[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
前回では『プリンキピア・マテマティカ』にかぎらず、ひろく数学一般で用いられる「変数」というものについて、『プリンキピア』序論第1章でなされる注意とともに、それがどのようなものか説明した。この稿では、じっさいにそれら諸変数が『プリンキピア』においてどのように使われるのか、それを見る。
まず、具体的な説明に入る前に、ひとつふたつ補足説明をあたえる。
第1点。前回ではvariableを「変数」と一貫して訳したが、言うまでもなく原語variableには「数」という含みは(少なくともその表面に明らかに現れているものとしては)ない。variableが意味するのはただ「変化するもの」ということだけだ。だから、これ以降、variableは文脈によって「変項」とも呼ぶことにする。
第2点。前回ではvariableを「何かの代わりに文字を使う」という相のもとで捉えたが、このような捉え方のものとでは、本来それに入らぬものまで変項に含められてしまう。つまり、「何かの代わりに文字を使う」という意味では変項と代わらないが、その「何か」が変項のように不定ではなく、ごく限定的に定まっているものがある。それが「定項 constant」と呼ばれるもので、たとえば、円周率πなどはその代表格である。
さて、それではじっさいに『プリンキピア』で変項(および定項)として用いられる記号=文字を見ていく。以下がその一覧である。
- ふつうのアルファベット、つまりラテン文字の小文字(a, b, c, ...)のほとんどは、変項として用いられる(ただし、『プリンキピア』第40項以降においては、pとsは定項として用いられる)。
- ラテン文字の大文字のB, C, D, E, F, IそしてJは、定項として用いられる。
- ギリシア文字の小文字のうち、ε, ι, η, θそしてωが定項として用いられる(ただし、η, θそしてωに関しては、最初のうちは変項としても用いられる)。
- ギリシア文字の大文字は、定項としてしか用いられない。
- ラテン文字の小文字のうち、とくにp, qそしてrは命題変項と呼ばれ、さまざまな命題を表すために用いられる(ただし、上で注意したように、pは第40項以降は定項としてしか用いられない)。
- f, g, φ, ψ, χ, θおよびFは、函数変項と呼ばれ、さまざまな函数を表すのに用いられる(ただし、第33項以降は、Fが変項として用いられることはない)。
- 上記にとくに挙げられた以外のギリシア文字の小文字は、クラスを表す変項として用いられる。
- 上記にとくに挙げられた以外のラテン文字の大文字は、関係を表す変項として用いられる。
- 上記にとくに挙げられた以外のラテン文字の小文字は、とくに函数とも、クラスとも、そして関係とも限定されない「何か」を表すための変項として用いられる。
つまり、「変項」という観点から言えば、『プリンキピア』におけるそれは、大略以下の3つにまとめられる。
- クラスを表すためのギリシア文字の小文字
- 関係を表すためのラテン文字の大文字
- とくにクラスにも関係にも限定されない「何か」を表すラテン文字の小文字
次回からはいよいよ、これらの変項および定項を用いつつ、『プリンキピア』語が定義されるさまを見ていこう。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
音
雑
虫
技術
『スペクタクルの社会』を読む
ドゥルーズ講義録
電波
趣味の数学
趣味のゲーデル
『プリンキピア・マテマティカ』を読む
自己紹介もどき
ブログペット俳句
芸術一般
言語ヲタ
お客様
GRE CS
留学
Boing Boing
映画
ちょっといい話
かなりダメな話
魂の叫び
哲学と数学
論文
引用
「いい」とも「ダメ」とも言いがたい話
悲喜こもごも
証明論
ポエム
書物への呪詛
言わずもがななことではあるけれどときに忘れてしまうこと
何か無駄なことをしよう
日々
趣味の勉強
夢
ブログの記事
翻訳
勉強
不眠
文房具
ライフハック
育児
thayashi#ucalgary.ca
(#を@に置換してください)
このブログで紹介したことのある本をランダム表示。
このブログで紹介したことのある音をランダム表示。