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この係争で争点となっているのは「著作権侵害を可能とするテクノロジーの提供者は、そのテクノロジーを用いてなされた著作権侵害の責任を負うか?」というもので、古くは1984年のベータマックス訴訟にまで遡る論点である。
ベータマックス訴訟とは、ソニーの家庭用VTRが著作権を侵害するために用いられる可能性があるので、翻ってその製造者たるソニーにも著作権侵害を幇助したという責任がある、という訴えがなされたものだ。
結局、このベータマックス訴訟は、何らかの技術が著作権侵害に用いられることがあるにせよ、主に合法的な用途に用いられる限り、その技術を法的に規制するには及ばない、との判決が下された。
時は下って2003年、今回のGrokster裁判の第1ラウンドとも言える裁判が米地方裁で争われたが、ベータマックス訴訟の判例を全面的に援用し、著作権者側敗訴、Grokster側勝訴、との判決が下った。原告側はこの判決を不服として控訴審に持ち込むも、控訴審でも地裁の決定、つまりはベータマックス訴訟の判例を全面的に支持、結果は変わらなかった。
そして今回、ベータマックス訴訟そのものから見直してくれ、という、映画制作会社の嘆願の叫びが、米最高裁にこだますることになったのだ。
当日の米最高裁の様子
さて、この口頭弁論がいかに推移したかは、日本語でも読めるところがすでに出てきているので(参考:その1、その2)、あまり詳らかには触れないが、総評としては、最高裁判事は概ねMGM側の主張に懐疑的であり、基本的にはベータマックス訴訟の判例を支持している、と見られる。
EFFのスタッフのライヴブッロギングが伝えるところによれば最高裁判事の意見は次のよう。
何度も何度も米最高裁判事は、RIAAやMPAAの弁護士に、もし彼らの言うなりに弱小発明企業(いみじくもデイヴィッド・ソーター判事は「ガレージにいるようなあんちゃん」と形容した)を規制した場合に生ずるインパクト、ということに関する質問が投げかけられた。またスティーヴン・ブレイヤー判事はMGM側の弁護士に、もしMGMが主張する規制を採用した場合、新規技術の開発者(たとえば次世代のiPodのような)が後々になって著作権侵害のかどで訴えられることはない、という保証を彼の弁護士はその開発者に与えることが出来るのか、と厳しく問い詰めた。
スカリア判事は、原告側の議論には疑義を持つとし、技術の合法的利用と非合法的利用の境目が常に変わり続ける状況を鑑みるに、原告側が提案する「一次的利用」というものは意味をなすのか、と問いかけた。
さらに、当日口頭弁論を傍聴したハーヴァードの法学生は次のような分析をしている。
少なくとも何人かの判事たちは、何らかの技術の開発者が、それを開発した時点で、将来どのようにその技術がマーケットで用いられるかを予見できるのか、決めかねている様子だった。…(後略)…
これに対するMGMの回答はごく不満足なものだ。彼らはiPodを引き合いに出して言う。「iPodは開発されたときから、たくさんの完全に法に則った利用があることは明白だった。たとえば、自分の持っているCDをリッピングして、それをiPodにストアする、とか」。これは非常に興味深い発言だ。…(中略)…というのも、これは彼らが負けを認めたも同然の発言だからだ。もし彼らが今回の争いに勝ったとしても、禁反言によりリッピングはその違法性を問えないのだから。…(後略)…
また当日最高裁には、「おれのTIVOにさわるな!」、「RIAAよ、おれのiPodから手を払いのけろ!」といったプラカードを持った群衆が押し寄せ、この事件に関する公衆の関心の高さを物語ってもいた(当日の最高裁周辺の様子@Flickr)。
という感じで、下馬評的には、昨年下された控訴審の判決が引っくり返ることはない、という印象を受けますが、上で説明した経緯を見てもらっても分かるように、映画・音楽産業ひつこいですからねえ。
DLも増えたけど、売上げも上がってるよ!ってことなんだから、いいじゃん!(まあ、映画と音楽ではちょいとばかり事情は違うけどね)
てな訳でBoing Boing番外編でした。
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