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Twitter で「#本棚の10冊で自分を表現する」というのが流行っていたようなのでそれに乗じて「自分を表現する10冊」を選んでみようと思ったのですが」を書くにあたって、「わが(知的)半生」シリーズをあらためて見かえして、いわゆる「文系」的な書籍にほとんどふれていないことに気づきました。ゆえに、機を逸した感がまんてんですが、大学以降(じっしつほぼ大学時代)に読んだ「文系」的な本で、印象に残っているものをつれづれに書き記します。

まず、思いうかぶのは、デリダの『法の力』。何べんか言っていることですが、ぼくにとってデリダとは、哲学(あるいは思想)の人ではなく、もっぱら「言ってることはよく分からないけど何かかっこいい章句をくりだす人」なので、そういう意味でも「脱構築は正義である」という殺し文句が出てくる『法の力』は、「読むと元気が出る本」として重宝しました。フランス思想系では、ラカンの『二人であることの病い』も、巷間に言われる「ラカン=難解」という図式とは裏腹にとても分かりやすく、かつ抒情的な書きぶりで、好きでした。何より、書名がかっこいいじゃありませんか。

フランス系に寄りそいつつ、そこからやや離れた書きものとしては、『さまよう』の、「原文にこめられた文意をあたうかぎり日本語に移そうとした結果ほとんど読みがたいものになっている」というたたずまいに惹かれました。まれに、原書以上のパワーをはなつ翻訳というものが存在しますが、ぼくにとってこれはまちがいなくそういう翻訳書のひとつです。

フランスからドイツに目を転じると、まず思いうかぶのがヘーゲルの『哲学入門』です。ぼくが大学生のころヘーゲル全集が刊行されており、それを定期購読していたのですが、それら全集よりも、(ヘーゲルにしては)「小著」と言ってもよいこの文庫本が印象に残っています。たぶん、「家庭教師に向かうバスのなかでいつも読んでいた」という情景もあいまって、それを印象ぶかく覚えているのでしょう。また、ドイツ系としては、アドルノ=ホルクハイマーの『啓蒙の弁証法』も、とくにその最初の二章をくりかえし読みました。

こう書きついできて、小説や詩のような文学系がほとんど思いうかばないことに気づきました。大学時代は、授業に必要だったということもあって、むしろいま以上に小説や詩や戯曲を(しかも、いたしかたない理由からとはいえ、英語やフランス語やドイツ語で)読んでいたはずなのに、ふしぎなことです。しいてあげれば、古井由吉の『楽天記』が、とくにこれといった話が進展するわけではないのに、それでいて、何かが知らず識らずのうち微熱的にきわまっていくそのさまにひじょうに感じいった覚えがありますが、これ読んだのはもしかすると高校生のときだったかもしれません。

思いかえすと、専門課程にあがって以降は、それら文学系の書きものをたんじゅんにたのしんでいればいいという沙汰ではすまなくなっており、ゆえに、「たのしみのための読書」として読んだ文学系のものとしては、ひたすら無責任に読んでいればよかった日本のものがおおかったようです。藤井貞和『ピューリファイ、ピューリファイ!』、田中小実昌『ポロポロ』、藤枝静男『空気頭』、吉田健一『詩に就いて』、そして『俊頼髄脳』にきわまる中世の歌論書……こんなところが思いうかびます。(「すてきにすばらしい」と思ったわけではないけれど、金井美恵子の『小説教室』は、「デートをした男が映画館のなかでインデックス・カードにメモをとりはじめた」という描写に、じっさいそういう人を知っていたがゆえ、おもわずふき出したという理由で、記憶に残っています)

あと、岩波全書の『ギリシア語入門』『ラテン語入門』も、評判はあまりよくないようですが、小口が真っ黒になるまで読みかえした数少ない本ということで、ここにあげるべきでしょう。

大学時代によく読んだ「文系」的な本でぱっと思いうかぶのは、だいたいこんなもんでしょうか。(ふつう、文系学部生は、印象ぶかい本をもっとけんらんと羅列するのでしょうが、読書があまり好きではなかった(そしていまでもあまり好きではない)ぼくとしては、こんなところが限界です)
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