北米に来てからよく食べるようになったもの [食]

「郷に入っては郷に従え」ではないけれど、北米に来てから、外的条件のしからしむるところもあいまって、日本ではあまり食べなかったようなものをよく食べるようになった。日本に長く暮らしていた人が日本以外のところで暮らしはじめると、まず日本の食べものが恋しくなるらしいけど、ぼくは、あまりそういう恋しさは感じず、むしろ、日本では味わえなかった（あるいは、日本でも味わえはするけれどあえて味わおうとはしなかった）食べものとの出会いをたのしんでいる。以下、そういう出会いの一端。

くだものが入っているしょっぱい系のもの
日本にいるときは、くだものとしょっぱいものの組み合わせ、たとえば、サラダにりんごとか、酢豚にパイナップルとか（って、そもそも酢豚自体あんまり食べないのだけど）は、出されれば食べるし、食べたら食べたで「それほどわるくないじゃないか」とおいしくいただいてはいたのだけど、自分から積極的にそういう組み合わせを求めることはなかった。それが、感謝祭のときに七面鳥＋クランベリー・ソースという組み合わせを味わってからというもの、一気に「くだもの＋しょっぱいもの」という組み合わせに抵抗がなくなった。「抵抗がなくなった」というより、むしろ、積極的に求めるようになった。だからいまでは、クランベリー・ソース抜きの七面鳥なんて考えられないし、ビーツのサラダにはぜひともりんごは入っていてほしいし、ハワイアン・ピッツァ（ベーコン＋パイナップルという組み合わせのやつ）も「どんと来い！（ことによったら自分でたのんじゃうかも！）」というまでになっている。

ビーツ
生のビーツは日本ではあまり手に入らないであろうので（行くところに行けば手に入るんだろうけど、少なくともぼくが行っていたようなふつうのスーパーでは見かけたことはない）、これは日本ではあまり食べなくて当たり前ではあろうけど、それにしても、北米に住んでいる非スラブ系民族の家庭としてはべらぼうにビーツを食べていると思う。うちではビーツのスープ、そして上でちらっと言及したビーツのサラダあたりをよく食べるのだけど、いずれにせよ、その泥臭さがたまらない。

フュージョン寿司
「フュージョン寿司」とは、日本でもそれなりに名が知られているカリフォルニア・ロールのように、北米的（あるいはもっと広く、日本的ではない）食文化と寿司が融合したもので、最初のころは「選択の余地がないから」という致し方なさから食べていたのだけど、だんだんと慣れるにしたがって、ヤム芋を揚げたやつが入っていたりだとか、エビフライが巻いてあったりだとか、鉄火太巻きにチリ・マヨネーズがかかっていたりだとかというものも、何の抵抗もなく食べられるようになった。とくに、鉄火太巻きにチリ・マヨネーズ（こちらでは「スパイシー・ツナ」と呼ばれている）はお気に入りで、寿司を買うときにはほぼかならず買う。

ポテトにビネガー
「揚げ物にビネガー」という組み合わせは、フィッシュ・アンド・チップスの存在によって（少なくとも知識としては）日本でもなじみのあるものであろうけど、ここカナダは、さすが英連邦加盟国だけあって、マクドナルドにもちゃんとビネガーが置いてある。そして、この「ポテト＋ビネガー」という組み合わせは、ぜひとも英連邦王国以外でも普及してほしいと思わせるぐらい、合っている。（ちなみに、ポテト、あるいはより一般的に揚げ物に合わせる酢は、日本風の米酢ではダメで、ホワイト・ビネガーあるいはモルト・ビネガーでなければならない）