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「日々の聖なる魔術実践」という副題をもつ愉快な本を手に入れた。

おれは昔から「魔術/魔法」というものが好きで、その震源を辿ると、小学館から出ていた「入門百科シリーズ」の一冊、『悪魔くんの悪魔なんでも入門』に行きつく。

この本は、「悪魔くん」の一語が入っていることからも分かるとおり、水木しげるによる数多くの「入門」シリーズのひとつであるが、他の諸作と同様、そのクオリティはきわめて高い。特筆すべきは、通りいっぺんの「悪魔」やそして「魔術/魔法」に関する歴史的博物誌的説明にとどまらず、いわば「実践編」とも言うべきページがあったことで、そこでは、いまから考えるとたぶん、ヘブライ語起源であろうと思われる「呪文」と一緒に、お札やら魔法陣の書き方がそれなりに詳述されており、「ほんとに出てきたらどうすっかな」とじゃっかんビクビクしながら「悪魔を手下にする方法」などの魔術実践をしたのはなつかしい思い出。

そこからの道は知れたもので、型通りクロウリーの諸作を読んだり(クロウリーは『法の書』ばかりがやたら有名だが、値段は少しはるものの『魔術―その理論と実践』さえ読めばいいのではないかと思う)、「黄金の夜明け魔術団」シリーズを買い求めたりしていた。これらの書はいずれも、この筋では他の追随を許さぬ国書刊行会から出ていて、そしてこうした本をコンプで固めてあった渋谷の大盛堂に足しげく通っていたものだ。

こうした「ガチ」なものではなく、「魔術」というものの歴史や意味を探るものとしてはやはり、セリグマンの『魔法―その歴史と正体』が止めを刺す。そこで思うことは、「魔術」と言い「魔法」と言っても、そうした語感のみから受けとられる何か薄暗く陰鬱なものというにとどまらず、それは案外「日々の暮らし」によりそったものでもあり、そして、今日でもなお、そうした「魔術」的なものに人はよりそっているのだな、ということ。

そこで、やっとこさ上述の本の話になるのだが……正直あらためて、居をただして読む、という気にはとてもならないけど、魔術というものの歴史的変遷から説き起こし、ちょろっと具体的な儀式の記述が入りつつも、大部分は原理的な話がなされている。特色は、クロウリーにしても黄金の夜明け魔術団にしても、その教義の根本にはヘブライズム的なものが色濃くあるのだけど、この本に関してはヘルメス主義的な面がつよく、そこいらはおれにとってちょっと目新しいかも。

ただ、まあ、クロウリーにしても黄金の夜明け魔術団にしても、そしてこの本にしても、結局「魔術」ってのは、「心構え」の問題になっちゃったりするんだよね。そこが、「何だよそれ」と言えば「何だよそれ」だし、「面白い」と言えば、面白い。

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