ゾワゾワ来ないケージ [音]

菊地成孔の新刊『聴き飽きない人々』を読んでいたら、ケージについて「ゾワゾワ来ないんだよね」と言っていた。

読んですぐ、「えーんなことないじゃん『プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード』とかIn a Landscape とかけっこうゾワゾワ来るじゃん」と思ったが、ちょっと考えてみると、ケージはまあ聴けばどれも「いいね」とは思うが、自ら進んで「聴くぞ！」となるものがそれほどないことに気づき、ケージで面白いのは音楽よりもその生き様か、と思い直した。

そういう「ゾワゾワ来ないケージ」につづいて、「ゾワゾワ来る現代音楽」としてクセナキス、ブレーズ、そしてメシアンの名前が挙げられ、そこに至って、「うん、たしかにケージよりも、クセナキスとかブレーズとかメシアンとかの方が、自ら進んで聴こう、と思って聴いてるかもな」と完全同調の波に乗るかと思いきや、でも、メシアンの作で名前が挙げられている『トゥーランガリラ』よりもVingt Regards のほうが好きかもな、とちょっと路線変更を企てつつも、気になるのはやはり、菊地成孔はどこに行こうとしているのか、ということなのであった。