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「マルクス主義」とイデオロギッシュに捉えた場合、マルクスの主張の勘所というのはその「労働価値説」と「搾取論」にあると言えるだろう。だが、それらが根拠を欠いた単なる「教説」だとしたら? 恐ろしいことに、数理的マルクス経済学、あるいはアナリティカル・マルクシズムによれば、労働価値説も搾取論も、理論的には支持し難い、ということになる。

ざっくり言ってしまえば、マルクスの主張というのは、こうだ。労働者の労働と、その労働によって生産された商品の価格というものは連動している。つまり、労働の価値というものが、商品の価格に転形している、と考えることができる。さらに、そうした商品を資本家は市場で売り、そして利潤をあげるわけだが、この利潤というものは本来労働者が受け取るべきもの、つまり労働者が為した労働の価値から搾取されている。ゆえに……というわけだ。

労働価値説については、詳細は省くが、スティードマンなどのスラッフィアンによって、労働価値を商品価格の説明項として用いることの無意味さと、そしてその有害性が指摘され、さらには、労働価値を商品価格に転形させるにしても、これはごく特殊な場合しか可能でないことがはっきりしてきた。

また搾取論に関しては、いわゆる「マルクスの基本定理」として、「利潤率が正になるのは、搾取率が正の場合であり、またその場合に限る」という定理が証明されている。つまり、「利潤あるところに搾取あり」ということが、厳然たる「数学的事実」として証明されたのだ。これだけ見ると、「何だ、やっぱりマルクスは正しいではないか。労働者は搾取されているのだ!」と思うかもしれないが、ちょっと待って欲しい。この「マルクスの基本定理」にはその拡張ヴァージョンである「一般化された商品搾取定理」というものが存在し、それによれば、搾取対象が専一に「労働」である必然は全くないのだ。となると、確かに「搾取」はあるのかもしれないが、それと労働を結びつけるリングが欠けている、ということになる。

このように、「(伝統的)マルクス主義のコア」と呼べるような部分は、反論のしようがないかたちで否定的に解決されてしまった。それでは、何であれ「マルクス主義」というものは滅びるしかないものなのか? 「そうではない」とアナリティカル・マルクシストたちは言う。確かに、マルクス(主義者)の主張してきたある部分は無に帰されるべきものであるかもしれないが、それでも、マルクスが思索してきたと、そして目指したヴィジョンは未だ有効性を失ってはいない。教条的ではない、そうしたマルクスの本当の「コア」を、あたうかぎりフォーマルに、「信仰」ではなく「理解」できるように仕立て直すのがアナリティカル・マルクシズムの使命なのだ……。

それでは、今述べたような「労働価値説と搾取論の否定」というネガティヴなものではなく、アナリティカル・マルクシストたちの実定的な成果としてはどんなものがあるのだろう? そのことを今後、折に触れ紹介していきたい、と思う。

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