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隊長のニート投稿(その1その2)に端を発する、ここのところの一連のニートを巡る記事を読むと、語る側と語られる側が、「ニートである、ということは問題だ」という視点を概ね共有しているように 思える。語る側は「お前ら社会に迷惑かけとる! 働けるんなら四の五の言わずに働け!」と言い、もう少しニートに歩み寄った語り手 は「そういう君たちも働けるように、この社会をどうにかして……」と言う。かたやニートは、「働きたいんだけど、働けなくて……」と 言葉を詰まらせるか、「自分はなぜ働けないか」について滔々と語り始める。でも、ニートであることは、社会にとっても、そして本人 にとっても、それほど問題なのか? 社会も、ニート本人も、ニートをニートのまま肯定することは出来ないんだろうか? そういう夢物語のような、でも何かしら景気のいい話の展開をさせている人はいないかな、と思って、隊長のニート投稿についたTBを見ていったけど、そういう記事には出会えないまま、メンドクサくなって挫折。しようがない。浅学非才とそもそものムリを承知で、わたくしめが、と名乗りを上げた次第でございます。(念のために付言しておくと、当の隊長は、さすがに、というかなんというか、「無業者の持つ光の面」という表現で、「ニート肯定」への道筋も示唆しております)

まずは、自身はニートではなくニートを問題とする人は、いったい何を問題視しているんだろうか? ニートから「下層階級」に転落した ものたちが引き起こす治安の悪化や、国の財を食いつぶすフリーライド行為といった、社会的・経済的なもの? それとも、「ニート問題 」をうまく捌けない社会の「犠牲者」として、ニートを不憫に思って? 前者に関しては、それってどれぐらい実証的な裏付けがある危惧 なの?という観は免れないし、後者に関しては、「働きたいけど、働けない」ニートってのは、「やりたいことはあるけど、できない」か「やりたいことがわからない」か、それ以外の、本当にどうすることもできない「生粋のニート」、という人たちであって、最後の類以外はある意味「自発的」にニートを選択しているともいえるわけで、それだったらほっといたら?と正直思ってしまう。「働きたい」とは思っているわけだし、その人たちがニートを脱することに社会がかけるコストが、果たして適正に社会に還元されるか、ということも限りなくアヤシゲだし。そう考えると、そんなに問題なのかなあ、と思うのだ。

それだったら、悶々としているニートたちは思い切って、「いずれはどうにかして社会復帰」というケチくさい考えを捨てて、今ある境遇 を全肯定してみたらどうだろうか? さらには、ニートがニートであるだけで非難ムードが漂ってしまうことが因ってきたる「労働」を否 定してはどうだろうか? だって、時間をもてあまして、かつ考えがその場でぐるぐる回りながら悶々としてるんでしょ? なら、その時 間を「ニートがニートのまま肯定される社会」の構想のために振り充ててはどうだろう。今のままの考えでいくと、どの道先行きは暗いん でしょ? だったら、一か八かの「一」を取りにいくってのもありなんじゃない? ここはいっちょ、ニートの四類型のうちの一つである 「ヤンキー型」(反社会的で享楽的。「今が楽しければいい」というタイプ、だそうです。でも、「ヤンキー型」って類型があるってこと は、隊長! 「族上がりニート」がいるのかもしれませんぜ!)に徹してさ。

って、チラッと思ったんだけど(ごめんなさい。やや逃げ打ってます。すんませんねえ、ヘタレで)、こういうことをネグリ系の人たちと かが、アウトノミア運動と絡めてアジる、って筋書きがもっと見られてもいいのに、全然だねえ。「ニート ネグリ」とか「ニート アウ トノミア」とかでググってもさっぱり。せいぜい、某分厚い本を書いた人が慶応でやってるゼミに提出された、くっだらねー、というか、 こんなんで点くれたわけ?ってなレポートぐらいが関の山で。もっとさあ、だめ連の人たちが復活したり、高円寺ネグリ系の人たちが暴れ まくったり、(そもそも日本にはあんまりいないけど)シチュアシオニストかぶれの人たちがしゃしゃり出て来たりして、もっ と楽しませてくれよお、とおもう。何か、ほら、違う展開が見えるかもしれないし。

