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本を読むのはいっぱんに「よいこと」とされている。ほんとうにそうか。百歩譲って本を読むのはよいことだとしても、あることがよいことであるという判断とそれをやらなければならないという当為はべつだ。それなのに、あたかもそれが当為であるかのように人は本を読むことをすすめられ、ときに強制される。強制されて読む本がおもしろいわけはない。こうして、無理じいさえされなければ本を読むことがそれほどきらいにはならなかったかもしれない人も読書ぎらいになっていく。もちろん、本なんて読まなくてもまったくかまわない。ただ、あることを好きになっていたかもしれない人が出会いのまずさゆえそれをきらいになってしまうというのは、やはりもったいないことだ。

本なんて読まなくてもまったくかまわない。ただ、本を読めば「役に立つ」知識が身についてそれがゆえ身を助けられるということもあるかもしれない。あるいは、小説でもうまく読めば「べつの人生を生きる」ことができてそれがゆえ「人としての幅」が広がるということもあるかもしれない。それでも、そうした見方は読書の一面しか捉えていない。身につけた知識はじつは「役立たず」でそうした知識をためこんでも「無能の人」と思われるだけかもしれない。あるいは、「べつの人生を生きる」ことのほうにおもしろみを見いだしふだんは夢うつつで過ごすようになるかもしれない。無能の人も夢うつつも、世間的にはおそらくあまり歓迎されないだろう。

ただ、うえのように言ったからといって、寺山修司の「書を捨てよ町に出よう」という言葉の通俗的に解釈されたバージョンを称揚しようともまったく思わない。通俗的に受けとられた「書を捨てよ町に出よう」は結果的に、「町をうろつくことは本を読むよりもよりおおくの価値を持ついとなみである」とかんちがいしてただ町をうろつくバカを量産しただけだ(寺山が「町に出よう」といざなったのは、本と知識になずんで底を打ってしまたような、まさに寺山本人のような人であろう)。町をうろつくのに寺山の後ろ盾などいらないし、それを読書と比較しなければならない理由もない。誰が何と言おうと、本を読みたければ読めばいいし、町をうろつきたければうろつけばいい。それだけの話だ。
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