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倫理思想ゼミで今週から『ニコマコス倫理学』という名前で知られるアリストテレスの著作を読むことになったのだが、「ゼミのため」ということでそれなりに精緻に読んでみると、昔日読んだときには看過してしまったことにいろいろと気づかされる。
まず、そもそもの『ニコマコス倫理学』という題名からして、先入観の変更を迫られる部分だ。この書の原題はΤΑ ΗΘΙΚΑ というもので、ここで使われている"ἠθικά<ἠθικός"という語は、字義どおりには「習慣から生じたもの」、ひるがえって「性格」を意味するが、それは、現代の諸欧米語ethic(s)やéthiqueやEthikのように「倫理、道徳」ということを排他的に意味するわけではない。もちろん、この書の主題である「よき生を生きる」ということには「よき性格 ἠθική ἀρετή」が必要であり、そうした「よさ ἀρετή」には当然いわゆる「倫理的」あるいは「道徳的」と呼ばれるものも含まれる。だが、アリストテレスの言う「よさ」とは、そうした道徳的倫理的なそれにとどまらぬ、もっとひろい意味を持つ。
たとえば、アリストテレスは『性格について』第2章第7節において「ほどほどであること μεσότης の大切さ」を語るなかで「機知 εὐτραπελία のほどほどさ」についても語っており、そうした機知はあまりに度がすぎると下卑た感じになり、控えめすぎると野暮ったいと言っているが、さりとて、「ジャストな機知加減」を持たずとも、その人はべつだん「道徳的」に批難されることはないだろう。しかし、この「機知」も、アリストテレスによれば「よき生」を送るために有用な「性格」のひとつ、なのである。
このように、『ニコマコス倫理学』として知られる書名から受ける印象、つまり、「もっぱら倫理、あるいは道徳について語っているのであろう」という予想は、いいかたちで裏切られることになる。そのほかにも、いろいろと興味深い点(たとえば、「しあわせ εὐδαιμία」の力動的把捉など)があるので、気が向いたらそこら辺についてもすこし書いてみたい。
ちなみに、『ニコマコス倫理学(性格について)』の英訳本としてはこのエディションがひじょうによくできているので、おすすめです。
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