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マイケル・ポッターの『集合論とその哲学』は、たしか出てすぐに買ったにもかかわらず、ぱらぱらと流し見ただけで(「読んだ」ではない!)「あんま哲学っぽい記述がなくって、ふつうの集合論の教科書みたいだなあ」と思ってしまったので、ながらく積ん読状態だったのですが、さいきんまたしても懲りずに始めてしまった新企画「連続体仮説を反駁するために」を書くさい、その一部をそれなりにちゃんと読んでみたところ、これが何ともよい出来で、「買ったときすぐにちゃんと読んでおけば」と後悔しました。

それでは、何がそんなによい出来なのか。それはまずもって、集合論のテクニカルな事柄が、その「なぜ」とともに説明されていること、このことが大きいです。

ぼくのような「数覚」に欠けるものにとって、数学書を読むうえでの最大の「難関」は、定義や公理や定理などの「勘所」、つまり、何らかの定義や公理を設定するモチヴェーションや、定理の「ありがたみ」を掴むのに苦労することにあったりするのですが、この本でのポッターの書き方は、ある公理が設定される(された)歴史的哲学的理由や、ある公理(あるいは定理)が先々のどういう点で「効いて」くるのか、そういうことをテクニカルなこととあわせてあたうかぎり提示しようとしているので、多くの類書を読むときにありがちな「おいてけぼり感」を味わうことは、あまりありません。

また、歴史的哲学的側面ということにかぎって言えば、各部の最初に付けられているイントロダクションと、各章の最後に付けられているノートが、とくに集合論の歴史的哲学的側面に焦点を当てて書かれており、本文を読まずとも、これらイントロおよびノートを読むだけでも、かなりのものが得られます(じっさい、集合論の歴史的哲学的側面については、いっぱしの知識を有しているつもりだったのですが、知らないことがけっこう書いてあり、自らの不明を恥じることしきり、でした)。

というわけで、激おすすめです。

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