忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「マルクス主義」とイデオロギッシュに捉えた場合、マルクスの主張の勘所というのはその「労働価値説」と「搾取論」にあると言えるだろう。だが、それらが根拠を欠いた単なる「教説」だとしたら? 恐ろしいことに、数理的マルクス経済学、あるいはアナリティカル・マルクシズムによれば、労働価値説も搾取論も、理論的には支持し難い、ということになる。

ざっくり言ってしまえば、マルクスの主張というのは、こうだ。労働者の労働と、その労働によって生産された商品の価格というものは連動している。つまり、労働の価値というものが、商品の価格に転形している、と考えることができる。さらに、そうした商品を資本家は市場で売り、そして利潤をあげるわけだが、この利潤というものは本来労働者が受け取るべきもの、つまり労働者が為した労働の価値から搾取されている。ゆえに……というわけだ。

労働価値説については、詳細は省くが、スティードマンなどのスラッフィアンによって、労働価値を商品価格の説明項として用いることの無意味さと、そしてその有害性が指摘され、さらには、労働価値を商品価格に転形させるにしても、これはごく特殊な場合しか可能でないことがはっきりしてきた。

また搾取論に関しては、いわゆる「マルクスの基本定理」として、「利潤率が正になるのは、搾取率が正の場合であり、またその場合に限る」という定理が証明されている。つまり、「利潤あるところに搾取あり」ということが、厳然たる「数学的事実」として証明されたのだ。これだけ見ると、「何だ、やっぱりマルクスは正しいではないか。労働者は搾取されているのだ!」と思うかもしれないが、ちょっと待って欲しい。この「マルクスの基本定理」にはその拡張ヴァージョンである「一般化された商品搾取定理」というものが存在し、それによれば、搾取対象が専一に「労働」である必然は全くないのだ。となると、確かに「搾取」はあるのかもしれないが、それと労働を結びつけるリングが欠けている、ということになる。

このように、「(伝統的)マルクス主義のコア」と呼べるような部分は、反論のしようがないかたちで否定的に解決されてしまった。それでは、何であれ「マルクス主義」というものは滅びるしかないものなのか? 「そうではない」とアナリティカル・マルクシストたちは言う。確かに、マルクス(主義者)の主張してきたある部分は無に帰されるべきものであるかもしれないが、それでも、マルクスが思索してきたと、そして目指したヴィジョンは未だ有効性を失ってはいない。教条的ではない、そうしたマルクスの本当の「コア」を、あたうかぎりフォーマルに、「信仰」ではなく「理解」できるように仕立て直すのがアナリティカル・マルクシズムの使命なのだ……。

それでは、今述べたような「労働価値説と搾取論の否定」というネガティヴなものではなく、アナリティカル・マルクシストたちの実定的な成果としてはどんなものがあるのだろう? そのことを今後、折に触れ紹介していきたい、と思う。

PR
この記事にコメントする
お名前
メールアドレス
URL
コメント
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
最新トラックバック
メール
ブログ作成者(はやし)に直接訴えたいことがある、という場合は、下のアドレスにメールをどうぞ。

thayashi#ucalgary.ca
(#を@に置換してください)

ブログ内検索
Google
WWW を検索 このブログ内を検索

はやしのブログ内で紹介された
 書籍の検索はこちら
 音盤の検索はこちら
ランダムおすすめ
(忍者ブログに引越してから、うまくうごかなくなってしまいました。いつか、直します)
Randombook
このブログで紹介したことのある本をランダム表示。
Randomusic
このブログで紹介したことのある音をランダム表示。
自分がらみのリンク
はやしのブログ書籍一覧
このブログで言及された書籍の一覧。
はやしのブログ音盤一覧
このブログで言及された音盤の一覧。
最近のおすすめ本
最近のおすすめ音

Copyright © [ はやしのブログ ]
No right reserved except those which belong to someone else.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート and ブログアクセスアップ
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]