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先日、日本から届いた本。
吉増剛造詩集(角川春樹事務所, 1999)
昨年、日本に一時帰国したおり、『吉増剛造──黄金の象』という本を買い、こちらに持って帰ってきて、ときおりパラパラめくっていたのだけど、そうすると、とうぜんのことながら、吉増剛造その人の書いたもの、とくに詩が読みたくなる。じっさい、そういうことを予見して、みじかい旅程のあいまをぬって訪れた書店で吉増剛造の詩集を物色したのだけど、手ぐすねを引くだけで、けっきょく買わなかった(いや、買えなかった)。その「うらみ」を晴らすべく、1971年の『頭脳の塔』、1970年から1973年の「航海日誌」、そして1977年の『草書で書かれた、川』がおさめられた、これを買った。ぼくは、吉増剛造の詩を、もっぱら、「何だろう、これは?」というおおきなはてなマークを頭上に浮かべるために読んでいるようなものなのだけど、今回それなりに初期の詩編を読んでみて、近年の、自立した「、」やら「。」の使い方やら、本文と注がおたがいの領分を侵食しあい融解するさまやら、そして、得体のしれない(とぼくには思われる)傍点の用いられ方やらよりも、ざりっとしたものを感じた。たとえば、劈頭におかれた、「朝狂って」の、最終連。
アア コレワコレクション日本歌人選 塚本邦雄(笠間書院, 2011)
なんという、薄紅色の掌にころがる水滴
珈琲皿に映ル乳房ヨ!
転落デキナイヨー!
剣の上をツツッと走ったが、消えないぞ世界!
短歌研究文庫 塚本邦雄(短歌研究社, 1992)
(「塚本邦雄」の表記は、ほんとうは、「塚」と「邦」を旧字(塚本邦雄の言い方で言えば、「正字」)であらわすべきなのだろうけど、「塚」の旧字を表示させたとたん、「機種依存文字」との警告を受けてしまったので(そして、何より、機種依存であろうがなかろうが、「邦」の旧字はそもそも表示すらされなかったので)、その名を本人の希望どおり、すべて旧字であらわすことは断念した)
最近、塚本邦雄の句評集『百句燦燦』を二句分づつほど読んでから、とりあげられた句の響き、そして、それら句についての、塚本邦雄の評(というか、句をだしにした塚本邦雄の妄想(と言うのが言いすぎなら、想像力の飛翔))によってどす黒く塗りつぶされたイメージを反芻しつつ眠りにつくことがつねなのだけど、上の吉増剛造の場合と同じく、この句評集を読んでいると塚本邦雄じしんの作品が読みたくなってくる。そういうわけで、とりあえずこの二冊を。一冊目は、とりあげられている歌の数こそ五十とすくないけれど、表記はきちんと旧字でなされており、さらに、各歌に、それなりに詳しい歌の鑑賞文とその背景の解説が付されている。二冊目は、じつに一七九三首の歌がおさめられているのだけど、惜しいことに、旧字が新字におきかえられてしまっている。
自己啓発の時代: 「自己」の文化社会学的探究(勁草書房, 2012)
このまえ、『日常に侵入する自己啓発: 生き方・手帳術・片づけ』を買ったのだけど、うかつなことに、それが同著者による自己啓発シリーズの二冊目だとは知らずに買ってしまったので、まずは一冊目を読まなければしようがあるまいと、買った。「はじめに」に端的に述べられているように、『自己啓発の時代』は、「社会的」にもとめられる(というのは、この本のテーマから言えば、つまり、自己啓発書で是とされる)「自己」から逆照射的に社会の在り方を観じ、そして(あらまほしくは)その在り方のなかで「自己」を考えるよすがを提供することを(とりあえずの)目的としている。そういう次第なので、この本には巷間にあふれる自己啓発書のエッセンスがつめられているはずであり、もしかすると、最強の「自己啓発書」として機能する、かもしれない。
日本古典対照分類語彙表(笠間書院, 2014)
このまえの記事で、「日本の思想」について考えたいと思っていると書いたけど、その「日本の思想」ということで言われていたのは、たとえば神道やら仏教やら国学やらというかたちであからさまな「思想」としてあらわれたそれというより、そのようなあからさまさ以前の「人びとの思い・想い」のようなもの、それも、そうしたあからさまさがまだ(すくなくとも文字に記されたかたちで)あらわれる以前の「思(い)想(ふ)」を考えてみたいので、それには、そのころ記された(それほど「思想」があからさまにはなっていないような)言葉によるしかない。そういうわけで、やや高価ではあったけど、この語彙表を買った。この本は、万葉集、竹取物語、伊勢物語、古今和歌集、土佐日記、後撰和歌集、蜻蛉日記、枕草子、源氏物語、紫式部日記、更級日記、大鏡、新古今和歌集、方丈記、宇治拾遺物語、平家物語、そして徒然草の十七作品の全語彙が集計され、それらが五十音順にひたすら並べられているという、おおかたの人にとっては「たしかに、ある種の人はとても重宝するんだろうけど、読んでおもしろいもののようにはとても思えないなあ」と思われるであろうものなのだけど、じっさいのところ、任意のページを開いてぼんやりながめているだけですてきにおもしろい。さらに、付録のCD-ROMには書籍のすべての内容がエクセル・データとしておさめられており、ごくかんたんな表計算ソフトの使い方さえ知っていれば、いろいろな集計(たとえば、素朴な例で言えば、源氏物語の和語だけ抽出して、それを頻出順に並べかえる、など(ちなみに、源氏物語の和語を頻出順に並べかえたものの上位は、源氏物語全帖の語彙数の多さもあずかってか、和語あるいは漢語をとわない、全作品を考慮したときの総語彙頻出順の上位とほぼ一致している))をしてたのしむことができる。
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