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というわけで、今年初の本借りとして、ナボコフの文学講義3冊をいっときました。

『文学講義』ではジェイン・オースティン(『マンスフィールド・パーク』)、ディケンズ(『荒涼館』)、フローベール(『ボヴァリー夫人』)、スティーヴンスン(『ジキル博士とハイド氏』)、プルースト(『失われたときを求めて』「スワン家のほうへ」)、カフカ(『変身』)、ジョイス(『ユリシーズ』)が講じられ、『ロシア文学講義』ではゴーゴリ(『死せる魂』『外套』)、ツルゲーネフ(『父と子』)、ドストエフスキー(『罪と罰』『白痴』『悪霊』)、トルストイ(『アンナ・カレーニナ』『イワン・イリッチの死』)、チェホフ(『犬を連れた婦人』『渓谷にて』)、ゴーリキーが講じられる。

それぞれの作品の分析の見事さもさることながら、各講義録の劈頭におかれたイントロダクションが秀逸で、とくに、『文学講義』の「いい読者といい書き手」、『ドン・キホーテ講義』の「実生活と虚構」はそれだけでも読む価値がある。

また、これら文学講義を読む目的というのは、上に挙げた作家たちを読む手引きにするため、というより、これらの小説に関するナボコフの読みを導きに、ナボコフ自身の作を読む手がかりを得る、というほうがむしろ適当なようにも思う。もちろん、細部をていねいに拾いあげるナボコフの読みに嘆息しながら、自分でもここで取りあげられている諸作を、ナボコフのように読みなおす、というのも、じゅうぶんにありうべき道筋ではあるけど(もっとも、誰もがナボコフのように小説を読めるわけではないけど。小説を読むのにも、それ相応の「才能」というものが要るのだ)。

あと、おもしろいな、と思ったのが、『ロシア文学講義』でロシアの散文作家のベスト4をあげているところで、ベスト1は言わずもがなだろうけどトルストイ、ベスト2がゴーゴリ、ベスト3がチェホフ、そしてベスト4がツルゲーネフ、というランキングになっている。すぐに気づくとおり、ドストエフスキーがこのランキングには入っていない。そういう(陰画的な)指摘を受けて考えると、たしかにドストエフスキーは散文作家(=小説家)としてはいまいち、という気がする(もちろん「物語作家」としては超弩級ではあるのだけど、「ドストエフスキー=大作家」という受取りは、きわめて「日本的」でマイナーな現象だと思う)。

というわけで、以後も折りを見て、「ふうむ」と感心した部分はこのブログにでも抜き書きしていきたい。

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ふうむ…

(唸るくらいはまだできるんだ…)
宮本浩樹 2008/01/10(Thu)11:59:00 編集
こりゃ、やめられないね。ロシア語やるべきかなあ。いやまあ、とにかくいい感じですなー。これらの本は英語なんだろうが、言語オタのはやしさんはロシア語もいける口ですか?
英司 2008/01/10(Thu)14:13:00 編集
うむ。
はやし 2008/01/10(Thu)19:11:00 編集
ロシア語は、ほんと「嗜む」程度、ですねえ。ただ、親しい友人の1人がロシア語圏の人なので、その彼についていっちょ本格的にロシア語力をブラッシュアップしようかな、と考えています。もっとも、時間的余裕があれば、の話ですが。ちなみに、彼の語るところによれば、ドストエフスキーはロシア語圏において、もちろんすこぶる有名ではあるけど、日本での破格の扱いとはかなりの懸隔がある、との印象を受けました。ここいらへんの問題も、もう少しつっこんで考えてみるとおもしろいかもしれません。
はやし 2008/01/10(Thu)19:18:00 編集
小説家などというものはどだいまともな人種ではなく、彼ら彼女らは多かれ少なかれ「病んだ」と称されうる想像力(つまりは、妄想力)を持っているものですが、ことナボコフに関して言えば、そういう「妄想力」がきわめて透徹に、醒めた手つきでなされているのが不気味と言えば不気味なところです。

『ロリータ』については、もちろん「ロリータコンプレックス=ロリコン」の語源ともなった小説であり、ちょっと人前で読むのははばかられがちなものであるように思われるのですが、ひるがえって考えれば、昨今ロリータコンプレックスは「ロリコン」とすら言われず、もっぱら「ロリ」と呼びならわされることが多からんように見受けられますので、その語源たる『ロリータ』との照応もやや薄れていることが予想され、もしかしたら、たぶん、おそらくは、娘さんにもそれほど奇異の目を向けられずに済むのではないか、などと愚考いたします。また、再読のあかつきには、表紙をカヴァーでくるむなぞという姑息なことをせず、表紙剥き出しでの読書を、勝手ながら希望させていただきます。
はやし 2008/01/11(Fri)04:11:00 編集
うーん私もあの妄想の世界をもう一度真面目に読んでみたいのですが、題名を見られると娘に何を言われるかわからないのが最大の難点です。すみません真面目な話の途中につまんない割り込みで。
かがみ 2008/01/11(Fri)12:05:00 編集
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