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先ほど、と言っても数時間前、昨日チャット大会をやらかしたにもかかわらず、また、シータさん、そして永遠小僧さんという面子でチャットをしてたときのこと、おれが「逃避行動の一環としてひさかた小説でも読もうと思うんだけど、何かオススメある?」と聞いたら、永遠小僧さんが「ピンチョンの新作は注文済み?」と言ったので、ああ、そういや新作出るんだったな、と忽然と思い出し、チャット終了後しばらく、その新作Against the Day (12月発売という予定が早まって、もうすでに入手可)に関しては言うに及ばず、ひろくピンチョン一般に関する情報集めにネットを逍遥していた。
それにしても、ピンチョンというのは特異な作家だ。だいたい、その存在が疑問視されているところからして真っ当ではない。世に知られた写真はほんの数葉、卒業したはずのコーネル大学に在籍記録はなし、その作品自体に詰め込まれたマテリーの雑多さが呼び起こした「こんなもん、一人で書けるわけない」という評価が相俟ってかような風聞が出てきたのだろうが、ともあれ、何だかよく分からないながらも「らしいな」と思わせてしまうところがこのエピソードにはある。
そういう「ゴシップ」的なものに加え、その作品自体も、というか、その作品こそがピンチョンという作家の「特異性」をよく表している。アメリカ文学界においてその作品は屹立している、と言うと何かヒロイック過ぎてそぐわぬが、事実、それら作品群が名実ともにClassicな位置を得ているにしても、というか、であるからこそなお一層、それら作品群にはout of placeな感じを受けてしまう。初期の短編(『スローラーナー』)から始まって、「あの」という形容辞を付けるにふさわしい『重力の虹』を経て、ややレイドバックした、とはいえそれでもエクストラヴァガンザなMason & Dixon まで、それぞれの作品の風味はまったくと言っていいほど違えど、「ポリフォニー」なんていう言葉がきれいごとに聞こえるぐらいの雑多さと猥雑さが依怙地なまでにつらぬかれている。
そんな「雑多さ猥雑さ」が今回のAgainst the Day では行くところまで行ったという観がある。くわしくは、ここで読めるピンチョン自身の紹介文を読んでほしいが、ニコラ・テスラ、ベラ・ルゴーシ、そしてグルーチョ・マルクスがゲスト出演する小説が、「ぴーんと一本筋の通った小洒落たもの」だとはとても思えない。重複になるが、この小説があつかう時代と場所を先のピンチョンの紹介文から引けば、「コロラドの労働問題から世紀変わり目のニューヨークに、ロンドンからゲッチンゲンへ、ヴェネチアからウィーンへ、バルカン、中央アジア、謎のツングースク隕石事件のシベリア、革命期メキシコ、戦後のパリ、サイレント時代のハリウッド、そして厳密にはまったく地図に登場しない場所」とのことだから、何をか言わんや。
つか、ツングースカ大爆発事件!?
あと、「ツングースカ大爆発事件」、これねえ、そもそも山形先生ヴァージョンの「ツングースク隕石事件」ってのが引っかかって、たしかに、あの「事件」は隕石どーのこーのって話があることも知ってはいるけど、一般には「ツングースカ大爆発」が通り名でしょー、てな具合で、とかなんとか。
で、おれだって小説ぐらい読もうと思うときぐらいありますよ! ただ、いつも読もうと「思うだけ」でじっさいに行動に移されることは少ない……んで感想もあまり期待しないでください!
にしても、ほんと、下巻の古書価高騰ぶりには、おどろくを通りこして、あきれるよね。まあ、光文社古典新訳からかどうかはともかく、佐藤(良明)さんの新訳が出ることを祈りつつ、読み進めてください。もし、翻訳と対照させても分からんとことかあったら、読書会のほうにページ作って書いておいてもらったりすると、おれもいっしょにたのしめていいかもしんない。
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