってます」とメールには書いてあったのに、じゃがりこなぞ食ってはおらず、そして、食っていた様子もない。「ああ、じゃがりこを一袋食い終わってしまうほど待たせてしまったんだな」と考えた、お人好しな自分が憎い……。もう一人の参加者であるシータさんが少し遅れる、とのことだったので、喫茶店でシータさん到着の報を待つ。

ほどなくしてシータさんと合流して、目指す和風メイド喫茶に向かう。前もって場所はチェック済み、という永遠小僧さんの周到さに一瞬驚くが、いざ先導させてみると心もとないことこの上ない。「あそこ、中央通りですよね？」って、それ聞くの二回目だよ。結局、永遠小僧さんが書き写した地図（汚い）を見てみると、てんで通り過ぎてしまっていることが判明したのだった。

そんなこんなで、その和風メイド喫茶が入っているビルの前まで辿り着くと、エレヴェータ前にはすでにそれなりの人数から構成される男女の集団がわらわらしている。これはまずい、という動物的シグナルが発せられ、気づくとエレヴェータ横の非常階段を駆け上っていた。よせばいいのに一緒に階段で永遠小僧さんもついてくる。席順確保には一人いれば十分なのに……。案の定、階段を駆け上がってきた永遠小僧さんの呼吸は、そのまま和風メイド喫茶どころではなく倒れこんでしまいそうなほど乱れていた。

萌え系和服、とまるきは書いていたが、おれには単に卒業式の格好にしか見えない入り口のお姉さんに人数を告げると、予想通り満席の旨告げられたので、順番待ちの番号札をもらって階上の待合室のようなところに。ここいらへんまで来ると、やや「普通」と趣を異にした人たちの姿が目につくようになってくる。各自、それなりに服装やアクセサリに気をつかってはいるのだろうが、その「気づかい」の方向というか大きさというかがずれている、とでも言おうか。「そのサングラス、溶接するときに使うやつ？」と思わず聞きたくなるようなものをかけた人が、メイドグッズを物色している。

それほど待たされた、という感じもなく、番号が呼ばれたのでいよいよ店内へ。そこは、ある種の平穏さを感じさえするが、その実、並外れたエネルギーが特殊な磁場を形成していた。ミルプラトー、という言葉が頭をよぎるが、気のせいか。ビルの入り口のところにいた男女グループは、見た目も服装も普通だったので、「ああ、やっぱりそれなりに一般的、というか、そんなコアなものばかり期待するのは間違いなんだな」という印象を見事に裏切る、明らかに「別物」な人たちの像が目に飛びこんでくる。帽子の上からネコ耳を装着し何食わぬ顔で佇む、少し皮膚に疾患を抱えていそうな年齢不詳の男。素朴、と言えば素朴な印象は受けるが、そのくせ口数だけは妙に多そうな腐女子。「ああ、ここがかのメイド喫茶か」という感慨がいや増す。

店員たるメイドさんたちに関しては、如上のように、「あ、こういう人たち、卒業式にいるよね」という感じだったので、何か言うべきほどの感想はなかったりするのだが、ただ一点、客が特定のメイドさんを裏から呼び出し、プロレスラーがかぶるような覆面をプレゼントするだかかぶってみろだか言ったときのこと。そのメイドさんはそれに対して「それはイヤですぅ」と言ったのだが、この「ですう」でも「です〜」でも、いわんや「ですー」でもない、「ですぅ」と小文字の「う」で表記するほかないような発声に、何か真髄を見たような気がした。

（ファミレス編につづく）