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今月の月刊言語は「若者ことば大研究」という特集で、収録論文の全部が全部「素敵に面白い」というわけではけっしてないけれど、「ネタ的情報」という観点から見るとけっこうな「宝庫」である。その中で、とくに「お、おもろいな」と思ったのは、若者ことばの地域分布を紹介する「若者ことば全国分布図」(永瀬治郎)と、若者ことばの成り立ちを言語構造から説明した「若者ことばの言語構造」(窪薗晴夫)だ。

前者の「分布図」は去年行われた若者ことばの全国分布調査のレジュメのようなもの。こういうのは理屈どうこうではないから、純粋に小ネタ的な面白さ。このレジュメでは大きく分けて「ファーストフード・コンビニエンスストア」「アミューズメント施設」「感情を表わす言葉」のそれぞれが各地域の若者によってどのように言われているかまとめてあるのだが、たとえば、マクドナルドが「マック」とか「マクド」とかは分かるのだけれど、ファーストキッチンが首都圏を中心に「ファッキン」と呼んでいるやつがいるだとか、ほんとかよ、てなもんである。

後者の「言語構造」では、若者ことばの成り立ちが、短縮語、音位転換、意味変化、語法変化の四つに分けて、例を挙げながら解説されているのだが、その各々について、もはや「若者ことば」でも何でもなく「普通のことば」として流通している例も挙げていて興味深い。たとえば、「意味変化」とは読んで字のごとく「やばい>いい」のようにその語の意味が変わることであるが、これは、もともと「自慢」の意だった「我慢」がいい意味に転化したのとまったく同様の現象である。また、「音意転化」とはこのエントリのタイトルで挙げたように、「ふんいき(雰囲気)>ふいんき」というように、発音の順序が変わるものを指すのだが、これもタイトルに示したように、おれは「雰囲気」を「ふいんき」と発音する人に出会ったことがないので、これまた「ほんとかよ」と思ったのだが、たとえば、「さざんか」というのはたしかに漢字で書けば「山茶花」で、これに従えば「さんざか」がもともとは正しいのであろうが、今や「さざんか」を「さんざか」と呼ぶ人もあまりいるまい、ということで、「ほんとかも」と納得してしまったのであった。

というわけで、この「若者ことばの言語構造」においては、「若者ことば」に対する価値判断は全く抜きに、その言語現象としての側面からもっぱらアプローチする姿勢が気に入ったので、この同じ作者による『新語はこうして作られる』も読んじゃうかも。

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バイト先の30代後半の音声さんは「ふいんき」と発音します。そのように覚えてしまったというのが本人の弁。でも漢字では「雰囲気」と書くし、「ふんいき」と読むことが「正しい」こともちゃんと知ってます。指摘すると、言い直す時は「ふ・んいき」と苦しそうです。
「ふいんき」と発音する人が多くなれば、「雰囲気」と書いて「ふいんき」と発音するのが「正しい」とされるようになるかも。
言葉のはたらきは不変(普遍)でも、言葉自体は変化するものなんですね。
けいこ 2006/02/22(Wed)01:10:00 編集
言葉でも何でもそうだけど、いったん「そう」と思い込んじゃうと、たとえ頭では「間違ってる」と分かっていてもなかなか矯正するのは難しいですよねえ。

で、この月刊言語の特集では、言葉のシンタクティカル・セマンティカルな変化は言うに及ばず、「若者文化圏」での言葉のプラグマティカルな面の変化、つまり「言葉の働き」の変化についても触れられていて、これもちょっと興味深い。
はやし 2006/02/22(Wed)05:25:00 編集
全然関係ない話ですが、パリのノートルダム寺院の入り口には、welcome bienvenu に並んで“よこそう”と書かれています。
猫屋 2006/02/22(Wed)09:14:00 編集
やはり、日本語ネイティヴではない人が操る日本語というのは、往々にして奇怪なことになってますよね。「ようこそ>よこそう」ならまだしも、あっちの飲食店のメニューで気を利かせたつもりの日本語表記とか、ちょっとこれは頼むのが恐ろしいな、という事態になってたりしますもの。
はやし 2006/02/25(Sat)02:33:00 編集
あ、やっぱり「ふいんき」って言っている人はいるにはいるのですね。バスガイドが添乗しているようなバスも、そしてテレビも見ないので、ぼくとしてはフィールドワークに頼るしかありませんが、それらの人たちの年齢属性としてはやはり若人なのでしょうか? 地域的には、それなりに年配の人でも音位転換してたりするのかな?
はやし 2006/02/25(Sat)02:36:00 編集
以前、京都に行ったときのバスガイドさんも「ふいんき」って言っていて気になった覚えがあります。
アナウンサーでも、原稿を読んでいないとき(レポートや実況など)だと、ごく稀に「ふいんき」と言う人もいます。
moricoro 2006/02/25(Sat)12:29:00 編集
実は、昔、ズブの京都語を話せ「た」私ですが、「ふいいき」に近い発音をしていたような記憶があります。「ん」を強調して「ふんいき」と発音し出したのは大阪語に接触してからかと。
原作たそがれ清兵衛 2006/02/25(Sat)15:16:00 編集
あ、京都の方では「ふんいき」ではなく「ふいんき」に近い発音をしているのですか? ということは、地域語の展開、という可能性もありますね。ちょっと興味深い。
はやし 2006/02/26(Sun)02:53:00 編集
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