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なんでも、紀伊国屋書店渋谷店が「本当は女子にこんな文庫を読んで欲しいのだ」と銘打ったフェアをやったところ非難ごうごうの沙汰となりそのフェアは速攻中止になったということで、それを聞いたとき、「そんなん、男の衒学的顕示欲の発露に過ぎないことはあきらかだし、そういう顕示欲の発露なんて鼻で笑ってやり過ごせばいいわけで、中止に追いこむまでやいのやいの言わなくてもいいんじゃない?」とさいしょは思ったんですが、そもそもこれ、「女は本を読まない」ってことが前提となっていたんですね。まあ、「女は本を読まない」ってのは事実だと思うんですが(ただ、女が本を読まないのと同程度、もしくはそれ以上に男だって本を読まないし、だいたい、男であれ女であれ、いっぱんに人はあまり本なんて読まない)、それだけを前面に出しちゃうと「男は本を読み、女は本を読まない」という(まちがった)コノテーション、そして「本を読む男から本を読まない女へ」という「上から下へ」なインプリケーションを漂わせてしまい、そういう意味で「よくないな」と思いつつ、それでもやっぱり「フェアを中止に追いこむまでやいのやいの言うのは(あるいは、そうしたやいのやいのに屈してフェアを中止するのは)行きすぎなんじゃないか」とぼくは思います。

だいたい、「女は(あるいは、男は)本を読まない」という前提には立たないけど(そもそもぼくは、男であれ女であれ、本を読まない人に本を贈ろうとは思わない)衒学的顕示欲はちょっと(場合によっては、だいぶ)添えつつ(だいたいにおいて、その対象が異性であれ同性であれ、「本を贈る」という行為には衒学的顕示欲がつきまとうものだと思う)でもほんとうには「自分が読んですごくおもしろかった(あるいは、感銘を受けた)から、このおもしろさ(あるいは、感銘)を、親しいつきあいのあなたともぜひ共有したい」というおもいをだいいちに異性(あるいは、同性)に本を贈るなんてことはままあるわけで、そういう事態がままあるのだとすれば、「異性(あるいは、同性)に贈りたい本」というフェアがあったってべつにいいじゃないですか。(繰り返せば、くだんのフェアで問題だったのは「女子に贈りたい本」という大き過ぎる一刀両断な括りではなく、「女は本を読まない」という含みだったわけで、そのフェアについてやいのやいの言っていた人たちもそういう含みがなければ「女子に贈りたい本フェア」みたいなものにかんして百歩譲ってくれることでしょう)

というわけで、それがはたしてフェアとして成立するかどうかははなはだ疑問ですが(そもそも、「本を贈る」という行為はきわめてパーソナルなものであってみれば、ある程度「雑駁な一括り」、つまりは「パブリック」を対象とせざるを得ない「フェア」というものにはなじまない、とも言える)、時流に乗って、ぼくが過去、女性に贈ったことのある文庫をさらしてみます。

ご冗談でしょう、ファインマンさん
これは、男であれ女であれ、そして、若かろうが年をとっていようが、さらにもっと言えば、親しかろうが親しくなかろうが、この本を読んだことがないという人には配り歩いてもいいぐらいの本。そういう次第なので、親しくなった異性に贈るのは当然ですね。

論理哲学論考
この本を贈ることにはじゃっかんの「衒学的顕示欲の発露」が含まれているかもしれないけど、ただ、この本を贈るとき「何を言っているのかまったく分からないかもしれないけど、『何を言っているのかまったく分からない』という感覚に泥むというのもときにすてきなものだし、そして、それはとっても重要なことに思うから、これを」という言葉を添えたので、そこまで「衒学的顕示欲の発露」の度合いはきつくないと思う。いや、衒学的顕示欲の発露の度合いがきつくったってまったく問題はないんですが。

パズルランドのアリス
小学生のときに母から贈られたこの本は、かくじつにいまの自分につながっていると思うので、「自分のルーツを知ってもらう」という意味で。

オイラーの贈り物
数学にかんしても、上で本について言ったのと同じようなこと、つまり、「女が数学をきらいなのは事実かもしれないけど、それを言ったら、女が数学をきらうのと同程度に男だって数学ぎらいだし、だいたい、男であれ女であれ、いっぱんに人はあまり数学が好きではない」ということが当てはまると思うのだけど、ぼくは数学が好きなので、好きになった人にも数学を好きになってほしい。だから、この本を贈る。(「文庫」という限定を外せば、あるいは数学ガールシリーズも「数学を好きになってほしい」というおもいで人に贈る本として好適なのかもしれないけど、このシリーズは「読む人を選ぶ本」だと思う)

というか、ぼくがそもそも「本を読まない男」なので、「本当は男子にこんな文庫を読んで欲しいのだ」というフェアが求められるところです。
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