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このあいだこの面々の一部とスカイプでだべっていたとき、ルネサンス期の哲学知識って穴だよねえ、という話になった。
たしかに、ほんとうに「教科書的」と言うに似つかわしい知識はある。その時期に活躍したいく人かの著述家の名前も思いうかぶ。だが、それらの人びとが、前代から何を受けとり、そして後代に何を遺したのか、そういうパースペクティヴが決定的に欠けている。
たとえば、近代哲学、つまりは現代につづく哲学潮流を開拓したものとしてまっさきにデカルトの名前が思いうかびはするが、その彼は、どういう時代状況のもとにあり、そして、そうした状況もとでどうしてああいうことを言うにいたったのか。デカルトとて、真空のなかでものを考えていたわけではあるまい。何らかの時代拘束性のもと、とはいえ、そうした拘束性に違和を感じてああいうことを考えはじめたはずなのだ。
だから、デカルト、ひいてはいまわれわれに伝わっているところの「哲学」なるものを理解するためにも、現代にも連綿とつづくそうした潮流のみなもとの直前の時代については、ある程度「教科書的」というを超えた知識を持っておくべきなのだ。
そういう思惑で買ったり借りたりした、数冊のルネサンス本たち。
- B.P. Copenhaver and C.B. Schmitt, Renaissance Philosophy , Oxford
言わずと知れた、ルネサンス哲学の定評ある概説書のひとつ。翻訳もあり。古代中世からどういう知的遺産を継ぎ、それらがどういうコンテクストのもとで醸成され、そして次世代に受け渡されたかをきわめてコンパクトにまとめてある。つまみ食いでもいいから全体にざっと目を通しておくべきだな。 - C.B. Schmitt et al. (ed.), The Cambridge History of Renaissance Philosophy , Cambridge
上記『ルネサンス哲学』の著者のひとりであるシュミットが編集主幹として参加している、これまた定評あるケンブリッジの哲学史シリーズの1冊。ただ、992ページもあるし、よほどのことがないかぎり通読なんてことはしないんでしょうが、でも、目次を見るかぎりどの項目も重要そうで、けっきょく通読に近い読みは必要かもしれません。姉妹編の中世後期編もかたわらにおいておくべきでしょう。 - Paul O. Kristeller, Renaissance Thought and the Arts , Princeton
ルネサンス学の泰斗クリステラーの論文集。コーペンへイヴァー&シュミット本は、このクリステラーに捧げられています。白眉はやはり、「藝術」と題された第3部で、ヒストリー・オヴ・アイディアズ的なくんずほぐれつが楽しめそうです。もちろんそのほかの「人文主義」「プラトン主義とアリストテレス主義」も、おいしいところがぎゅっとつまっていそうな感じ。 - C.W. Kallendorf et al. (ed.), Humanist Educational Treatises , Harvard
ルネサンス期における人文主義的教育(学)の重要性というのが、いまひとつ伝わりきっていないような気がする。極端なことを言えば、ルネサンス期の教育に対する「反逆」という視点がなければ、デカルトやスピノザがどうしてああいうことを考えたのか、よく分かるまい。この本は、そういう欠をよく補ってくれる、ルネサンス期の教師たちによる教育論集。 - S.K. Heninger, Touches of Sweet Harmony , Huntington Library
原書も日本語訳も、両者とも品切で古書価が絶賛高騰中だが、どうにか手に入れて目を通しておきたい、じつにイマジナティヴなタイトルを持つ1冊。「ピュタゴラス宇宙論とルネサンス詩学」と、副題を見るかぎり「裏街道」っぽいが、ある道すじを通過してきたものにとっては「これこそ王道」と写るだろう。 - Christopher S. Celenza, The Lost Italian Renaissance , Johns Hopkins
タイトルだけを見ると、ヴァールブルク・ウィント・ウォーカー系かと思うが、そうではなく、ルネサンス期にあっていまでは等閑に付されてしまっているラテン語著述家に光をあて、そこからAnother Renaissanceを析出しようとする試み。クルツィウスと共振する面も大か?
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