気になる論文 [論文]

中には、大して「気になる」ってほどでもないものも紛れ込んでますが、さいきんRSSフィードで流れ込んできた新着論文から、目についたものをメモ。

• Noûs 42 (1) → ■
  
  
  • なぜ虫の輪切りを飲みこむべきではないか: 意味論的馴致の事例研究
    さいしょ、「何も知らなければ虫とかのいわゆる『ゲテ食』も食えちゃうのに、それが何かを伝えられるととたんに食えなくなるのはどうしてか」というような、「それが何か」を同定するわれわれの言語活動の効果が、いかにして一定の「フィジカル」とも言える位相に波及するのか、てなことを考究した論文だと勘違いしてたんだけど、アブストラクトを読んでみると、いま流行りの（？）四次元主義もの、でした。ここいら辺は一回がっつりとやっときたいんですけどねえ。
    
    
  • カント、観念論を反駁する
    ま、いちおう。
    
    
  • 言語的理解と知識
    素朴な受取りでは、「言語を通じて何かを理解する」とは、「知識」と言われるもののすべてではないにせよ、その一形式ではある、と考えられる。この論文の著者は、そうした見方を否定しているようだ。

• Synthese Online First → ■
  
  
  • フレーゲの「思考／思想」論の修理
    「修理」以前に、それそのものを消化しておくべき、だな。
    
    
  • 「論考」的オブジェクトと論理的カテゴリー
    「論考」とはもちろんトラクタートゥスのこと。現代の「煩瑣哲学」としての「分析哲学」大爆発！といった趣き。それにしても、「オブジェクト」とか「カテゴリー」って、やっぱり日本語にしにくいな。

• Social Choice and Welfare Online First → ■
  
  
  • 公平性に動機付けられた選好の公理論的基礎
    タイトルがいい……って、そういうことではなく、ちらちらと社会選択論の最新動向を見ていると、ロールズ的（と言っていいかどうかはともあれ）な性質をエージェントのかなり重要な付帯条件としてくっ付けるってのが、それなりに流行ってんのかな、という気もしますが、どうなんだろ？　いや、昔っからそういう点への気配りは欠いておらんかったぞ！とセンさんとかに言われそうですが（でも、一昔前のそういう「ロールズ的なもの」への言及の仕方は、「ちょっと通りすがりに」という印象がやっぱり拭いえない）。
    
    
  • センの定理: 幾何的証明と新解釈
    センのあまりに有名な「リベラルパラドクスの定理」を、幾何的に証明しなおし、その証明から見えてくるあらたな可能性を提示する。これはけっこうおもしろそう。

• Australasian Journal of Philosophy 86 (1) → ■
  
  
  • 反事実的条件法と条件付き確率: 情報の反事実的条件法理論の批判的分析
    そもそもドレツキの「原典」もちゃんと読んでないんで、情報流(information flow)に関する議論の勘所も何も分からないんですが、外野的には「反事実的条件法も条件付き確率もそんなにちがいあるのか？」と思ったりします。いや、じっさいには相当ちがうんだとは思うのですが。
    
    
  • 反事実的条件法としての色の一貫性
    いや、「色の一貫性 Colour Consistency」って何だろうなあ、と思ったので。

• Erkenntnis Online First → ■
  
  
  • 数学者が、数学における有用で信頼できる幻想について、省察する
    数学の、実在論的見方と反実在論的見方を宥和させる試み？　ここにこうして挙げといてこう言うのもなんですが、あんまおもしろそうじゃないですね。

• Journal of Philosophical Logic Online First → ■
  
  
  • 時空多様体の形式的構築
    「集合論を礎に数学が構成されるように、物理学を集合論的に構成する」という、稀有壮大な気もするが、大したこともない気もする論文。ちなみに、ここで言われている「集合論」が、ZFでも、いわんやZFCでもなく、たんにZなんですが、それで事足りる、ってことなんですかね？　ま、読んでみろ、って話か。