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「何が生物か」という問いへのひとつのありうべき答えとして、「再生産能力があるもの」というものがある。これは表面的にはもっともらしい、つまり、「生物」と呼ばれるものを見わたしてみるに、なるほど、たしかにそれらはそうした「再生産能力」を持つように思われるが、この「生物=再生産能力を持つもの」という「定義」をそのままに受け容れるには、少し、というか、かなり抵抗がある。
たとえば、すぐに思いつくことだが、「生物」といっぱんに呼ばれるものでも、そのなかには少なからず生殖能力を欠いた個体というものが存在する。もし、「生物=再生産能力を持つもの」というスキームを厳格に適用するとなれば、そうしたものたちは「生物」から除外されることになる。こうした事態は、やはり認めがたい。
そうした「生物=再生産能力を持つもの」という「生物観」は、多かれ少なかれ進化論的な見方の影響を受けている。つまり、「生物」というものを「個」としてではなく、「類」として見る。そうした生物観のもとでは、「生きること」は「個」としてのそれではなく、「類として存続すること」ということになる。
たしかに、「類としての生物」という視点も、ひとえに生物学的観点からということにかぎらず、大事な見方ではあろう。そうした「連綿とつづく類としての生物」というものを、頭から否定しようとは思わない。にしても、やはり、そうした見方が専一に、排他的に、「生物=生きているもの」というものの指標になるのは、危険なことだし、しかも、感覚的にもそぐわない気がする。
「類としてではなく、個として生きること」を前景に持ってくることは、それはそれで「人間中心主義的」という謗りを受ける、かもしれない。しかし、「類」としての滅亡が約束されているにしても、そのぎりぎりまでわれわれは存在をつづけ、その様態はやはり「生きていること」と呼ばれうる。
そういう思いが「alternativeとしての生物観」たるオートポイエーシスの発想の源にあったのではないか。そんな気がする。
ちなみに、ぼくは生物一般はかなり好きで、とくに昆虫類・甲殻類・多足類などの外骨格動物(節足動物)がいいですね。彼ら彼女らの姿を見ていると、その気持ちを知ることのできないもどかしさに地団駄を踏んだユクスキュルの気持ちがわかるような気がします。
『... 。しかし、... にしても、... やはり ...』の間の論理的というか修辞的関係が掴みにくいです。『...という謗りを受ける、かもしれない。しかし』までの部分では「個を前景に置くこと」を擁護するのであろうと思ったのですが、続く『「類」としての...にしても』では「類」も捨てたものではないという話なのかと感じました。又「ぎりぎりまでわれわれは存在をつづけ、...」は「類」としての「われわれ」のことをいっているのだととれるので、結局はやしさんは「類」擁護の立場なのかと思ったりもしました。
ちなみに所謂、無脊椎動物では節足動物門以外では環形動物や軟体動物も神秘的で好きです。また珍奇なところでは有爪動物(カギムシ)なんかも、いつか一度お目にかかりたいものです。
ただ、最後から3つ目の段落で「通りすがり」的に留保されているように、「類」としての、つまり「存続するもの」としての「生きること」に、「個」としての「生きること」もどこかよりかかっているであろうことも、否定しがたい感覚としてある。この点についてはもっと詳述するべきであったし、そして後日の宿題としてあるのでしょうが、即自的な「感覚」として言えば、やはり、ぼくは「個擁護」とは現時点では言える、と思います。
環形動物、そして軟体動物もひじょうにいいですね。線形動物に関してなんかも、一時期ちょっと気を入れて勉強してみようかなんて大それたことを考えたりなんかもしたことがあります。というか、タクソノミーをちゃんと系統立てて勉強したいものです。
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