グロかわいい [芸術一般]

本屋をうろうろしていると、マーク・ライデンの画集『不思議サーカス』が出ていた。

ライデンの絵を一言で言えば、やわらかくなまめかしい少女たちと、血と肉の融合だ。同じライン上にいる画家としてトレヴァー・ブラウンがいるが、彼と並べて「グロかわいい」という風に表現できるかもしれない。ただ、ブラウンの場合、その「グロさ」のほうが表に出過ぎているきらいがあり、「グロかわいい」というよりも端的に「エログロ」であったりするのだけれど、ライデンはふしぎとその一線を踏みこえない。

しかし、じっと見ていると吸い込まれそうになってしまうようなある種の「不気味さ」というのは、ライデンのほうがブラウンより勝っている。言うなれば、ブラウンの絵は表面的にはかなりドギツかったりするが、どこかフェイク感覚が漂い、絵の内奥から迫ってくる不穏さはあまりない。ライデンにはそれがある。

さて、『不思議サーカス』、ライデンの集大成とも言えるAnima Mundi は、現在五万円を超える古書値が付いているから、これは「買い」なのかもしれないけど、先のリンク先アマゾンでのカスタマーレヴューでも言われている通り、あまり褒められた本造りではない。やはりここは、Anima Mundi の再発を切に望むところなのだが……。