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ソニックユースのサーストン・ムーアは、日本のインタヴュアに「あなたたちの音楽は日本では『ジャンク』と呼ばれていますが……」と言われて、「そんなこと言うやつがいたら顔の上でダンスを踊ってやるよ!」と激怒したらしいのだが、なるほど、自分のやっている音楽を「ジャンク(くず)」と言われて喜ぶ人もあまりいるまい。だが、当時中学生だったおれにとっては、その「ジャンク」という言葉はきわめて不穏な魅力をたたえたものとして、肯定的に積極的に目指されるべきものとして響いた。
起源的に、いつごろ誰が、ある一群の音楽を「ジャンク」と名指したのかはもはや詳らかではないが、おれが中学生だった1980年代中葉から末にかけて、それなりにマイナーな音楽を扱う商業誌(『DOLL』とか、今ではヴィジュアル系雑誌になってしまった『FOOL'S MATE』など)の紙面や、西新宿のレコ屋(Vinyl、新宿レコード……)の棚仕切りに、このジャンクという言葉は踊っていた。
それでは、その「ジャンク」とはいかなる音楽的傾向を有するものか、というと、これがなかなか一口には言えない。ごく簡単に、ばっさり言い切ってしまうと、「ちょっと(だいぶ?)ずれたロックミュージック」ということになるかと思うのだが、とりあえず日本においては「ジャンク」という呼称のもとくくられたグループを一つひとつ見ていくと、その音楽的バックグラウンドも、そして出す音も、かなりヴァラエテリに富んでいる。
もうひとつ、これは「ジャンク」に限らずある程度マイナーで一部に熱心な愛好者がいる音楽ジャンルに共通することなのだが、「レーベル買い」が通用する、ということがある。最近の、やや分かりやすい音響系の例で言えば、ミルプラトーとかラスタノトンとかメゴとか、そんなふうに、あるジャンルに属すると思われる音源を中心にリリースするレーベルが複数存在するので、そのジャンルが気に入ればそれらレーベルの音盤を順次買い進めていけばよかった(のだが、当時の状況としては聴くべきものに比してこちらの財政状況はお寒い限りであり、いつでも財布と相談状態だった)。
というわけで、論より証拠、以下におれが「代表的ジャンクバンド」と思うものをいくつか紹介しよう。
- Big Black
「押しも押されぬ」という陳腐なフレーズを冠してもいいぐらいプロデューサ(という呼び方をアルビニは嫌がるらしく、あたうかぎり「レコーディングエンジニア」との表記が使われるけど)としての地歩を築いたスティーヴ・アルビニ在籍のバンド。ギター二本にリズムボックスという変則的な編成で、憤懣遣る方ない激情を吐き出す。アルビニのトレブリーでシャリシャリしたギターの音は、ほとんどおれの中で神格化されている。アルバムはThe Hammer Party 、Atomizer (品切れなのかな?)、Songs About Fucking の三枚あって、それぞれHomestead、Blast Firstというジャンク名門レーベルからリリース。どれも必聴。アルビニはこのBig Black解散後、Rapemanというトンデモない名前のグループを結成して、音的にはもう最高すぎるほどに最高なんだけど、バンド名が災いして所属レーベル(Blast First)の女性職員からも業務をボイコットされ、Two Nuns and a Pack Mule というどエライ傑作アルバムを残してあえなく解散。そのあとは新バンドShellacの結成だの、各種バンドのプロデュース(何と、このアルバムもアルビニプロデュースだからねえ)だの、みなさんご存知の通りです。
- Sonic Youth
これはメジャーだな。でも、おれが「ジャンク」だと思うソニックユースの作品はConfusion is Sex のみ。彼らも初期作は主にBlast Firstからのリリース。
- Pussy Galore
Jon Spencer Blues Explosionが意外にも(と言うと失礼か)ブレークしたジョン・スペンサー率いるぶっ壊れガレージバンド。何枚かアルバムはリリースしているけど、何と言っても一枚目のGroovy Hate Fuck でしょ(でも、何たることか、現在は廃盤らしい! しゃーないんでアルバム一覧)。ジョンスペンサーが奥さんのクリスティーナとやってるBoss Hogもいい。
- Butthole Surfers
「プッシー」だの「バットホール」だの、何かアレなバンド名が続きますが、ともあれ、この「ケツの穴波乗り団」も王道ジャンクでしょう。完全にイカレきってるか、と思いきや、会計士の資格持ってたりと、よく分からない。そんなことはどーでもいいとして、代表作、というか、おれがよく聴いていたのはLocust Abortion Technician 、Hairway to Steven 辺り。ま、基本アイテム、ですな。
- Swans
最初にCOP を聴いたときの衝撃といったら! 今で言うドゥームとかスラッジとかの、激遅・激重な音の原型、ですな。他にも、この手のスロー&ヘヴィーなジャンクサウンドとしてはGodflesh(Streetcleaner がオススメ)やOf Cabbages and Kings(1stアルバムも入っているNever Too Late がオススメ)なんかがいて、どちらもよろしゅうおます。
と、予定のエントリアップロード時間0時も過ぎちゃったし、何より切りがないんで、ここいらでいったん打ち止め。最後に、ジャンク系の音をリリースしているレーベルの、Discogsでのページを挙げておきますので参考にしてください。
何か重要なバンドだとかレーベルが抜けてたら教えてね。
またしょーむないコメントですスミマセン:ジャンクって言葉のしょっぱな出所が分からないんですが、“ジャンク・フード”で自家脳内定着してるんでどうしても、マクド・フライドポテト的属性から離れられないんですよねえ。
なお、ジジェクのミロセヴィッチに関する文章を仮訳出してみましたので見てみてね。では。
で、「ジャンク」の日本における音楽ジャンルを指す呼称としての出所ですが、たぶん、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンなんかのノイズ=インダストリアル系のメタルパーカッションからの連想で、音像的にも、そして人脈的にも近しい「ジャンク連中」のやる音楽にこの語が用いられたのではないか、とも思いますが、「ジャンク」というそれそのものの語義を考えると、ミュージック・コンクレットでピエール・シェフェールが「ドレミの外」に出ようとしたように、「ロックミュージック」というとりあえずの境界策定のなかで「その外」に出ようとする挙措をこう呼んだのかなあ、とも思ったりします。
ジジェクの記事、猫屋さんも仰っているように、これぐらいの長さの文章だと、ある程度ストレートパンチをかましてきて「え?」となることがないですね。便器に座るジジェクのお写真もすてきです。つか、まともに内容に関わるコメントじゃなくって申し訳ない。
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