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日本で「エリート意識」という言葉が使われる場合、まるで枕詞のように「思い上がった」などの、あまりいい含意を持たない形容辞がいっしょに使われることが多いように思う。つまり、日本的文脈においては「エリート意識=鼻持ちならないもの」というような図式があるのではないか。そういうふうに思う。

しかし、エリートがエリート意識を持つことは、べつだん奇異なことでもなんでもなく、それ自体がわるいことだとはとうてい思われない(同様に、官僚に対して「官僚的」ということがあたかも「悪口」のように言われたりもするが、官僚が官僚的なのは「分析的真理」というものである)。それなのに、エリートが自らを「エリート」と自認すること、さらには、そういう「自認=エリート意識」のあるなしにかかわらず、たんに「エリートである」というそのこと自体が、「何か鼻持ちならないもの」という受けとられ方をしてしまう。

そう考えると、日本でnoblesse oblige的なものが根づかないのもうなずける。何となれば、エリートはエリートであるだけで「思い上がった」存在であり、ゆえに、エリートたる彼ら彼女らは、いきおい息をつめていなければならないのだから(そうした態度はそうした態度で、「卑屈なエリート意識」と言われたりもするのだが)。これは、エリートにとっても、そして、ありえたかもしれないnoblesse obligeの受益者にとっても、損なことである。

だから、エリートはエリートとして、ごくフラットにエリートたることを認めよう。そして、エリートでない人は、エリートに対するその薄暗い感情を捨てよう。するとたぶん、エリートもエリートでない人も、つまりはみんなが、より生きやすくなる。

そういうふうに思う。

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最近は、日本で最高峰といわれている東京大学の学生が合コンで学歴逆詐称(つまり早稲田とか慶応あたり)をするなどというもっともらしいうわさも耳にしたことがあります。日本では学歴と出自(家庭環境やその家庭の資産状況)の相関がかなりあって、それに対する大衆的嫌悪の現れなのでしょう。
ゼリーちゃん 2008/03/16(Sun)15:48:00 編集
東京大学も、(あれだけの入学者数が、そもそもいるのだし)ほんと、ピンキリの世界で、まあ、ハッキリ言って、中には私程度か私未満のアホな方も仰山いらっしゃると思います。ですから、東京大学=エリートという図式は少なくとも私の頭の中にはありません。
また、かつて、完全なまでに官僚養成学校だった東京大学も様変わりして、最近では優秀な連中は軒並み外資系に行きたがるという話も聞いています。
外資系に行けば、上手くいけば30歳にて楽勝で、生涯賃金なんか稼げますしね。
昔、省庁周りしたときに、大蔵省の30歳のキャリア組の人が言ってましたが、「おれは、年収300万、興銀、住友に行ったやつは1000万」って。
それにしても、(今もそうなんだと思うけど、その時聞いたキャリア組の人の)あの異常なまでの時間外労働(家に帰れるのは、週に1日2日で、かつ、土日祭日なし)をこなせるパワーには、敬服するしかありませんでした。勿論、その過密労働も、最後に「天下り」で、ポンポンポンと、何億という単位の収入が保証されていた時代だからこそ我慢もできたとは思うのですが、最近では、その保証がなくなってきたので、どうせ同じ地獄を味わうなら、もっと短期間に、ポンポンポンと金をくれる外資にでも、そりゃ行きたくもなるでしょう。

ですから、今の東京大学の新卒者で、自分は官僚になるという人は、それなりの志がないと、やってられないと思います。

で、エリートとは見なされていない 本庁を歩いてきたノンキャリアの人だって、キャリア組同様に、一生に強いられてきた、とてつもない時間外労働の不払賃金を、最後に「天下り」で清算してくれって思うのは、人の人情として、ある種当然のことで、そういう意味で、本庁の官僚に支払っていない不払い賃金の問題は、民間のそれと比べても、比にならないほど大きいと思います。

しかし、一方、同じ官僚というか、役所でも、あの悪名高い社会保険庁みたいなものもあるし、また、キャリア組にも実際理由の如何を問わず絶対やってはいけない汚職に手を染める人がいたりで、まあ、そんなこんなで、真面目にやってきた官僚の方は、ほんと、不当に低く世間的に評価されていて、本当に可哀そうだと思います。