あと、意外だったのが、ベーシック・インカム(「生きてることに賃金を!」という感じで、すべての人に無条件で最低限の所得を保障しよう、という構想。小沢修司『福祉社会と社会保障改革』によると、一人当たり月額8万でいけるそうです)を持ち出してニート擁護・肯定、って人がいなかったこと。ま、そもそも「肯定」ってひとがあんまいないんだけど。

でも、正直にいうと、何がどうあれ、どうでもいいなあ、というのが偽らざる感慨。そういう私は「働きたくないから、働かない」ニートです。


関連書

ネグリ関係
ネグリ/ハート 『帝国』
矢部史郎/山の手緑 『無産大衆神髄』
『現代思想 2003年2月号』(ベーシック・インカムについての、非常にいいサーヴェイ、山森 亮「基本所得」も所収)

アウトノミア関係
ハキム・ベイ 『T.A.Z. - 一時的自律ゾーン』

シチュアシオニスト関係
アンテルナシオナル・シチュアシオニスト 『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト 1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻
ギー・ドゥボール 『スペクタクルの社会』

ベーシック・インカム関係
小沢修司 『福祉社会と社会保障改革』

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コメント
 あちらでコメントありがとうございます。私も20代前半にエフスキーはしかに罹った一人でして、文庫化しているものは全部読んでます。地下室の手記の特に前半部分と悪霊の前半なんかは最高に好きでした。なもので、ああいう文脈になるとそんな言葉を使いたくなるのはもう性というか病気みたいなもんですね。
 一連のニート議論に関しては、もうあらかた言い尽くされたし私は特に言う事もないし、ゴミ箱さん所に書かれたはやしさんのご意見に禿同って感じです。
めむひ 2004/12/24(Fri)07:51:00 編集
めむひさんへ。

あちらでのコメント、差し出がましい、というか、いきなり横合いから失礼だよなあ、とは思いつつも、言わずにはおれませんでした。「ドストエフスキーも読んでないのかよ、ケッ」とはもちろん思いませんが、めむひさんのあのコメントの書き方からして、明らかにポエティックというか、ある種のフィクティヴなものを孕んだものなのに、それに気づかないなんて……という感じです。

ニートを巡るあれこれ、ですけど、ほんとは議論をしていたってしようがないんですよねえ……。ただ実践あるのみ、とまでは申しませんが、私も「どうすればみんなが楽しく愉快に人生を送れるか」について、考えるべきは考え、やれるべきはやる、ということを、ほそぼそとでも続けていきたいと思います。今後の趨勢としては、ネットでよく見られる一過性の盛り上がり、ということで、この議論も風化していき、誰もそれを省みなくなるのでしょうが、だからといってニートもそれにつれいなくなる訳ではないのですから……。
はやし 2004/12/24(Fri)09:04:00 編集
オイラが問題視してるのは、非就労者の親たちや兄弟たちがかわいそうだということです。

その心労を考えたとき、胸が苦しくなります。

「こんな風に育ててしまった自分が悪いのか」
「この先自分が倒れたらどうなるのか」
と、常に思い続けるのは重圧で、「楽しく愉快な人生」とは言えません。

兄弟なら、そんなのが身内にいることが心配で、好きな人との結婚に踏み切れないといったケースも聞きました。(特に兄や弟が非就労者の女性)

これが果たして楽しく愉快でしょうか。

オイラがあつかましいと思いつつも、首を突っ込んでいくのは、こういう痛みがあるからです。

失礼いたしました。
くぬ 2004/12/24(Fri)13:08:00 編集
くぬさんへの返事、コメントで投稿するにはちと長すぎるものになってしまったので、新しいエントリとして投稿します。そちらをご覧ください。
はやし 2004/12/25(Sat)05:54:00 編集
 ご来訪、コメント有り難うございました。
 幾つかTBさせて頂きます。
れんや 2004/12/25(Sat)08:35:00 編集
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