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イアン・ハッキングの『なぜそもそも数学の哲学なんてものがあるのか』を読んでいたら、「数学というものは、いっぱんに、あまり好かれていない(ある場合には、親のかたきのようにきらわれている)」ということを示す例として、村上春樹の IQ84 からダイアローグが引かれていた。よもや、ハッキングの、それも数学の哲学にかかわる本で村上春樹の名前を目にするとは思ってもみなかったので、ちょっとびっくり。
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ハッキング新刊出てたんですか。簡単にどんな内容か教えてもらえませんか?
名無権兵衛 2015/06/20(Sat)19:52:50 編集
まだ読みはじめたばかりなので全体を見通したうえでの感想および内容紹介はもとよりのぞむべくもありませんが、これまで目を通した印象で言えば、「数学の応用」と「証明」ということが全編の二本柱になっているようであり、そして、前者にかんして、通常「数学の応用」と言うと「数学を数学以外の分野に応用する」ということが想起され、結果、「数学を数学に応用する」という面が等閑視されがちなことが指摘されたうえ、そういう「数学の数学への応用」としてデカルトの「代数の幾何への応用」が引かれ、そこから、「真理が真理であることを、全体として、一挙に見わたすこと」という「デカルト的証明」と、「与えられた(自明と措定される)前提群から(いっぱんに妥当であると認められている)推論をへて真理にいたる」という「ライプニッツ的証明」(現在数学においては「証明」と言えば通常このライプニッツ的証明が想起される)が対比され、そしてどうもハッキングとしては、前者のデカルト的証明に(暫定的にではあれ)軸足を置いて議論を進めたいらしい、という論の運びになっています。

また、上で「論の運び」という言い方をしましたが、ハッキングの書きぶりは、「がちがちの論述」というよりも、短めの、それも「エピソード的」と言ってもいいようなややくだけた断章を積み重ねていくというスタイルで(テイストとしてはマクルーハンの『グーテンベルグの銀河系』に近いかもしれません)、「数学の哲学」は言うにおよばず、そもそも「数学」というものになじみがない人でもたのしく読みすすめることができるんじゃないかなあ、と思われます。そして、この「数学になじみがない人」という視点は、おそらくハッキングが力点を置いているところで、何となれば、直近のブログ記事でも紹介したとおり、村上春樹を引きつつ「一般の人にとっての数学」というものにスポットライトを当てていたように、「数学の哲学」と言った場合に問題にされている数学も、いわゆる「高等数学」だけではなく、一般の人が想起する(かならずしもプロの数学者が同意するとはかぎらない)数学像をも含みこんでいるようであり、そういう観点から「数学の哲学」を再展開(あるいは、書名が如実に示しているように、「数学の哲学」というものそれ自体を、そういう観点から再点検)しようという印象を受けます。

かのように、通常「証明」と言えばそれが想起されるライプニッツ的証明ではなくデカルト的証明を、また、プロの数学者が行うそれではなく数学とは縁もゆかりもない人が想起する数学を起点に「数学の哲学」を考えていこうという風味が感じられ、なかなか横紙破りな「数学の哲学」にかんする本であるなあという印象をいまのところ持っております。

ともあれ、冒頭でも述べました通り、まだ読みはじめたばかりであり、ここで記したこともあくまで「これまで読んだ範囲で推察されること」という域を出ておらず、読みすすめるうちにこれらの推察がまったく的外れであったと判明する可能性もかなり相当ありますので、読了したのちまたあらためて感想めいたものを書くことにしますね。(ただ、子守りのあいまに(あるいは、子守りをしながら)、いわば趣味的にぽつぽつと読んでいるので、読了できるのはそれなりに先の話になってしまうと思われますが)
はやし 2015/06/21(Sun)16:13:49 編集
詳細なコメントありがとうございました。
分析哲学界のフーコーとはよくいったもので、「くだけた断章を積み重ねていくというスタイル」が面白がれる人と苦手な人がいるんでしょうね。
名無権兵衛 2015/06/22(Mon)20:19:53 編集
米国独自編集版フーコー著作選集のハッキングによる書評が『歴史的存在論』(邦題は何かちがったような気がします)に採録されたおり、その前文でフーコーからの影響が述べられていましたが、文体的にはともかく(そもそも、フーコーのあのバロッキーな文体は真似しようとして真似られるものでもない)、方法論的にはそうなんだろうな、という感じがします。あと、これはそこまで顕著というわけではありませんが、いわゆる「分析哲学者」と呼ばれることの多い書き手にくらべて、本題とはいっけん関係ないようなエピソディックな話から入ってそれを本題につなげていくという書きぶりが、(ぼくの勝手な印象にもとづいて)ちょっと「フランス的」であるような気もしますね。

ともあれ、前述のように、ごく短い断章形式(ひとつの話題について費やされるページ数が長くて3ページぐらい)ですし、時間が分断されがちな子守りの最中にあってもそれほど困難なく読めるので、ありがたいです。(そのかわり、「えーっと、何でこんな話してたんだっけ?」となることも多いのですが)
はやし 2015/06/23(Tue)07:12:47 編集
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