そして、自分がその手のある種の屈辱に耐えうる拠り所が「エリート意識」なら、そりゃ、ほんと、そんな「エリート意識」には、私なんぞはひたすら敬服するしかないですよ。ほんと、ほんと。
ぷっつん大吉 2008/03/16(Sun)17:22:00 編集
たしかに、エリートにせよ、官僚にせよ、そして金持ちにせよ、じっさい「鼻持ちならない」と評されても仕方のないような人たちがいることは事実ですが、それにしたって、エリートや官僚や、そして金持ちに関して粗雑な一般化がなされすぎだ、との印象を受けます。つまり、「エリートや官僚や、そして金持ちは、その属性としてしかじかの性質を持つことが有意に多くあり、しかるに、そのような点はかくかくの理由でひじょうに不快である」という言い方をしてくれればいいのですが、「大衆」(あるいは、より精確には、そうした「大衆」を捏造する各種報道機関)はあたかもそうした不快事由がエリートや官僚や、そして金持ちに「内在する」というような前提を立てているように思え、そこはやはり「ちょっとなあ」と思います。
はやし 2008/03/17(Mon)03:10:00 編集
ぼくは官僚に対して相当程度サンパティックなので、そこいらをさっ引いて聞いてほしいのですが、彼ら彼女らのおかれている労働環境というのは、ぷっつん大吉さんも言うように、平均的一般企業に比してもかなり劣悪である、とぼくも思います。そして、これは考えようによっては仕方のないことなのかもしれませんが、ある一部の官僚の悪行によって(この「悪行」だって、冷静になって考えれば、それほどおさわぎするようなものではなく、かなりしけたものだと思うのですが、それはさておき)、官僚一般が「悪」であるとのイメージ(そう、まさしく「イメージ」が)横行するのは、やはりかわいそうなことであるな、プレーンな評価ではないな、との感慨をぼくにもたらします。「天下り」に関しても、ぷっつん大吉さんと同様、それほど(というか、事例によってはまったく)問題だとは思えないので、世の(というのは、各種報道機関の、ということでありますが)さわぎっぷりはひたすら不可解なだけです。ライフタイムスパンでのバランスシートで考えれば、もっと糾弾しなくちゃならんことがあるだろうに、と。
はやし 2008/03/17(Mon)03:17:00 編集
時々、私のことを、はやしさんの太鼓もちだという向きもあるので、注釈を加えておきます。基本的に天下りは、税金の無駄遣いにつながっていて、無いにはこしたことはないと思います。(ただ、官僚の方がシンタンクや大学に次の席をおかれる行為までをも、天下りというのは、完全なおかど違いだと思います。)もっとも問題なのは、特殊法人なんかへの天下りであり、本当の問題は、天下る行為でなしに、天下りが特殊法人といった税金食い虫をどんどん増殖させることです。とはいえ、官僚が、特殊法人を沢山作った背景には、過密労働に対する不当なまでの賃金の不払い問題があり、要は天下りをなくして特殊法人をどんどんなくすのはいいのだけど、その際は、過去に官僚に ただ働きさせた分の対価はちゃんと支払うべきだと思います。支払わない限り、法に詳しい官僚は、また、手管を変えて、蜜を吸える方法を生み出すでしょうし、そして、その限り税金の無駄使いはなくならない。こういう当たり前のことをすっとばしてマスコミは報道して、また全く次元の違うといえる あまりにも強すぎる労働組合が引き起こした社会保険庁の問題なんかを、天下りとごっちゃにして報道するから、話がどんどんややこしくなっているのかと思います。身を粉にして、ただ同然の賃金で働いたエリート官僚が天下り先を見つける行為と、何も仕事をせずに、賃金をひたすらもらって、国民に迷惑をかけまくっている社会保険庁の連中を、一緒くたに論ずるのは、無茶苦茶を通りこしています。どちらがより、糾弾されるべきかは、言わずもがなの世界でしょう。
ぷっつん大吉 2008/03/17(Mon)06:29:00 編集
おっしゃることはじゅうぶんごもっともで、大筋では何の異論もありませんが、さりとて、天下りにまつわるもろもろの弊害(もちろん、これには当の天下り自体も含まれます)を根絶したとして、じゃあどうやって官僚のインセンティヴを確保するの?というのは、考えざるをえません。劣悪な労働環境、身を削って働いているにもかぎらずそれほど感謝もされず、そのくせちんけな「不祥事」には過剰反応されたりして、これじゃあ誰も官僚にならなくなっちゃいますよ。もしそうなったとき(というのは、優秀な人材が官僚になびかなくなったとき、ということですが)どうなるか、官僚バッシングにいそがしい人たちは、そこをよくよく考えるべきではないかと(って、ここでこんなこと言ってもしようがないんですが)。
はやし 2008/03/17(Mon)09:21:00 編集
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