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今回のSunn O)))の来日は、単体でもすごいことなのに、オーレン・アンバーチ(AMMのキース・ロウなど、ガチなエクスペリメンタル音楽家との共演多数)や、そしてメイヘムのアッチラというこれを逃したら二度とはお目にかかれないような人を引き連れてのもの。まさに悶絶。これは、心ある音楽愛好家なら行っとかなきゃ嘘でしょ。
Boris
つわけで、まず初っぱなはBoris。開演18時なんてのは大嘘で、だいたい19時ごろからスタート。ステージには真っ黒な幕が下りており、スモークを焚き込めている様子が、幕の向こう側から聞こえてくるシュウシュウ言う音で伺い知れ、期待がいやがうえにも高まる。そうこうするうち客電が落ち(とはいえ、そもそも、場内はかなりの薄暗がりではあったのだけど)、Wataのトレブリーなギターが会場に響きわたるなか、幕が上がった。
全体に、トラディショナルなハード/ヘヴィロック調の音、つまりは大文字で始まるBorisの音で、小文字で始まるborisの音、つまりはフィードバックまみれのドゥローンサウンドを期待していたので最初は肩すかしな感じがしたけど、こういうヘヴィロックは生で聴くとやっぱかっちょええね、と最終的には思いました。
Sunn O)))
Borisが終わり、幕がまたいったん下りて、つぎはいよいよSunn O)))の登場。機材入換に伴う音出しの音圧が、あきらかにBorisのそれとは違う。また、スモークも、Borisのときよりも噴出量が多いらしく、下りている幕の隙間から白煙が漏れてくる。そして、客電が落ち、低周波ノイズが会場に響きわたるなか、幕が上がる。
ステージ上には、あのおなじみの衣装を着たオーレン・アンバーチが、ノイズミュージシャンよろしくサウンドトリートメント機材を卓に載せて、ギターを操っていた。そうこうするうちアッチラが、まるで幽霊のような手をしながら、のっそりのっそり舞台に現れる。
ステージは、前述のようにスモークが焚きこめられ、照明も逆光、おまけにフードをかぶっているので表情などろくに視認できやしないのだが、ちらっと見えたアッチラの顔は、メイクが施されているのか、かなり不気味な相貌であった。しかしその歌声は、むしろ透明感溢れる、と言ってもいいようなもので、とはいえ、その透明さが、何やらミスティカルな歌唱法と相俟って、禍々しさを加速させる。
そして、ついに、Sunn O)))のコアメンバー2人、およびムーグ奏者がステージに現れた。拳を突き上げて立ち尽くす5人の、スモークにシルエットで浮かび上がるその姿は、やはり痺れるぐらいかっこいい。呆然とその姿に眼を奪われるなか、ギターが鳴らされた……。
そこからは、もう説明無用の世界である。というより、説明しても仕方がない。たしかに、会場規模ゆえの音の拡散という悩みは、残念ながら的中してしまった。もう少し狭い会場なら、「音」というものの全き「物質性」に融解できたのでもあろう。だが、そんなことも、ごくつまらぬ、ちいさなことだ。ステージ上が1つの巨大なアンプ、いや、たんに増幅amplifyするのみならず、音と音の輪郭が混交する、そんな共鳴装置と化していた(その意味で、オーレン・アンバーチの仕事というのは、けっこうでかい)。これに比べれば、凡百のいわゆる「ロックバンド」の出音は、せいぜい「がんばってる学祭バンド」レヴェルである。
さて、ステージも終盤に近づくと、中盤あたりから登場したBorisのAtsuoがアンプの上に仁王立ちしたり、ストロボフラッシュがかなり高速に明滅するなか(たぶん、民放連のガイドライン的にはアウトなレヴェルであっただろう)、各人の出す音がほとんどわけの分からぬ混交度合いになり、「どこか」へ登りつめていく。
そういう音塊に、比喩的にではなく身が浸され、なかば心神喪失的な状態のなか、「Sunn O)))体験」は過ぎていった。
boris/Sunn O)))
会場入りする前に外で並んでいるとき、「本日は、Boris、Sunn O)))、Boris & Sunn O)))の3部構成になります」という張り紙を見て、てっきり「Sunn O)))のステージに途中からAtsuoが参加するんで、そういう表現をしているんだな」と思っていたら、どっこい、Sunn O)))のステージ後、場内放送があり、Sunn O)))とBorisのフルメンバーによる世界初のステージがこのあとにある、とのこと。何だかちょっと得をした気分になると同時に、「でも、いまのステージとそれほど変わらんもんになるんじゃないか?」という斜に構えた予想もいだいてしまう。
だが、その予想は杞憂であった。たしかに、ベースになるのはこれまでと「それほど変わらん」ドゥローンサウンドである。だが、Sunn O)))の、どちらかと言えばサブソニックな持続音に、Wataが発するトレブリーなそれが合わさった殺傷力は、こちらの予想をはるかに超えていた。そう、全世界がこれまで聴いてきた「フルヴォリュームのアンプ10台」を超えたのだ。
そして最後は、Sunn O)))のグレッグ・アンダーソンがベース、スティーヴン・オマリーがピアノ(!)、オーレン・アンバーチが(メロディを奏でるものとしての)キーボードという構成で、深甚なるダメージを受けた耳に捧げる「レクイエム」といった風情の曲を演奏して、boris/Sunn O)))オールスターズはステージを去っていったのだった。
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