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毎年、哲学者年刊 Philosopher's Annual が9月になると、前年度に公開された哲学論文からベスト10を選ぶという企画をやっており、今年も2008年度の哲学論文ベスト10が発表されたんですが、そのなかから随時2本ずつ読んで、かんたんな内容紹介と感想をちんたら書き連ねていこうかと思います。

ちなみに、「ベスト10」といっても、それらのなかで順位づけがされているわけではなく、いきおい、ここでの読む順番も論文の出来を反映したものではありません。


擬念と信念(タマル・サボー・ゲンドラー)[PDF]

「信念」とは通常、それを抱いているその人は「真である」と思っていることについてのものであり、そして、そうした信念にもとづいた行動も、その「真である」ということを元にしたものとなっている。ところが、如上のような信念とは異なり、「偽である」と本人は思っている命題を「真である」と解釈したうえでなければうまく説明できない行動をとるときがある。それが「擬念 alief」と呼ばれるものであり、著者はこの論文でそうした概念の必要性を説いている。

ひじょうに読みやすく、おもしろい論文であり、論文の書き方としてもおおいに参考になる。(ただ、じゅんすいに「哲学論文」という感じではなく、認知系の論文と捉えたほうが妥当なような気もする)


帰結主義なき功利主義: ジョン・スチュワート・ミルの場合(ダニエル・ジェイコブスン)[PDF]

哲学業界の主流な解釈では、功利主義というものは必然的に帰結主義を意味する、ということになっている。つまり、あるものごとの善悪を判断する場合、功利主義に則れば、そのものごとが全体の利得を促進させるとき、そしてそのときのみ「善」と判断されるわけで、ゆえに、あるものごとが内在的、あるいは同じことだがそのもの自体として「善」であるかどうかという問いの立て方は意味がなく、もっぱらそのものごとが引き起こす帰結=効果に着目して判断が下されるものとされる。著者は、こうした功利主義についての伝統的解釈に真っ向から反対し、功利主義、とくにミルのそれは帰結主義的ではない、と論じる。

ひじょうにこくのある論文であるが、「いかにも哲学論文」といった体で、読んでいてそれほどおもしろいものではない。

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