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寒風吹きすさぶなか、えっちらおっちら図書館まで行ってきたわけですが、今日は、学校もののマテリアルはそこそこに、個人的なものをおもに調べたり借りたりしてきました。
とはいえ、とりあえずは「学生の本分」として学校にかかわるものを真っ先にするのは当然のことで(!)、まず確保したのは次のカントもの。
- Kuno Fischer, A Commentary on Kant's Critick of the Pure Reason, Thoemmes Continuum
- Immanuel Kant, Lectures on Logic, Cambridge
1冊目のFischer本は、ほんとうはラウトリッジ「リーダーズガイド」シリーズの純理編を借りたかったのですが、あいにく借りられていたので、代わりに借りてきました。題名の"Critick"というつづりが時代を感じさせます(英訳刊行は1866年)。内容は、Smith本やPaton本ほどくわしくはないけど、でも、「逐章的」に純理を解説しており、参考になりそうです。にしても、ものすごい古書価がついてますね。
2冊目のカント論理学講義は、先日カントの方法論に関するHenrichの論文を読んで、やっぱりここいらも押さえとかなきゃなあ、と痛感したので借りました。内容的には、カントの生前に刊行されたThe Jäsche Logic(カントの求めに応じてJäscheという人がコンパイルしたのでこう呼ばれる)の"Universal doctrine of elements"というパートが、カントの方法論についての考えを知るうえでも重要そうです。
さて、つぎに、とくだん学校のゼミやら何やらmandatoryなことにはかかわらねども、個人的に興味があるという領域のなかから、今日は、以前にちこっとつづきものを書いていた社会選択論に関する書物をいろいろ見てきました。まず借りたのは、もちろん以下の古典。
- Kenneth J. Arrow, Social Choice and Individual Values, Yale(翻訳)
- Amartya K. Sen, Collective Choice and Social Welfare, Elsevier(翻訳)
両方ともものすごく有名なので、とくに説明は要らないでしょうが、軽く表層的なことだけ言っておくと、1冊目のArrow本は、ごく簡単な順序構造だけをもとに、民主主義の必要条件を定式化し、かつ(この「かつ」が重要!)、そのように定式化された民主主義は成立不可能であることを証明した、社会選択論のエポックメイキングな不朽の書。記号含有率もそれほどではないし、それに、ものすごくていねいに書かれているので、がんばって読めば誰もが読めるはずです。
Sen本は、そうしたArrowの結果を受け、それでも民主主義が、そのぎりぎりの構成要件を満たしたうえで成立するにはどういう条件が必要かをあらためて考え、そして(この場合も、この「そして」が重要!)、そうしたあらたに構成された民主主義下では「自由」なるものは存在しえないということを証明してしまったおそるべき書。ただ、全体の構成から見れば、その証明は「ほんの一部分」であって、「社会選択論の哲学的意味」とでも言うべき考察が多くの紙幅を占めています(ちなみに、この本の、とくにその形式的な部分に関して、「非常に難解」みたいなことが決まり文句のように言われたりしますが、はっきり言ってべつにそれほどむずかしくはないので、そういう「見てきたかのようなうそ」には惑わされないように)。
また、それなりに最近(2006年)に、社会選択論のけっこうよさそうなまとめ本が出ていたので、それも借りてきました。
- Wulf gaertner, A Primer in Social Choice Theory, Oxford
ArrowやSenの結果の簡潔なpresentationはもちろん、Rawlsの分配的正義をも社会選択論の枠組みに乗っけてしまおうとする試みも記述されており、これはかなり興味深いです。ふつうに考えれば、社会選択論の枠組みは功利主義を前提にしているので、功利主義批判としてのRawlsian (distributive) justiceと社会選択論は、きわめて相性が悪いはずですから(とはいえ、それなりに容易にそのフレームワークに乗っかりうることも想像できるのですが)。
あと、この社会選択論は、じつはアナーキズム研究にもかなり大きな影響を及ぼしていて、そうしたことからまたしても図書館のアナーキズム関連の書籍が置いてあるセクションに行ったわけですが、そこで懲りずに借り入れてきたのは、けっきょく社会選択論とは関係のない以下の本。
- Lewis Call, Postmodern Anarchism, Lexington
この本、前にも借りたことがあるんですが、ほとんど読まずに返却日を迎えてしまったので、今回はその「仇討ち」をば。それにしても、何ゆえにここの図書館はこうもアナーキズム関連書籍が充実しているのだろうか?
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