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アメリカで研究生活、それも哲学なんかをやってると、とうぜんそれなりの量の書きものを書かなければならず、けっこう苦労しています。そんな苦労の「楽屋裏」をちょろっと紹介。

まず、「英語でものを書く」というときに必要になるのは和英辞典、と思うかもしれませんが、じっさいにはあんま使わないんですよね。単語レヴェルでの「日本語から英語へ」という変換はそれほど苦労なくできるし、そういう単純変換に関しては、たとえばアルクのオンライン辞典などを使ってしまえばいいのですから。問題になるのは、ある日本語に対応する英語が、自力でにせよ辞書だよりでにせよ分かったにしても、それを文章に組み込んでちゃんと使えるか、ということです。

たとえば、「強い疑い」ということを英語で表現したいとしましょう。ぼくの場合、「強い疑い」と聞いてぱっと思いうかぶのは"strong suspicion"なのですが(じっさい、上のアルクで調べてみると、該当例文4件のうち3件でこの"strong suspicion"が「強い疑い」に対応するものとして用いられている)、とうぜん、「じゃあ、"strong doubt"とも言えるのかな?」と思いますよね。そういうときにお役立ちなのがいわゆる「連語辞典」と呼ばれるやつで、ぼくはおもに以下を使っています。

 Oxford Collocations Dictionary for Students of English

(Oxford Univ Pr (Sd), 2002)

これで"doubt"を調べてみると、意味の強めには"considerable, grave, serious"などが用いられ、"strong"は"doubt"とはあまり使われない、ということが分かります。

つぎに、「強い疑い」に対応する英語表現は"strong suspicion"あるいは"(considerable|grave|serious) doubt"だということが分かったとして、どれをじっさいに使うかを決めなければなりません。このとき注意すべきは、ある日本語の表現に対応する英語表現が判明しても、一足飛びにその表現をいま書いている書きものに埋め込むべきではなく、「その表現はいま書いている書きもののトーンに合っているか」ということです。そういうことを判断するときには、Corpus of Contemporary American Englishというオンライン・コーパスがひじょうに重宝します。

上記コーパスによると、"strong suspicion"は口語でもアカデミック・ライティングでも同頻度で用いられるけどやや口語より、アルクのオンライン英和辞典でも出てきた"grave doubt"はそもそもあまり用例がなし、"considerable doubt"はかなりアカデミック度が高いけど用例数的に不安、"serious doubt"がアカデミック度が高くかつ用例数もそれなり、ということで、アカデミックなものを書いているのであれば、「強い疑い」の英語表現としては"serious doubt"が適当かな、ということになるわけです。

さて、ここまでおもに単語レヴェルでのことについてでしたが、もっと広く文法的なことや、あるいは文体的なことに関しては、以下の本をよく参照しています。

 Practical English Usage
Michael Swan
(Oxford Univ Pr (Sd), 2005)
 A Writer's Resource: A Handbook for Writing and Research
Elaine P. Maimon
(McGraw-Hill Humanities/Social Sciences/Langua, 2005)

とくに前者のPractical English Usageは、執筆中に参照するだけではなく、折にふれ拾い読みをしていますが、そのたびに「へえ」と勉強になりますので、おすすめです。

あと、連語辞典および文法書としては以下のものも持ってますが、どちらも「調べる」というよりは「読む」ためのもので、「書く」という、ある程度の「ノリ」が要求される行為を阻害しがちであるため、執筆最中にはめったに参照しません。

 新編 英和活用大辞典
市川繁治郎・他編
(研究社, 1995)
 The Grammar Book: An Esl/Efl Teacher's Course
Marianne Celce-Murcia
(Heinle & Heinle Pub, 1998)

とはいえ、「読む」という観点からすればどちらもよく出来ており、とくに後者は、「英語を教える」という立場からの文法書であるので「学習者の弱点」をよく踏まえており、実践的にも役立ちます。

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