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ふだん紹介している音盤は、どうしても日本以外のものに偏りがちで、そのうえ、ややとっぱずれたというか、あまり「うた」に重きがおかれたようなものではなかったりするので、そうした傾向とバランスをとるために、「日本の、うたもの」という二重の縛りをかけた現時点でのベストを考えてみる。
ハードにさせて ツジコノリコ (Mego, 2004) |
これは、以前にも言ったことがあるように、1曲目と2曲目のためだけでも、プレミアの付いたユーズド価格を払う価値がある。バッキングトラックの不定形さとうたわれるうたの断片性が総合的にかもすある種の「ストレート」さのまえには、あれこれうるさいことを言うのがばからしくなってくる。
人中間 宮沢正一 (いぬん堂, 2008) |
宮沢正一はもっともっともっともっと聴かれてもよいのに、それほど聴かれている様子がない。残念至極なことである。「うたもの」ということでは『キリストは馬小屋で生まれた』をまっさきに挙げるべきなのかもしれないが、ここでは「これを聴いちゃった日にゃあ、並みいるギタードローンバンド、たとえばSunn O)))なんかも、甘っちょろく聴こえてしまう」という重低音ギタードローンがフィーチャーされたこの作を挙げておく。ネットでちょろっとこのアルバムについて調べてみたら、あんがい「重くて(あるいは、こわくて)そうそうは聴かない(聴けない)」との評が多くてびっくりした。なんにせよ、繰り返しになるが、宮沢正一はもっともっともっともっと聴かれてよい。
'77 Live 裸のラリーズ (Rivista, 1991) |
あまりにも定番すぎて挙げるのがはばかられるのだが、じじつよく聴いているのだから挙げないわけにはいくまい。これが出た当初、おれはまだ高校生で、2枚組で7,000円というめちゃくちゃな値付けに度肝を抜かれ、買おうかどうしようか迷ったものだが、いま思えば買っておいてほんとうによかった、と思う。夜中にヘッドフォンをして爆音で聴くと、おちつく。
Alienation YBO2 (Trans Records, 1986) |
YBO2は、あまり「直球のうたもの」という感じではなく、おれとしても、吉田達也のドラムとK. K. Nullのギターというアンサンブルをたのしんで聴いているふしが大きいのだが、いずれの曲もうたメロがひじょうに印象的であり、「うたもの」としてもたのしめることはまちがいない。北村昌士のロバート・スミスっぽいヴォーカルも好きだ。
時空の水 平沢進 (ポリドール, 1989) |
これは、直球のうたもの。たしかに、収録曲のなかには「うーん」となってしまうものもあったりするが、トータルとしてやはりすばらしい作品だと思う。
あぶらだこ(亀盤) あぶらだこ (徳間ジャパン, 1989) |
完璧。そのひとことに尽きる。
ヘッド博士の世界塔 Flipper's Guitar (ポリスター, 1993) |
1曲目冒頭の「イルカが手をふっているよ さよなら」で「ああ」と思えなければ、聴いたとしてもあまり意味がないのかもしれないが、さりとて、そもそも音楽聴取に「意味」なぞ要るわけでもなし、たんじゅんに聴いてたのしめれば、それでよい。しかし、やはり、そういう「ああ」と感じられる要素というのは、たとえば「スノビッシュな宝探し」とはまったくちがう意味で重要だと思われるので、「ああ」と自然に思えるまで音楽行脚をつづけ、そのときが来たらまた聴けばよい。
水 さかな (トランジスターレコード, 2009) |
ヴァイナルの『洗濯女』でその音をはじめて耳にし、スラップ・ハッピーのねじれた(あくまで「ねじれた」であって、「ひねくれた」ではない!)部分が何倍も増幅されたかのようなその音像に感じ入ったものだが、トータルではやはりこの『水』がいちばんよいのではないか、と思う。ぜんぜん知らなかったのだけど、今年に入って再発されたようで、ひじょうにめでたい。
ネイルフラン 割礼 (ビクター, 1989) |
割礼の音盤はこの『ネイルフラン』に至までのものは、つまり『パラダイス・カッパ』も『Live '88』も必聴で、しょうじき1枚だけというのはひじょうに選びづらいのだけど、もろもろ勘案のうえ、これにする。1曲目「溺れっぱなし」での、宍戸幸司のギターと早川岳晴(だったと思う)のエレクトリック・チェロのからみはほんとうにすごいし、それに載る歌詞も、クサいと言えばクサいのだけど、やっぱりグッとくる。寝る前にアルバムタイトル曲でもある「ネイルフラン」を聴いたりなんかすると、たとえば高校生のときに、文化祭の用意かなんかで帰りが遅くなったときに夕日を見て感じた、あの何とも言えない寂寞感が溢れる夢が見られたりして、いいかもしれない。
哀秘謡 哀秘謡 (徳間ジャパン, 1998) |
灰野敬二はとにかくリリースが多くてどれを選んだものか迷うところだけど、「うたもの」ということではやはりこれになるのではないか。「灰野敬二入門」としても、聴きやすくて好適、だと思う。
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