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ブリタニカ百科事典全巻読破の記録である『驚異の百科事典男』を読んでいて、「ああ、おれもこういうことやろうとしたことあったっけ」と非常に懐かしい気持ちになり、そしてあらためて「やってみようかな」と思わされた。

ただ、さすがにブリタニカ百科事典を読み通すのはきつい。それに、最新版はDVD版でしか持っていない(古い版だったら書籍版で持ってる)。リファレンスとして使うにはデジタル版で問題なし、というか、「やっぱデジタルでしょ!」だけど、「読む」とすればやはり紙だ。そこで候補として、表題にも掲げた『観念史事典』を思いついた(リンクは新版。旧版は『西洋思想大事典』として翻訳も出ていたが、現在は入手は困難のようだ。旧版は原文がウェブ上で読めるが、図版がすべて省かれている)。

この『観念史事典』は、『存在の大いなる連鎖』のアーサー・O.ラヴジョイを中心人物として1923年に設立された「観念史クラブ」の一大総決算として、フィリップ・P.ウィーナーを編集長にを擁し1973年に旧版が出た。ウィーナーがその序文に言うごとく、観念史の目指すところは、ただこれこれの観念の単線史を辿ることではなく、諸観念がもつれあいほつれあいする、そのさまを描くことだ。そして、そのためには、「国家、そして言語の境界線を無視」し、「学部間の壁をぶちやぶる」ことが必要になってくる(カッコ内の文言は、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』より)。こういう理念のもと、出来上がったのが『観念史事典』というわけだ。

如上のような理念を掲げた事典であるから、その立項項目も一筋縄ではいかない。もちろん、「原因」だの「愛」だの「時間」だの、ふつうの「思想事典」にも立項されているような項目もある。だが、たとえば、「宇宙旅行」だの「デモーニッシュな藝術としての音楽」だの「ヴィルトゥオーゾ」などが、ふつうの思想事典に単独の項目として立項されるだろうか? しかも、通常の思想事典でもありそうな項目にしても、その執筆者を見るとやはり尋常ならざるものを感じる。たとえば、ルージュモンの「愛」、ドッズの「古典古代における進歩観」、フレッチャーの「アレゴリー」、そしてエリアーデの「19、20世紀における神話」……。

と、これまでおもに『観念史事典』旧版についてばかり言及してきたわけだが、じっさいに読み進めるとすると、新版と旧版、どちらがいいか、というのが悩むところではある。というのも、新版と旧版は、かぶっている項目はあれど、そのほとんどはリライト、あるいは新たに項目が立項されており、「まったくの別物」と言ってもいいぐらいの改訂っぷりであるからだ。まさか、両方、というわけにはいかないし……。

まあ、旧版を柱に(なぜなら、そっちの立項項目のほうが面白そうだから)、新版もおりまぜて、という方向で読み進んでいきましょう。



なお、この記事を書くにあたって、高山宏『ブックカーニヴァル』所収「円環知の贈り物」を大いに参考にさせてもらいました。

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