[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今月の月刊言語は「若者ことば大研究」という特集で、収録論文の全部が全部「素敵に面白い」というわけではけっしてないけれど、「ネタ的情報」という観点から見るとけっこうな「宝庫」である。その中で、とくに「お、おもろいな」と思ったのは、若者ことばの地域分布を紹介する「若者ことば全国分布図」(永瀬治郎)と、若者ことばの成り立ちを言語構造から説明した「若者ことばの言語構造」(窪薗晴夫)だ。
前者の「分布図」は去年行われた若者ことばの全国分布調査のレジュメのようなもの。こういうのは理屈どうこうではないから、純粋に小ネタ的な面白さ。このレジュメでは大きく分けて「ファーストフード・コンビニエンスストア」「アミューズメント施設」「感情を表わす言葉」のそれぞれが各地域の若者によってどのように言われているかまとめてあるのだが、たとえば、マクドナルドが「マック」とか「マクド」とかは分かるのだけれど、ファーストキッチンが首都圏を中心に「ファッキン」と呼んでいるやつがいるだとか、ほんとかよ、てなもんである。
後者の「言語構造」では、若者ことばの成り立ちが、短縮語、音位転換、意味変化、語法変化の四つに分けて、例を挙げながら解説されているのだが、その各々について、もはや「若者ことば」でも何でもなく「普通のことば」として流通している例も挙げていて興味深い。たとえば、「意味変化」とは読んで字のごとく「やばい>いい」のようにその語の意味が変わることであるが、これは、もともと「自慢」の意だった「我慢」がいい意味に転化したのとまったく同様の現象である。また、「音意転化」とはこのエントリのタイトルで挙げたように、「ふんいき(雰囲気)>ふいんき」というように、発音の順序が変わるものを指すのだが、これもタイトルに示したように、おれは「雰囲気」を「ふいんき」と発音する人に出会ったことがないので、これまた「ほんとかよ」と思ったのだが、たとえば、「さざんか」というのはたしかに漢字で書けば「山茶花」で、これに従えば「さんざか」がもともとは正しいのであろうが、今や「さざんか」を「さんざか」と呼ぶ人もあまりいるまい、ということで、「ほんとかも」と納得してしまったのであった。
というわけで、この「若者ことばの言語構造」においては、「若者ことば」に対する価値判断は全く抜きに、その言語現象としての側面からもっぱらアプローチする姿勢が気に入ったので、この同じ作者による『新語はこうして作られる』も読んじゃうかも。
「ふいんき」と発音する人が多くなれば、「雰囲気」と書いて「ふいんき」と発音するのが「正しい」とされるようになるかも。
言葉のはたらきは不変(普遍)でも、言葉自体は変化するものなんですね。
で、この月刊言語の特集では、言葉のシンタクティカル・セマンティカルな変化は言うに及ばず、「若者文化圏」での言葉のプラグマティカルな面の変化、つまり「言葉の働き」の変化についても触れられていて、これもちょっと興味深い。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
音
雑
虫
技術
『スペクタクルの社会』を読む
ドゥルーズ講義録
電波
趣味の数学
趣味のゲーデル
『プリンキピア・マテマティカ』を読む
自己紹介もどき
ブログペット俳句
芸術一般
言語ヲタ
お客様
GRE CS
留学
Boing Boing
映画
ちょっといい話
かなりダメな話
魂の叫び
哲学と数学
論文
引用
「いい」とも「ダメ」とも言いがたい話
悲喜こもごも
証明論
ポエム
書物への呪詛
言わずもがななことではあるけれどときに忘れてしまうこと
何か無駄なことをしよう
日々
趣味の勉強
夢
ブログの記事
翻訳
勉強
不眠
文房具
ライフハック
育児
thayashi#ucalgary.ca
(#を@に置換してください)
このブログで紹介したことのある本をランダム表示。
このブログで紹介したことのある音をランダム表示。