「資本」論 [本]

稲葉振一郎の新刊。早速買って読み始めたが、イマイチ乗り切れない。

その「乗り切れなさ」の理由は、とりあえず読んだ箇所がホッブズ、ロック、ヒューム、そしてルソーという人たちの、「自然状態から社会契約へ」ということに関するお定まりな「教科書」的復習の章であるからでもあろうし、文体的に「です/ます」調であるからというのもあるんだけど、それよりも、そもそもこういうトピックに対する根本的な興味を（たとえ一時的にではあれ）失っているからではないか、と思った。

もうちょっと平ったく言うと、読んでいてものすごくSo what?という感じがするのだ。それはそうかもしれぬ、そうであろう、でも、だから何なんだ？

過去のある時点に、現在の状態の起源とされるある一点を、仮構的に置く欺瞞。

もちろん、そのような挙措なくしては並べて社会科学というものは成り立ち得ないだろう。それに、自然科学とて同じことをやっているではないか。

でも、社会科学のそれには、自然科学のそれとは異なり、起源措定の恣意性と、そこから現在へ至る推論のギャップが、許しがたい程度に思われるのだ。

こういうことは、一つひとつ、この措定はこうだから恣意的、この推論はこうだからギャップがある、と例証していくべきなのだろう。だけれども、今はそのような時間も取れるはずがなく……。

ま、時間があったところでそういうことをするとも思えないが（と、突然終わり）。